2022年12月31日土曜日

いよいよタクシーの時代が来た!

 ここへ来て、本当にタクシーの時代が来た

ほんまにそう思える。

コロナは業界にとって試練だったが、それもまた業界が一皮剥けて、新しい景色を見れる。

そう感じれる1年でした。

来年こそ、タクシーを楽しみましょう!

2022年11月30日水曜日

55割の終わり

 いよいよ大阪に長く蔓延ってきたタクシー安売りの根源、「55割(5000円以上5割引き)」が終わりを告げようとしているという噂を聞く。

このブログのタイトル説明にもあるが、タクシーの適正料金の追求こそがドライバーの質を高め、延いては

タクシードライバーの社会的地位の向上

という大きなゴールにたどり着く。

ここで、「55割(ゴーゴー割)」とは何か、説明しておこう。

55割とは大阪を中心に広がっている、「メーター料金5千円以上5割引き」という思い切った(無謀な)料金割引制度である

これは誤解されがちであるが、メーター料金が5千円を超えたら全て半額になるというものではない。

メーター料金が6千円として、5千円を超えたから半額の3千円になるのではなく、5千円を超えた額(千円分)を半額にするというもので、この例なら「5千5百円になる」ということである。

上の例なら、結果的に割引率は1割にも満たない。

しかし大阪から名古屋まで行ったとしたら、約180キロ、現在の大阪の料金で加算1キロ330円としたら、55割がなければ約6万円になる。

時間として普通でも約3時間かかるが、当然渋滞もある。

タクシーは高速道路の渋滞ではメーターは上がらない。

4時間かかっても料金は同じである。

5千円以上5割引きだから6万円のメーターなら32500円になる

消費税を抜いたら3万円に届かない。

さらに帰りに高速を使って帰れば、現状多くの事業者が空車時の高速料金がドライバー負担になっている。

名古屋から高速で帰れば、7~8千円の通行料がかかり、歩率(歩合給の率)が50~60%とすれば、ドライバーにはほとんど残らないことになる。

32500÷1.1=29545(税抜き営収)

29545×0.5=14773(歩合でドライバーが受け取る額)

14773-7000=7773(帰りの高速料金を引いたドライバーの取り分)

往復で少なくとも7時間はかかるだろうから、時給1000円か、またはそれを切る程度のものになる。

下道で帰れば高速料金の負担はないが、往復で10時間を超えるほどの時間がかかり、休憩を含めたら、やはり時給1000円程度にしかならない。

大阪から名古屋までの夢のようなロング客をゲットして最低賃金である。

ドライバーになって数年は、遠くに行けるだけで実入り以上の喜びを感じるものだが、慣れてきたら感じるものは「疲労だけ」としか言えない。

また20年前の小泉政権の規制緩和によって激増したタクシー台数により、この悪しき料金体系が生まれたのだが、その頃は確かにタクシーが余っていた。

その政策云々を今更言う気はないが、

今は既にタクシーが足りない時代に入っているのである

大阪から名古屋までのロング客を乗せている間に、大阪市内ではタクシーを探す客に溢れ、乗車出来ずに困っている利用者もいる。

市内で近距離の乗車を10時間続ければ、3万円を超える営収を稼ぐのは難しくない。

もはや今、タクシーにロングの客はそれほど必要ないのである

遠くまで乗るならそれだけの料金を頂かないと、ドライバーにも業者にもメリットはない

高くて嫌なら、「乗らない」という選択をしてもらったら良いだけなのである。

しかしねぇ、タクシーに乗っている以上ロング客はいつになっても「ロマン」であることに変わりはない。

そこは金じゃないよ

という意見もあるかもしれないし、

5桁のメーターの左側が動いていくのは、ドライバーにとってのエクスタシーである

というところもあるだろう。

半額でも良いやん

この「55割」という奇妙な料金体系は、「値切りの街」大阪のドライバーが20年にわたって支えてきたもので、それがなくなりつつある今こそ、彼らにリスペクトをするときなのかもしれない。


2022年10月31日月曜日

タクシー料金について

 来月14日より、東京地区でタクシーの運賃改定(値上げ)が行われる。

現在初乗り1.052キロで420円のところ、1.096キロで500円に、加算メーターは現在233メートルで80円のところ、255メートルで100円となる。

そもそも1.052とか、1.096ってなんなん?

