2020年12月31日木曜日

長い戦いの始まり?

 今年もまた1年が終わろうとしている。

2月頃に

「大したことないやろ」

で始まった新型コロナウイルス騒ぎは、

間違いなく「大したもの」であった…

特に若い世代に少しでもタクシーに興味を持ってもらおうと、長いことこの仕事の楽しさを綴ってきたが、こんな落とし穴があるとは考えてもいなかった…

営業収入の歩合給である限り、売り上げが下がれば必然的に給料は下がる

※歩合給とは、営業収入に歩率を掛けて給与を計算するもの。通常のサービス業における歩合とは給与の一部に歩合が「追加」されるもので、いわゆる「基本給」は守られる。しかしタクシーにおいては多くの業者でほぼ「完全歩合」を実施しており、営業収入が半分になれば、給与もほぼ半分になってしまう(比較的大きな業者においては「最低賃金保障」を行っているので、元々の収入次第では半分にまではならないかもしれないが)

残念ながら、業界としてまだこのような状況(コロナ禍)における対応、いわゆるセーフティネットは出来ていなかったと言わざるをえない

結局は他の多くのサービス業と同じく雇用調整助成金に頼らざるをえなかったわけだが、今後も考えていった上で「自力」で生き抜くことが出来ない辛さは感じる…

しかし業者そのものに収入がなければ、給与も出ない。

ない袖は振れないという話である。

そもそも業者の収入に対する料金収入の比率が高過ぎるのである

「料金収入」とは、いわゆるタクシーの利用者から頂くメーター料金の収入のことだが、これから業界に求められているのは、

料金収入以外の収入である

今回コロナ禍において浮き彫りにされた課題ではあるが、元々収入の変動が大きいことが、業界の人材獲得に大きな障害となっていた。

まずそもそもタクシーは「公共交通」であるという考え方に立って考えると、「公共の収入(補助金等)」があるべきと言える。

これは多くの地方、特に人口の少ない地域において既に問題が顕在化しているが、

必要なときに移動手段がない

というものである。

これは補助金というより、

そういう地域ではタクシードライバーはそもそも公務員である

という考え方に立つべきである。

一方で都市部においてはやはり「自力」でこの仕事を守りたいと考えると、度々唱えている

広告収入を高めること

が最も収入を高める手段と言える。

街中を常に走り回り、多くのビジネス客や観光客を乗せるタクシーは広告媒体としては、

宝の眠る箱

と言える。

この宝探しにはまだ時間がかかるかもしれないが…その可能性を信じて、発信を続けていこう。

多くの優秀な若者がこの業界に入り、

タクシードライバーになって良かった

と思える日がいつか来る日を願って…(今はそうではないゆうことやな)


