2026年2月5日木曜日

タクシーストーリー㉒ 路上研修1

 路上研修初日、

事務所営業用のコンフォート(※トヨタの旧式タクシー専用車)の運転席に乗って、ルームミラーの角度などを、なんとなく合わせていた

少し待っていると、グレーのスウェット上下(寝間着か)の社長が助手席に乗った

「さあ、行こか」

「どのコースへ行きますか?」

「コースって…好きなとこ走ったら良いやん」

「あの…先ほど課長から、研修用コースの資料頂いたんですけど」

他の座学研修なども合わせた、A4サイズの分厚い資料を社長に見せた

「ほう…こんなもん作っとるんか」

社長はその資料をペラペラとめくりながら、興味なさそうに目を通していた

事務所で「研修」というものの内容を共有してはいないということは、分かった

「あの…この部分が路上研修用のコースになってるみたいです」

社長が見ている横から、資料の中ほどのページを指して言った

「ほう…あんた、お客さん乗って、こんな資料見ながら走るんか?」

「…いえ」

「または、お客さんがこんな紙の資料持ってきて、『このコースで走ってください』言ってくるんか?」

「そんなことはないと思いますが」

「この世界はな、必要か、必要ないか知らんけど、つまらん資料とか、そんなおもろない仕事に嫌気がさした連中が入ってくるんや」

「…はい(相手側に嫌気さされて入ってくる人の方が多いと思うけど)」

「とにかく資料なんて気にせんで良い。あんたの好きなように走りなさい」

社長は分厚いA4用紙の資料を後部座席に投げて言った

「わかりました」

「今日わしが言いたかったのはそれだけや。あんたらも今まで要らん資料とにらめっこしたり、室内に閉じ込められて仕事してたかもしらんけど、ここに来たからには自由に走れ。それがタクシーや」

灘駅の近くの営業所を出て、

六甲山に登っていった

「仕事では三宮周辺走ることが多いやろけどな、こんなんも良いやんか。ちょっとそこ入ってみ」

社長の指したところは「鉢巻展望台」と看板が出ていた

「はちまき…(変な名前)」※実際あります

看板の矢印に沿って入ると、小さな駐車場には、コンビニなどの食料のゴミが少し散らかっていた

「まあ、降りよか」

車を降りて、社長はそこらにあるゴミを少し拾っていた

狭い展望広場のようなところに行くと、

「わぁ…」

思わず言葉を失った

眼下には、神戸の街が広がっていた

ビルの少ない街並みと、神戸製鋼から上がる煙、海には太陽の光が差し、コンテナ船などが行き来している

自分が住んでいた街がこんなに美しいとは…

「これがお前らの仕事場や」

「…きれいですね」

「狭い室内でパソコンいじってたりな、取引先と電話しながら神経すり減らしたり、うざい上司に適当に返事したり、これからはそんなことする必要ない。

(眼下を指して)この仕事場で自由に走り回ったら良い。

こんな楽しい仕事ないで」

研修初日のこの風景は今も忘れない


2月4日(水) 56,550 36回

苦しい闘いが続くなぁ

回数が少なすぎる




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