2026年2月26日木曜日

タクシーストーリー㉖ 路上研修3

 全10日間の研修も7日目となり、

「こちらで行う研修は今日が最後になります。明日は適性検査、最後の2日は三宮の兵庫県タクシーセンターに行ってもらいます」

課長から説明があった。

「適性検査も三宮ですか?」

「貿易センタービルにナスバ(自動車事故対策機構)が入ってるので、そこで行います」

「わかりました」

すると、課長は一度営業所に入り、紙コップに水を入れて持ってきた

コーヒーやないのか…?

課長は研修用の社用車の助手席に乗り込み、エアコンの吹き出し口にドリンクホルダーを差し込み、紙コップを置いた

「さあ、今日は路上の最終点検です。行きましょうか」

「そのコップ、危なくないですか…水がこぼれそうで」

コップには水がほぼすり切れいっぱいに入れられていた

「ハハハ、わざとですよ。この水をこぼさないように運転してください。またこれは運転のテストのためですから、通常ここにドリンクホルダーを付けるのは、お客さんの目にもついて見苦しいですから禁止ですよ」

「わざと…ですか」

恐る恐る発進すると、古いタクシー用クラウン(コンフォート)である

ブン!

と強く揺れて、水がこぼれそうになる

「これでは運転できませんよ」

「それをするんです。高齢のお客様はちょっとした揺れでも身体に堪えます。小さな子どもさんは座席から落ちてケガをするかもしれません。自家用車をひとりで運転しているのとは、まったく違う運転をする必要があります」

こんなん落ち着いて運転できへんやん

というか、落ち着いて運転してたらあかんのかな

右左折は、ほぼ止まるような感じで、しかし本当に止まってしまったらまた発進時に揺れてしまう

止まるか止まらないかの繰り返し

それでもなかなかうまくいかなかった

「今どこ走ってるか分かってますか?」

課長に質問されたが、

「いえ、あの運転が…水が気になって…長田神社の近くですか」

ナビを見て答える

「運転に集中することも大事ですが、お客さんを乗せてたら、常に地理的な認識は持たないといけません。ナビだけを見て運転するのはプロではありません」

思ったより厳しいな

と、その瞬間、路肩に停められていたテスラの横から道路側に突然男性が飛び出してきた

「あっ!!」

強くブレーキを踏む

コップの水はオートマのギアの部分と、課長のズボンに大きな水滴をつけた


2月25日(水) 61,090 43回




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