2020年11月30日月曜日

ある日の何気ない車内の会話

「第3波?らしいですね」

「本当に、もう嫌になりますね」

「嫌になりますね」

「外に出るな、って言われてもねぇ」

「そうですよねぇ」

「病院で薬もらわないといけないし、買い物もしないと食べられへんしね」

「ステイホームって言ってもねぇ…1日中家にいたら、運動不足で他の病気になりますよ」

「ほんまに、ちょっと前までは外に出て運動せぇ言うて、今度は『出るな』やもんねぇ」

「嫌になりますね」

「ほんまに、嫌になるわ」

「タクシー運転手は水揚げなんぼの給料ですから、こんなのが続いたら商売になりませんわ」

「そうやんね。人が動いてなんぼの商売やもんね」

「そうなんです」

「ただ、こればっかりはどうにもならんからねぇ」

「そうなんです」

「感染者が1日何百人とか、1日何人亡くなったとか言うけど、ストレスで病気なる人も多いやろね」

「ほんまに、わたしらもこれ以上続いたら生きていけませんわ」

「今思えば、去年までは平和やったね」

「そうですね。そんなときでも人はなんやかんや不平不満言って生きてるもんですけど…」

「そうやね。何事もない1日に感謝して生きなあかんね」

「そう思えば、今もまだこうして普通に生きてるんやから平和なのかもしれません」

「そうやね…それでも嫌になるわねぇ」

「嫌になりますね」

2020年10月31日土曜日

タクシードラマ~「親父殺してしまいました」

 その日はいつもと変わらない一日で、昼間は秋晴れの素晴らしい天気だったが、夜になって冷え込んで車内のヒーターをオンにした。

このところ昼間はクーラーをつける日もあるが、夜はノズルをまわしてヒーターにすることが多い。

それでも震えるほどでもなく、車内でたたずんでスマホをいじるのが心地よい季節である。

地方都市のドライバーは駅に並んでなんぼ、長い列をじりじりと前に進んで、先頭から客を乗せる。

駅の待機が少ない朝の時間帯は数分で乗車されるが、夜になると駅の列も長くなり、動きも遅くなる。

通勤列車から降りてくる素面のサラリーマンがタクシーで帰宅することは滅多にない。

逆にこの時間はドライバーもコンビニやファミレスで食事を取るのに良い時間帯である。

こんな時間に駅の長い列に並ぶのも億劫なので、大体はコンビニでパンでも買って、お気に入りの川沿いの広い道でシートを倒し、スマホをいじる。

シートを倒すと、暗くなった空にきれいな月が浮かんでいた。

「満月か…」

スマホを助手席に置いて、しばし月をながめていた。

昨晩ゲームにはまって遅くなったこともあり、そのうち睡魔に襲われウトウトしていたとき、ふと後部座席の窓をたたく音がした。

歩道は広いものの、ほとんど人通りがないからこの場所で休憩をしているのだが、突然のことで我に返るのに時間がかかった。

「あっ…どうぞ」

若いというより、学生…もしかしたら高校生くらいの男性が後部座席のシートに深く腰掛けて、息をついた。

「ふーっ!」

「えー、どちらまで?」

「月…きれいですね」

「…はい」

若者は窓の外をながめている。

タクシードライバーの習生として、行き先を聞くまで客の投げかけた会話に乗ることが出来ない。

気の短いドライバーなら重ねて行き先を聞くが、慣れてくると、すぐに行き先を言わない客は何か訳ありで、しつこく聞くとトラブルになることを警戒する。

「ブルームーンて知ってます?」

「…いえ」

「その月で2回目の満月、今日がブルームーンなんですよ」

「そうなんですか」

イライラしたら負けである。

「降りてもらえますか」なんて言った日にはブチキレる客もいるし、ドアを切って(閉めて)しまったからには簡単に降りてもらうことは出来ない。

少し間をおいて、我々にとって重要であり、当たり前の質問をするのに絶妙なタイミングを探す。

「どちらへ行かれます?」

若者はその質問が聞こえているのか、そもそも自分がタクシーの後部座席に座っていることを認識しているのかさえ疑問に感じるような視線を窓の外に向け、遠くの空を見つめている。

「僕ね、親父殺してしまいました」

「…はっ?」

さすがにこの展開は予想していなかった。

客が突拍子もない話題を振って来たときには、大げさに反応するのがタクドラの模範解答である。

しかし、この場合は客の年齢や、状況、そしてその内容からして模範解答が見つからない。

おそらく教科書にも載っていないパターンである。

「殺してしまったんですよー・・・」

デクレッシェンドでだんだんと語尾が小さくなる。

それは逆にその言葉の現実味を強くさせるようで、少し背筋が震えた。

「いや、なんて言ったら良いんですかね…これはタクシーで、お客さんの行きたい場所にお金をもらって車を走らせる業務なんです。何があったのか、それが本当なのかどうか…いや本当でないということにしましょう。いろんなことを言うお客さんがいますから、お客さんの行き先とそのルート以外の話について責任を取る必要は少なくとも我々にはないんです。だからあの…行き先を教えてもらえますか?」