とも思うが、陸運局の人たちが一生懸命「原価計算」とやらをした結果らしい。

目的は分かりにくくすること

と思われても仕方がないような料金体系ではある。

タクシー料金について、よく「初乗り料金」が議論されるが、そもそも地域によって「初乗り距離」もバラバラであることは意外と知られていない。

東京が420円とか、500円とか地方(多くは600円台)より安いわけではなく、東京は初乗り距離が短いため、表面上初乗り料金が安く見えるのである。

タクシー料金において重要なのは、加算距離である

距離料金自体は加算距離で計算出来る。

例えば今回の東京の料金は255メートルで100円なので、

1000(1キロ)÷255(加算距離)×100(加算料金)≒392.15...(1キロあたり料金)

1キロ約392円と計算出来る

従来の料金で上の計算をすると、1キロ約343円になるので、14%程度の値上げになる。

この10月に消費者物価上昇率が3%に達したと大騒ぎしている中で、タクシー料金の上昇率は非常に大きいと言わざるをえない。

ちなみに1キロ392円なら「初乗り料金」とは何なのか?

392(1キロあたり料金)×1.096≒429.63

初乗り距離の料金は本来約430円となる。

500(初乗り料金)-430(距離料金)=70

70円の差額は何かと言うと、これがいわゆる「乗車料金」ということになる

乗車料金は英語では、「flag fall(フラッグフォール)」または、「flag down(フラッグダウン)」などと言い、要するに「(乗車出来ますよという)旗を降ろす」ことを表す。

ただ日本においては、この乗車料金という言葉自体がない

初乗り料金はわずかな乗車料金と初乗り距離の料金を含んだ料金であり、そのこと自体にほとんどの利用者は気づいていないし、重要性も感じていない。

ちなみに今回の東京の乗車料金は従来の約60円から約70円に10円ほど上がるだけである。

海外の料金設定においては、この乗車料金が利用者の乗車の判断材料となる。

日本の料金体系において隠されているこの「乗車料金」は、あまり値上がりしない

従来の初乗り距離を少し超える距離、例えば1.08キロほどを乗車した場合は料金は500円で変わらないということになり、14%もの大きな値上げをするにも関わらず、利用者に値上がり感を感じさせない絶妙なマジックとなっているのである。

そもそも日本においてタクシーという乗り物自体、非常に高い

乗ろうか、乗らまいか、迷うような状況であれば当然乗らない選択肢を取るのが自然である。

乗らなければならないような状況に置かれている(追い詰められている)からこそ、タクシーに乗るのである

多くの場合、そこに価格等々の判断材料なんてもの自体が存在しないのである。

これからもタクシー乗務員の減少を止めることは出来ず、供給が追い付かない中で、料金のさらなる上昇も避けられない。

しかしタクシーという乗り物は、そこに競争がなければ、今の倍の料金になっても利用がなくなることはない。

今後我々はその原資を、乗務員、車両、システムの質の向上に効率良くつぎ込み、この業界の姿を変えていくことが出来るか。

面白い時代がやってきたと感じる(利用者は面白くもなんともないやろ)

2022年9月30日金曜日

タクシーGO(タクシー車内での会話)

