2022年8月31日水曜日

タクシーのEV化について

 タクシーのEV化については、随分前から議論されているが、なかなか進んでいないというのが現状だろう。

EV化が進まない要因として考えられるのが、

①航続距離

②付加価値

③業界の未来像が見えていない


①に来るのは航続距離であろう。

元々最も大きな問題はコスト面であったが、これについては年々コストは下がっており、現在は300万円台での調達が可能になっているようである。

https://evdays.tepco.co.jp/entry/2021/11/09/000023

この程度の金額で車両が調達出来れば、ジャパンタクシーのコストと大きく変わらなくなってきている。

しかし一般の車両価格と比較して、タクシー車両は架装費用(タクシーメーター、行燈など)がかかるため、相当額の追加費用を付加しないといけない。

そこを公共の補助金などでクリア出来たとしても、問題になってくるのが、「航続距離」である。

現在この部分も日々進歩していて、1回の充電で500キロ近く走行可能な車両も出てきているようである。

ただ、航続距離の長い車両は当然価格も高くなるし、実際メーカーが公表する航続距離は、アイドリングすることなく、常に走っている状況での距離である。

タクシーは待機時間等アイドリング時間が長く(アイドリングストップの技術も進歩しているが、待機中にストップしてしまうとエアコンもストップすることになり、現実的にはオンのままで待機することになる)、公表されている航続距離よりかなり短くなるはずである。

500キロ走れる車両で多く見積もっても300キロだろうか。

都市部の営業においては、ギリギリまたはやや不足する距離数である。


②付加価値

コスト面や航続距離の問題を考慮しても、それを上回る付加価値があれば、導入する効果はあるのかもしれない。

しかしタクシーの料金は陸運局(国土交通省)認可により規定されており、付加価値を価格に転嫁することは現状難しい。

EVタクシーを導入することで、顧客がそれを選択し、その事業者の利益がそのコストを上回るほどに向上するという「付加価値」が必要になる。

EVタクシーだから、音が静かで乗り心地が良い、SDG的に満足感があるなどの要因を考慮しても、それを理由に目の前のガソリン車をスルーして10分20分EV車を待つということはなさそうである。

いつか全ての車両がEV化するのであれば良いのだが、現状ほとんどEVタクシーがない中で、先行してコストをかけて導入する業者のメリットはそれほど大きくないと言わざるを得ない。


③最後に、業界の未来像が見えないというところを最も大きな課題として挙げたい。

今の給与体系を続けていたら、限界まで高齢化している業界に若者は入らず、入っても定着せず、業界をよく知る人間からすれば持続性そのものに疑問を感じている状況である。

残念ながら、現状業界の主役である世代(60代)がEVタクシーを駆使する光景はイメージしづらいし、何より彼らはそんなものを求めていない。

先行投資をして若者を引き寄せ、若い世代が納得する、安定した、将来に期待が持てる給与システムを導入する画期的な業者が出てくることが必要条件になってくる。

またタクシーが社会に必要だという認識が浸透し、そこに十分な公共補助が行われることも必要不可欠にである。

将来的には配車受付や運行管理は公共で行うべきであるが、そこに至るにはまだまだ相当な時間がかかるだろう(そもそも今の段階でそんなことを考えてる役人はおらへんやろな)。

タクシーがなくなるか、社会がその必要性を認識し動き始めるか、どちらが早いか。

タクシーをなくさないために、我々も声を上げていかないといけない。