この思わぬ展開になる前は、休憩中とは言え業務として無駄な時間を使っていることにストレスを感じていたが、今は全く違うストレスに押しつぶされそうになっている。

「本当かどうかですか。家を飛び出してきて、呆然としてここまで歩いてきましたから、もしかしたら夢かもしれません。でも…とりあえず新神戸の駅まで行ってもらえますか」

もし夢なら、俺もその彼の夢の中にいるということか…、新神戸と言えばここから約1万円ほどメーターの出る場所である。

そこから東京か、または九州にでも逃げようということか。

「新神戸ですか…ところで自宅はどこなんですか(どこから歩いて来たんですか)?」

「春勝町です」

ここから5キロほどの場所である。

話の内容から個人情報を伏せたくなるとも思えるが、そこまで冷静ではないのだろう。

「春勝ですか。本当なのか、夢なのか、家に帰って確認してみたらどうですか?」

「確認して、本当だったらどうするんですか?」

「それはやはり現実としっかり向き合わないといけないでしょう。逃げたらあかんよ」

「行き先やルート以外の話は関係ないって言ってたやないですか」

この男、思ったより冷静である。

俺は彼の自宅の方向、指定された行き先(新神戸)と逆に車を走らせた。

若者は気づいていないようだったが、少しして見慣れた風景が見えたのか、スマホをいじりだした。

「どこに向かってるんですか?」

「一回家に帰った方が良いよ。金は要らないから」

「…」

「住所教えてくれる?」

「…」

「何があったん?」

若者はスマホをいじる手を止め、また窓の外に目を向けた。

「ゲームをしてて…毎晩スマホのゲームをしてて、夜遅くなって、親父に怒られて、スマホを取り上げられたんです。親父が寝ているときにそのスマホを取り返そうと寝室に行ったんですが、なぜか手にナイフを持っていて…寝ている親父を…そこ右曲がってください」

「分かりました」

アクセルに少し力が入った。

父親を刺した?という割には、若者は返り血を浴びた様子もない。

指示通り車を走らせると、住宅街の中でも割と大きめの家の前に車をつけた。

洋風の邸宅のリビングらしき部屋には灯りがついている。

「ありがとうございます」

本来はこちらが言わないといけないセリフを若者は言って、メーター料金より少し多い2千円を差し出した。

「いえ、これは…」

「受け取ってください。僕も家に帰りたかったのかもしれません」

客の言った行き先と違う場所に来て料金をもらうのは気が引けるが、タクシーが走るからにはメーターは倒さないといけない。

俺は横目にその大きな家を見て、これ以上断るのも野暮だと感じてその2千円を受け取った。

「ありがとうございました」

ドアを開けると、若者はもう一度深く礼を言った。

「ハッピーハロウィーン!」

なんだか辻褄の合わない、自分でもよく分からない言葉を返して、ドアを閉めた。

「ふぅー!」

と息をついて、その場で少しシートを倒した。

気を失ったのかもしれない。

気づくと、いつもの川沿いの路肩で目を覚ました。

助手席にはコンビニで買ったチョコクロワッサンの袋が開いていて、ドリンクホルダーには冷め切ったコーヒーが置かれていた。


2020年9月30日水曜日

年収1000万のタクシードライバー?

 栗田シメイさん(東洋経済)記事のフォローブログみたいになってきたが、

「流転タクシー」シリーズ 第7回

「個タクじゃないのに年収1000万」荒技師の流儀

こちらの記事もなかなか面白かった。

現実的にタクシーで年収1000万て可能なの?

と聞かれたら、業界人としては(業界とか言うな)

無理やろ

と言わざるを得ない。

記事にもあるようにタクシードライバーの歩率(歩合給の率)は、法人で50~60%,個人なら経営すれば70%くらいにはなるのかもしれない。

ちなみに記事に「個人タクシーは時間の縛りがない」とあるが、タクシードライバーは法人・個人に限らず「改善基準」なる時間制限があって、

https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/dl/040330-12.pdf

基本的には月の労働が約300時間(299時間)に制限されている

年収1000万を稼ぐためには、歩率が60%程度として、年に1700万、月に140万近くの営収をあげなければならない

隔日勤務(いわゆる隔勤)の場合は月の乗務日数が12~15日として、1乗務10万を大きく超える数字が必要で現実的でない。

日勤で25日乗務するとして、記事にもあるが、

1乗務約7万

これは不可能ではないかもしれない。

しかしこれを雨の日も風の日も(雨風吹いてたら営収上がるやろ)、平均して上げていくのはまた現実的でない。

また月に140万を稼ぐとして、299時間の制限いっぱい働いたとすると、

1時間約5千円

の営収が必要になる。

数字だけ見ると大したことないかもしれないが、

東京のタクシー料金が現在初乗り1052mで420円

タクシーの料金を計算する上で初乗り(フラッグシップ)はあまり関係ない

加算は233mで80円

ここから計算すると1キロの料金は343円、初乗りの色付け(乗車料)を考慮すると

東京のタクシーの1キロは約350円

5000円の営収のために走る距離は約14キロ

実車率50%として、1時間に28キロ走ることになる

これを1乗務14時間続けると約400キロほど走ることになる

がんばればそのくらい…と言いたいところだが、

日勤の距離制限は270キロ(近畿で280キロ)