乗客(以下「客」):「タクシーGOってどうなんですか?」

ドライバー(以下「ド」):「どうなんですかって…?」

客:「いや、最近みんなGO、GOって、『ジャパン(タクシー)』とか、『ゴー』とか」

ド:「郷ひろみ…みたいですね」

客:「わたしGOアプリ、使ったことないんですよ」

ド:「なんでですか?」

客:「いや、なんか怖くて」

ド:「何が怖いんですか?」

客:「あんなんで本当にタクシー来るのかなって」

ド:「アプリは入れたんですか」

客:「はい」

ド:「試しに使ってみたらどうなんですか?(一度呼んだら、はまるタイプやな)」

客:「でも友達に聞いたら、GOで呼んでみたけどなかなか捕まらなくて、結局電話で呼んだ方が早かったって」

ド:「それは電話で呼んでみないと、(どっちが早いかは)分からないじゃないですか」

客:「そうですかね」

ド:「アプリで呼んでタクシーが来ないってことは、近くに空車がない、または駅や乗り場に乗客が待っている状況で、アプリ配車を取るメリットがないという時間帯やエリアということだと思うんですよ。そんなときは結局電話で呼んでも捕まらないのかなと」

客:「メリットがないって、運転手さんが客を選んでるってことですか?」

ド:「鋭い質問ですね…でも、答えは『イエス』と言わないといけないでしょう。そういう時代になってます」

客:「選ばれるには、どうしたら良いんですかね」

ド:「またまた鋭い質問ですね。単純にある程度の距離乗られる(3千円以上など)のなら行き先を登録するとか、大きな道の停まりやすい場所まで出て、ドライバーの分かりやすいところを乗車地として指定することかな。稼ぐドライバーは効率を考えますから」

客:「別に『稼ぐドライバー』に来てもらわなくても良いときは?」

ド:「稼がないドライバーはそもそもGO配車取らないでしょう(笑)。年配の方とか、そういうの苦手ですから」

客:「そうなんですね。運転手さんは(若く見えるけど)GOとか取らないんですか?」

ド:「いやGOは付けてないんですよ」

客:「なんでですか?」

ド:「いや、なんか怖くて(配車手数料が)」

2022年8月31日水曜日

タクシーのEV化について

 タクシーのEV化については、随分前から議論されているが、なかなか進んでいないというのが現状だろう。

EV化が進まない要因として考えられるのが、

①航続距離

②付加価値

③業界の未来像が見えていない


①に来るのは航続距離であろう。

元々最も大きな問題はコスト面であったが、これについては年々コストは下がっており、現在は300万円台での調達が可能になっているようである。

https://evdays.tepco.co.jp/entry/2021/11/09/000023

この程度の金額で車両が調達出来れば、ジャパンタクシーのコストと大きく変わらなくなってきている。

しかし一般の車両価格と比較して、タクシー車両は架装費用(タクシーメーター、行燈など)がかかるため、相当額の追加費用を付加しないといけない。

そこを公共の補助金などでクリア出来たとしても、問題になってくるのが、「航続距離」である。

現在この部分も日々進歩していて、1回の充電で500キロ近く走行可能な車両も出てきているようである。

ただ、航続距離の長い車両は当然価格も高くなるし、実際メーカーが公表する航続距離は、アイドリングすることなく、常に走っている状況での距離である。

タクシーは待機時間等アイドリング時間が長く(アイドリングストップの技術も進歩しているが、待機中にストップしてしまうとエアコンもストップすることになり、現実的にはオンのままで待機することになる)、公表されている航続距離よりかなり短くなるはずである。

500キロ走れる車両で多く見積もっても300キロだろうか。

都市部の営業においては、ギリギリまたはやや不足する距離数である。


②付加価値

コスト面や航続距離の問題を考慮しても、それを上回る付加価値があれば、導入する効果はあるのかもしれない。

しかしタクシーの料金は陸運局(国土交通省)認可により規定されており、付加価値を価格に転嫁することは現状難しい。

EVタクシーを導入することで、顧客がそれを選択し、その事業者の利益がそのコストを上回るほどに向上するという「付加価値」が必要になる。

EVタクシーだから、音が静かで乗り心地が良い、SDG的に満足感があるなどの要因を考慮しても、それを理由に目の前のガソリン車をスルーして10分20分EV車を待つということはなさそうである。

