2022年11月30日水曜日

55割の終わり

 いよいよ大阪に長く蔓延ってきたタクシー安売りの根源、「55割(5000円以上5割引き)」が終わりを告げようとしているという噂を聞く。

このブログのタイトル説明にもあるが、タクシーの適正料金の追求こそがドライバーの質を高め、延いては

タクシードライバーの社会的地位の向上

という大きなゴールにたどり着く。

ここで、「55割(ゴーゴー割)」とは何か、説明しておこう。

55割とは大阪を中心に広がっている、「メーター料金5千円以上5割引き」という思い切った(無謀な)料金割引制度である

これは誤解されがちであるが、メーター料金が5千円を超えたら全て半額になるというものではない。

メーター料金が6千円として、5千円を超えたから半額の3千円になるのではなく、5千円を超えた額(千円分)を半額にするというもので、この例なら「5千5百円になる」ということである。

上の例なら、結果的に割引率は1割にも満たない。

しかし大阪から名古屋まで行ったとしたら、約180キロ、現在の大阪の料金で加算1キロ330円としたら、55割がなければ約6万円になる。

時間として普通でも約3時間かかるが、当然渋滞もある。

タクシーは高速道路の渋滞ではメーターは上がらない。

4時間かかっても料金は同じである。

5千円以上5割引きだから6万円のメーターなら32500円になる

消費税を抜いたら3万円に届かない。

さらに帰りに高速を使って帰れば、現状多くの事業者が空車時の高速料金がドライバー負担になっている。

名古屋から高速で帰れば、7~8千円の通行料がかかり、歩率(歩合給の率)が50~60%とすれば、ドライバーにはほとんど残らないことになる。

32500÷1.1=29545(税抜き営収)

29545×0.5=14773(歩合でドライバーが受け取る額)

14773-7000=7773(帰りの高速料金を引いたドライバーの取り分)

往復で少なくとも7時間はかかるだろうから、時給1000円か、またはそれを切る程度のものになる。

下道で帰れば高速料金の負担はないが、往復で10時間を超えるほどの時間がかかり、休憩を含めたら、やはり時給1000円程度にしかならない。

大阪から名古屋までの夢のようなロング客をゲットして最低賃金である。

ドライバーになって数年は、遠くに行けるだけで実入り以上の喜びを感じるものだが、慣れてきたら感じるものは「疲労だけ」としか言えない。

また20年前の小泉政権の規制緩和によって激増したタクシー台数により、この悪しき料金体系が生まれたのだが、その頃は確かにタクシーが余っていた。

その政策云々を今更言う気はないが、

今は既にタクシーが足りない時代に入っているのである

大阪から名古屋までのロング客を乗せている間に、大阪市内ではタクシーを探す客に溢れ、乗車出来ずに困っている利用者もいる。

市内で近距離の乗車を10時間続ければ、3万円を超える営収を稼ぐのは難しくない。

もはや今、タクシーにロングの客はそれほど必要ないのである

遠くまで乗るならそれだけの料金を頂かないと、ドライバーにも業者にもメリットはない

高くて嫌なら、「乗らない」という選択をしてもらったら良いだけなのである。

しかしねぇ、タクシーに乗っている以上ロング客はいつになっても「ロマン」であることに変わりはない。

そこは金じゃないよ

という意見もあるかもしれないし、

5桁のメーターの左側が動いていくのは、ドライバーにとってのエクスタシーである

というところもあるだろう。

半額でも良いやん

この「55割」という奇妙な料金体系は、「値切りの街」大阪のドライバーが20年にわたって支えてきたもので、それがなくなりつつある今こそ、彼らにリスペクトをするときなのかもしれない。