高速走行は距離から減算することは出来るとは言え、毎乗務400キロを続けるのは現実的でないというより、ほぼ不可能である

と締めてしまうと、

タクシー業界に人材を呼び込みたい

というこのブログの意図からブレてしまうが…

どちらにしても、営収歩合だけで1000万も稼ごうというのは、心身ともにボロボロになり、事故の危険も大きい

もっと違うところでタクシーの魅力と社会的価値を引き出し、収入を上げていきたいというのが俺の願いである

やっぱい広告かな

2020年8月31日月曜日

心霊タクシー

 東京を中心に営業展開されている三和交通の企画が面白い。

この企画タクシーに乗りたくて三和交通に入社する若いドライバーもいるとか。

この8月は暑い日が続いて心霊話も盛り上がった?かもしれないが、

タクシーに乗っていて不思議な体験をするのは、別に夏の夜に限らない

たまに思うのだが、タクシーって不特定多数の人間が乗っていて、その一人一人がその時間、匂い、そして誰もが持つ霊的なものを車内に置いていく。

それはストレートに葬式の仕事で乗られた客だったり、そのタクシーに乗った数日後に亡くなってしまう客だったり…

生きてきた中で背負って来た荷物みたいなものを車に置いていく人もいる

それはいわゆる「霊感」のないドライバーには全く感じないものかもしれないが、

霊感の強いドライバーにとっては常にいろんな奴らが夜になると車内に常にいる

みたいなすごい世界になってる

三和交通の心霊タクシーのように、タクシードライバーに心霊話を聞くのもまた面白いのかもしれないが、

タクシーの運転席に乗ってみないと分からない世界

若い人は是非体験してみてください(意味不明な勧誘やな)

2020年7月31日金曜日

大阪のタクシー事情

というタイトルを書いても、また栗田シメイさんの記事からの引用になるが


上の記事では、大阪のワンコインタクシー(まだあったんやな)と、長距離割引について「流転タクシー」シリーズとして、ドライバーとの生のやりとりと共に書かれている。

「ほかの地域はある程度統一されているけど、大阪のタクシー料金は見事なまでにバラバラ」

まさにこれは大阪名物というべきか。

そもそも利用者にとって料金の選択が出来るということが良いことなのか(利用しやすいか)どうかというのはこの業界において興味深い議論であり、長くなるので置いておこう。

しかし、

「大阪のタクシーの安さはたぶん日本一」

これは恐らく間違いではないだろう。

タクシー研究の上で、料金の分析の仕方はいろいろあるが、おそらく単純に「料金÷距離」としても大阪はかなり上位に来るはずである(料金バラバラだから分析難しいけどな)。

ただ高度な計算式で物価指数などを加えたら、大阪は間違いなくぶっちぎりでタクシーが日本一安い地域と言い切れるだろう。

「ただ、ドライバーにとってうまみはなく、実入りは少ない」

これも間違いないと思っていた(そう思って、大阪から逃げてきたんやからな)。

ただ栗田さんの記事の興味深いところはここからである。

タクシー白書によるタクシードライバーの年間収入によれば2000年は316万円で全国平均(338万円)を下回り、東京の数字(443万円)も大きく下回っている(誰かが逃げてきたころやな)。

しかし、2019年の同白書のデータでは413万円と20年近くで100万以上も増加している(全国平均は360万円)

しかもこの白書の数字というのは、あくまでタクシードライバーという格差の大きい(特に都市部は大きいよな)職業の「平均」を示している。

大阪のタクシーは高齢化が進んでいて、平均年齢は約65歳と既に年金をもらっている世代である。

要するに多くの、おそらく半分以上が年金をもらいながら「余裕を持って(ゆっくり休みながら)」仕事をしている「平均」なのである。

数少ない若い世代は間違いなく平均を大きく上回る数字を上げていたはず…である(大阪帰ろうと思ってたのにな)