いつか全ての車両がEV化するのであれば良いのだが、現状ほとんどEVタクシーがない中で、先行してコストをかけて導入する業者のメリットはそれほど大きくないと言わざるを得ない。


③最後に、業界の未来像が見えないというところを最も大きな課題として挙げたい。

今の給与体系を続けていたら、限界まで高齢化している業界に若者は入らず、入っても定着せず、業界をよく知る人間からすれば持続性そのものに疑問を感じている状況である。

残念ながら、現状業界の主役である世代(60代)がEVタクシーを駆使する光景はイメージしづらいし、何より彼らはそんなものを求めていない。

先行投資をして若者を引き寄せ、若い世代が納得する、安定した、将来に期待が持てる給与システムを導入する画期的な業者が出てくることが必要条件になってくる。

またタクシーが社会に必要だという認識が浸透し、そこに十分な公共補助が行われることも必要不可欠にである。

将来的には配車受付や運行管理は公共で行うべきであるが、そこに至るにはまだまだ相当な時間がかかるだろう(そもそも今の段階でそんなことを考えてる役人はおらへんやろな)。

タクシーがなくなるか、社会がその必要性を認識し動き始めるか、どちらが早いか。

タクシーをなくさないために、我々も声を上げていかないといけない。

2022年7月31日日曜日

ある夜の出来事①

 その日は暑かった。

タクシーの外に出たら暑いので、昼間からずっと冷房を最大にして、流すのもうんざりして、あまり人の来ない駅の待機に入ってスマホで時間をつぶしていた。

この駅は主要駅の間にある小さな駅でタクシーの待機は少ない。

待機が少ないということは、客も少ないのだが…

この日も15時ころに待機に入ると、待っていたのは聞いたこともないような会社の車両が1台あったのみ、2台目につけた。

そもそも普段入らないような駅の待機は、どこに停めて待ったら良いかも分からない。

適当に車を停めて、車を降りて前に停めている車両へ挨拶へ行く。

何年かタクシーに乗っていると、これは意外と大事な行為である。

駅の待機など基本自由ではあるが、主要駅はなわばりが張られていて、新入りが来れば常連たちの矢のような「視線」の洗礼を浴びることになる。

空港など入った日には、トイレに行っている間にタイヤがぺしゃんこになっていたなんていう類の話もよく聞くので、とても近寄る気にならない。

だから待機で少し休みたいときには、なるべく小さな、待機の少ない駅を選ぶ。

しかし初めて入った駅で挨拶もせずにいると、いつの間にか気まずい空気が流れていて、居心地が悪くなる。

だから待機の並び方を聞く口実に、コミュニケーションを取るのが得策ということに最近気づいてきた。

「すみません、待機って、あのあたりで良いですかね?」

窓を開けた年配の運転手は、後方にタクシーが停まっていることに初めて気づいたように、持っていた女性誌を助手席に置いた。

「あぁ…、良いんちゃう」

一通り自分の顔を品定めするように、顔と目をぐるりとまわし、再び女性誌に手をかけた。

「ありがとうございます!後ろに待機が来たら、少し前に詰めますね」

コミュニケーションは一瞬で良い。

そう思っている俺が車に戻ろうとすると、年配の運転手が言った。

「待機なんて、こーへんわ。自分、なんも知らんのか」

「はい?」

「ここは大きな駅ちゃうから、昼間も客なんてほとんど乗らへん。1時間に1本あれば良い方や」

駅の待機に入ると、よく聞くフレーズである。

要するに、ここは客が少ない→入ってくんな、というバリアを張るのである。

「いえ分かってます。5時までに1本積めたらよいかと思って」

精一杯の笑顔を作って答えると、

「あー、分かった。それで休憩か」

「そのつもりです」

このおっちゃんは5時までには帰るやろ。誰もいなければ、そのあともう一回入ったろかと密かに考えていた。

「そうか、そんなら良いねん。暗くなったら、この駅には近づくなよ」