このコロナウイルスが出てくる前までは・・・

記事にもあるように、大阪はインバウンドによる恩恵が大きく、逆に今回のコロナ禍におけるダメージも大きい。

なんとかまた平和の時代が戻ってきてほしいと願うばかりである。




2020年6月10日水曜日

栗田シメイさんの記事

東洋経済の栗田シメイさんの記事が面白い

このところ「流転タクシー」シリーズとして、タクシーに乗り込み、「今」のタクシーの現状を文字にしてくれていると感じる臨場感がある。

今回は、東京でタクシーに乗りながら、弁護士を目指しているという森田さん(仮名、40代)の話↓

https://toyokeizai.net/articles/-/354483?utm_source=author-mail&utm_medium=email&utm_campaign=2020-06-07

森田さんは高卒後、派遣社員として職を転々とし、一時は年収1000万近くまで稼いだそう…(ほんまか?)

その後は語学力を活かし、青年海外協力隊としてジャマイカへ、そこで底抜けに明るいタクシーに魅力を感じた(日本のタクドラ暗い人多いもんな…)。

そしてまた日本に帰ってIT関係の職に就くが、退職後に法科大学院へ通い、今は東京でタクシーに乗りながら司法試験を目指している(栗田さん、よくこんなおもろい人見つけたな…)。

森田さんの最後のコメントが良いね。

「司法試験に合格しても、私はタクシードライバーを辞めません。この仕事が好きなんです…」

この業界の「今」にネガティブな面が多いのは否めないが、こんな面白い連中もたくさんいて、(会ったこともないが)こんな仲間とこの業界の「未来」を創っていきたい。

森田さん、司法試験がんばってください!

栗田さんの記事に注目である。
(栗田シメイ記事一覧)

2020年5月12日火曜日

今回のコロナ騒動について思うこと

基本的にこんな業界の一個人の意見は誰も興味はないかもしれないが(分かってるんなら書くな)、

今回のコロナ騒動について思うことは、外出自粛要請が続く中で当然タクシーの利用もとんでもなく減ってるわけで、

政府が「7~8割の接触(移動)を減らすように」

と言ってる中で、データ的にもタクシーの利用は実際7~8割減ってるわけなんですよ。

これはえらいことで、通常のサラリーマンなら基本固定給で働いてるわけやけど(ちょっとしたインセンティブはあるやろけどな)、タクシーってほとんど完全歩合やから、収入が7~8割減るわけですよ(そこ敬語か)。

そんな中やはり7~8割はきついから、政府の「雇用調整助成金」やらを使って多くのタクシー会社が休業手当を使ってドライバーを休ませている。

現状多くの地域でタクシーの量はえらい減ってるはず

このゴールデンウィークはそれでも良かった。

うまく休業を使ってコントロール出来てる業者は凌げたかもしれないし、それに間に合わなかった業者は痛手を被ったのかもしれない。

それも「利用者目線」で言えば大きな問題でもないのだろう

問題はここからや

当たり前のことだが、人は少しづつ動き出す。

人が動けば、当然タクシーは必要になる。

繰り返すが、人が動く限りタクシーは必要なのである。

しかし、今タクシーは動いていない

何故なら助成金があるから

業者はそれを使う

動くかどうか分からない利用者より、確実な60%を取る

これから緊急事態宣言なるものが解除されて、人が動き始めるのは良いが恐らくタクシーは動き始めない。

人が動くのが先か、タクシーが動くのが先かと考えたら、恐らく前者だろう。

これから来月にかけて、間違いなく

タクシー難民

が生まれるだろう。

この流れの中でロイヤルリムジンではないが失業や解雇もあるだろうし、多くの高齢ドライバーはこれを機に運転席を離れるだろう。

その後に残るのは何かと言えば、

タクシーに乗りたくても乗れない

逆に言えば、

ドライバーにとっては利用者が溢れている売り手市場である。

率直に言って、今はタクシーにとってひどい状況だが、これが過ぎれば

タクシーは変わるのではないか

と前向きに捉えたい。

話は変わるが、東洋経済で今回の新型コロナ騒動を通じてタクシーについて追ってくれている記者(栗田シメイさん)がいる。

フォローしていきたい。

https://toyokeizai.net/list/author/%E6%A0%97%E7%94%B0+%E3%82%B7%E3%83%A1%E3%82%A4

2020年4月19日日曜日

ロイヤルリムジン問題について考える

4月8日に流れた、今回の新型コロナウイルスに絡んだタクシー業界にとっては衝撃的なニュース

ロイヤルリムジン、全乗務員一時解雇し失業保険勧める…

いろいろと考えることはある。

もちろん、これはない

という前提の下に、

この混乱状況の中で、苦しんでいる経営者の気持ちも分かる

安倍さんが突然マスクを配る決断をしたように、

誰かの生活を担っている人間というのは、

ものすごいストレスを背負っているのだろう

判断力がおかしくなるのも分かる。

何より我々下々の人間はそもそもそこで何かを決断しなければならないというストレスの存在さえ分からない(安倍は人間じゃないみたいに好き放題言われてるしな)

この際俺の立場では、この業界を守りたいし、

今でもこの業界の社会的地位を高めたいという強い想いがある

ロイヤルリムジンの金子社長すみません

苦しかった中で迷いがあったのかもしれません。

決して保身での決断ではなかったのは分かります。

あなたが乗務員を想っていた気持ちも伝わってきました。

しかし、他の方法があったと言わせてください(中小企業なら雇用調整金で昨年度平均賃金の9割助成されるわけやから、過去3か月平均で休業補償すればぶっちゃけプラスになるんやからな)。

今回のあなたの決断は間違いなく、若者をまたタクシー業界から離れさせるきっかけになりました

今回のコロナ禍で片手が届きそうやったタクシー業界の光がまた遠のいたことは否めない。

しかし俺もまだ40台(後半か)

人生をかけて、この業界の地位をあげてやるという決意を強くさせている

来年の東京オリンピックは無理かもしれない…(せっかくチケット当たったのにな)。

しかし、10数年後にまた日本にオリンピックが来るだろう(大阪か神戸なら良いな)

そのときには、そこで現場でタクシーに乗っている60台のいけてるドライバーでありたい

若い奴らに、

「昔はタクシードライバーなんて近所にも親戚にも言えない職業やったんやで」

と笑いながら話せる日が来るまで。





2020年4月2日木曜日

9年前の投稿 「ある警備員との絆」

長いことブログ書いてるけど、我ながら傑作と思える9年前の投稿をアップしよう(ここまで言われると突っ込みようがないな…)
※9年前やから、「うつってしまった(感染してしまいました)」は新型コロナではありません(もうその頃にコロナかかってて、免疫出来てるんかもな)

年度末
この時期の切なさというのは独特なものがある。
何かが終わり、何かが始まる・・・
その積み重ねが人やものをやがて大きく変えていくだろう、という想像力も逞しくなる。
俺も何年か前のこんな時期に運転手を始めた。
タクシーに乗り始めた頃は楽しくて、今思えば売上とかどうでも良かったように思う。
運転手になって間もない頃、ある日駅前の工事現場の脇に車を停めて待機していたら、工事現場の警備員が近づいてきた。
身体はでかく日焼けしていて、俺と同年代だろうか、警備員にしては目立って若く見えた。
「すみませーん、トラックが出るんですこし車動かしてもらっていいですか?」
「はーい」
誘導されるままに車を動かす。
「どうもありがとうございます!」
そもそも違法停車である。お礼を言われる筋合いはない。
しかし彼はなんというか交通誘導員らしくなく
やる気に満ちていた
こんな奴もいるんや
その日からその工事現場を通る度に彼のことが気になった。
恋愛対象としてではない(断らんでいい)
目が合えばお互いに手をあげ、ときどきちょっとした会話をしたりもした。
そしてある日またゆっくりと会話できる機会があった。
普通の同世代の男同士がするような他愛もない会話の中で俺が言った。
「なあ、何でこんな仕事(警備員)してるん?自分もタクシー乗ったらいいやん」
するとそれまでのフレンドリーな空気が明らかに変わり、彼は仁王様のような顔を真っ赤にして言った。
「俺は好きでこの仕事してるんや。これからも、出来ればずっとこの仕事を続けたいと思ってる」
当然俺は必死に謝った。
タクシー運転手として、自らが誇りを持ってやっている職業を見下され悔しい思いをすることは今でもある。
なのに俺は彼の職業(警備員)を見下していた
タクシーに乗っていると、本当に様々な職業の人と接する機会がある。
一流企業の社員、中小企業の経営者、医者、教授、スポーツ選手・・・
人の羨むような社会的地位や収入の高い仕事をしている人も多い。
しかしどれだけの人が胸を張って言えるだろうか。
「俺はこれからもずっとこの仕事を続けていく」
「しがみついていく」、というのはよくあるだろうが・・・
今の俺は言えるだろうか?
ハンドルを握りながらよく考える。
そのうち彼の現場が変わり、道で会うこともなくなった。
彼は彼の仕事について、
いろんな現場で、いろんな状況があって、いろんな人の対応がある。
そんな風に
人を見て、人と接することができる
そんな面白さがあると話していた。
なんかタクシーとつながるとこがある。
数日前空車で走っていたら、
何年ぶりに道でたまたま彼を見かけた
暖かい日で、年がいもなく短パンで歩道を歩きながらでかい体を縮めて携帯をいじっていた。
クラクションを鳴らすと、すぐに俺とわかったようだ。
向こうから大きく手をあげてきた。
信号で止まって、運転席の窓を開ける。
「おう!久しぶり、休み?」
「うん、ほんまに久しぶりやな。やっぱりまだタクシー乗ってるんや」
あのときと変わらない日焼けした顔で、うれしそうに言った。
「なかなかここ(運転席)から離れられへんわ。そっちは今はどこの現場行ってんの?」
3月31日(木) 景気指数50 晴
23:30売上 14,530 9回
最終売上 34,640 18回(7回) 11.75時間 MAX 4,070
かみさんと上の子供が風邪でダウンしていたので、
16時頃には仕事を切って子供の保育園の迎えに行ったり、
家で晩飯を作ったりしていたら
うつってしまった・・・
らしく夜はしんどかったが、
さすが年度末、
夜のタクシー乗り場はすごい行列やった
22時過ぎから約4時間で11回はすごい。

2020年3月31日火曜日

収束後

新型コロナウイルスの猛威に震えながら暮らしていた頃、誰もが収束を夢見ていた。

中国武漢から始まり、韓国、イランから欧州、米国へ…その後のアフリカは悲惨やった。

日本にもじわじわと広がっていって、1年延期したオリンピックも中止が発表された頃は多くの高齢ドライバーは運転席を離れていた。

感染防止のため、電車やバスも運休や減便が始まるとタクシーの需要は増えたものの、ドライバーが足りない。

各業種で雇用削減が行われる中、正規雇用をされていなかった若者の向かう先は介護かドライバー、介護は感染リスクが高いと感じられたのか、多くの若者がタクシーに乗ることになった。

それでもタクシーは足りず

自動運転タクシーは事態に間に合わず

やっとこのときを迎えた。

今年のロスオリンピックはアフリカの一部の地域を除いて、開催されそうだ。

12年ぶりのオリンピック…

あれから8年、高齢化社会と呼ばれていた時代が懐かしい

世界的な人口減と平均年齢の劇的な低下

使われなくなったビルが解放され、住居にかかるコストはなくなった。

工業の自然淘汰により、環境は守られた。

多くの若者は農業に勤しみ、

また大人数を乗せる公共交通機関(電車やバス)がほとんどなくなり、

自家用車は一部の富裕層だけが持てる贅沢品となり、

タクシーが人々の足となった

こんな時代も悪くないかもしれない(お前がいなくなれ)

2020年3月10日火曜日

タクシーに乗ろう

新型コロナウイルスの影響が全世界に負のインパクトを与えている。

そんな今こそタクシーに乗ろう(なぜ?)

この大変な状況の中で在宅勤務をしたり、休校による影響で自宅で子どもの面倒を見ないといけない人たちもいるやろう。

勤務先の工場が一時操業停止になったり、商店の客が激減している人たちもいるやろう。

この1億2千万の人口を抱える国で、数百人の感染者がいることはきっと大変なことなんでしょう(何が言いたい)

そんな中で戦っているドライバーがいる

現状で陽性反応を示している感染者は少数とは言え、タクシーにはどんな人が乗ってくるのか分からない。

突然著名な芸能人やスポーツ選手が乗車することもあるわけやから、その少数の感染者が乗車してくる可能性も十分あるわけやし…

日本中で多くのドライバー(主に高齢ドライバー)は乗務を控えていることやろう。

しかしタクシーは基本歩合制

基本休んだら給料にならないし(有給あるやろ)、利用者減は収入に直撃する

ある意味命をかけて(言い過ぎやろ)、生活のために、家族のために、そして

こんな中でもタクシーを必要としている利用者がいると信じてハンドルを握っているドライバーがいます(ここ敬語か)

そんなドライバーは当然自らを守るために、利用者を守るために、万全の対策をしてる

タクシーは安全です

今こそ、タクシーに乗ろう

窓からの景色が希望に満ちていると信じて…(大丈夫か)

2020年2月29日土曜日

新型コロナウイルスについて

今回のコロナ騒動について、全く影響力のない、一個人として言わせてもらえば、

騒ぎすぎやねん

ほんまに、信じられんわ。
確かに感染された方や亡くなられた方はほんまに気の毒やけど。
インフルエンザはもちろん、その他原因不明の風邪でも毎年相当数の方が亡くなられているわけで、今回のコロナウイルスの犠牲者はその規模から言って今までの普通の「風邪」レベルと言っても問題ないと思うのだが。
得体がしれない(空気感染するかも)というところで、大騒ぎしてるのか、世界的な中国バッシングの流れなのか。
そうだとすれば、対象をディスるために自分までで犠牲になる(なってしまった)みないなアホな話でほんまに呆れるわ…

ただ今回切実に感じるのは、

責任について

これはどんな仕事でも、もちろんタクシーにおいても非常に重要な要素になるわけだが、

誰だって責任なんて取りたくない

それが社会全体で共有されると今回みたいなどんでもない事態になると言うことを

今回は大したことない(と思いたい)として、

ネット社会でこんなことが続くかもしれないと考えると

ある意味恐怖やね




2020年1月31日金曜日

最後の出勤

駅に入ると、カジュアルなジャンパーを来た年配の男性がタクシー乗り場で一人待っていた。

人身事故で電車が止まって、駅には行列が出来ていると思って入ったのに、待っていたのは一人だけ。

時間的にも電車のトラブルで取引先への訪問が遅れたスーツ族を想定していたのに、全てが想定外だった。

「XXまで」

乗車してきた男性の行く先は郊外の工場集積地の大企業工場で、それもまた想定外だった。

「分かりました」

「いやー、ひどい目にあった」

「電車ですか」

「あぁ、代替バスに乗って、(30分のところ)2時間もかかったわ」

「それは大変でしたね…」

男性はやっと駅からタクシーに乗れて安心したのか、饒舌に話し始めた。

「それにしてもこの辺は食うとこないな。どこ(の店)入ってもまずい!XXもあかんし、XXの中華丼は米がまずくて上の餡だけしか食べれんかった」

「(ちょうど通過していた)この店はおいしいですよ」

「(駅から)こんなとこまで歩けるか!」

「そうですね…」

それにしても、どう見ても休日に遊びに来た感じに見えるのだが、行き先が企業とは…しかも駅から6~7キロほどの距離である。

「(今日は)仕事ですか?」

「そうや。でも(今9時過ぎで)10時過ぎまでやから、行ってもほとんど終わりやけどな」

「あぁ…製造現場ですか?」

「いや、配送の管理やけど…まあ(今日は)どうでもええわ」

「…??」

「今日が最後やねん」

「えっ!」

タクシーに乗ると、こういう瞬間に出くわすことがあって、その会話や、話す表情なんかは日常では見られないものである。

「今日が最後やから、仕事より荷物まとめとかな。そういうのや」

「あぁ、長いこと勤められたんでしょうね」

「あぁ、でも、もうええわ。十分やわ」

この辺からはちょっとルームミラーが見られなくなった。

乗車してから怒涛のように話続けていた男性は少し沈黙していた。

「これからは家でゆっくりされるんですか?」

「まあ、そうやな。食うことくらいしか楽しみないから。昼間からうろうろ店屋探して歩くわ(笑)」

「おいしい店探してくださいね」

「うまい店なんかあるか!まずいとこばかりや(笑)」

会社のゲートに入ると、従業員の入り口につけた。

「2,XXX円です」

「はい、ありがとな」

「領収書は?」

「そんなもんいらんわ」

会社まで自腹でタクシーか…長いこと仕事してたら余裕出来るんかな。

3千円出されて、雰囲気的に釣りは要らん(チップ)と言われるかと思ったが、そんなこともなかった(下衆な期待すんな)。

男性の人生最後の出勤の後ろ姿を見送って、また駅に戻った。