ここまで露骨にバリアを張る言動も珍しい。

「なんでですか?」

年配の運転手は眉をひそめる。

「あんた、ほんまに知らんのか?」

「何を、ですか?」

気づくと年配運転手の車の後ろに、少し小ぎれいな女性が立っていた。

「悪いな、行くわ」

「はい」

窓を閉めようとして、一度止まり、年配運転手は言った。

「ここは、出んのや、だから、誰もこない」

窓を閉め、女性が乗車すると、ベテランらしき運転手は信じられないくらいゆっくりとしたスピードで発進していった。


2022年6月30日木曜日

タクシーにおける「残業手当」

 ここまでタクシー業務における「固定給」の考察をしてきたが、

一旦立ち止まって、逆にタクシー業務において当たり前に適用されてきた「歩合給」に持続可能性があるかについて考えてみよう。

ここで出てくるのが、かの有名な(そうなん?)

国際自動車裁判

である。

この裁判は、タクシーにおける「残業代」について乗務員側と会社で争われたものである。

内容は、歩合給の計算において、残業手当(時間外手当)を控除し、その残業手当を付けるというトリック?が違法と判断された裁判である。

簡単に言えば、残業における「割増賃金」を払っていなかったというケースである。

トリックというのは、

例えばあるドライバーAの1乗務20時間(休憩5時間 実働15時間)の営収が50,000円とする

歩率は60%

①歩合給 50,000×60%=30,000

30,000円がその日のAの賃金となる。

しかし、ここで問題になるのが「残業」

労基法上は、この乗務の所定時間は13時間(仮定)となり、2時間が残業となる。

そうすると、上の乗務の1時間あたりの賃金が2,000円であるから、割増賃金として5割増、2時間分を3,000円で計算して、

32,000円を賃金として払わなくてはならなくなる

これを避けるために(避けんでも良いやん)、業者は①の歩合給を28,000円としていた。

結果的に割増を足しても30,000円

変わらないのである。

これはタクシーという業務に労基法を適用することに無理があるという、そもそも論もあるにせよ、歩率を下げたら済む話でもある。

しかしそこは業界にも組合はあるし、最も重要であるリクルートのための額面歩率にこだわるのもまた業界の習性である。

だからそこは、既存のドライバーに対する歩合を下げ、新たに受け入れるドライバーを固定給とすれば良い。

既存のドライバーの7割近く(大げさやろ)はもう年金をもらう世代であり、今更歩率を下げても騒がない「ゆとり世代(使うとこちゃうやろ)」である。

そして新たに受け入れるドライバー、それが若者なら歩合給よりも安定を求める。

既存のドライバーの平均賃金よりも少し低い時間給を設定し、所定を超えた部分にはしっかり割増賃金を付加する。

結局は固定給議論に戻ってくるわけだが…


しかしこの国際自動車裁判の最高裁判決は2020年3月30日

https://kkmlaw.jp/qa_for_hr/salary-limitation-time-management/q17/

本当なら、ここから業界が、タクシー乗務員の賃金体系が、変わっていくはずだった…

そして、そこから言わずもがな長い泥沼、コロナ禍に入っていくのである。

コロナが落ち着いた今、また立ち返って考えなくてはいけない、業界の宿題がここにあるのである。

2022年5月31日火曜日

タクシー固定給考察 まとめ

 ここまでいろいろと(面白くもない)計算をしてきたが、とにかくやってみないことには分からない。


これはなんでも同じことである。


やってみたところで想定出来る結果を「成功」と「失敗」に分けることで、リスクを測ることが出来る。


「成功」について考える。


業界としては「成功」したときに得られる利益よりも、やらなかったときに失うものを考えないといけない。


言わずもがな、タクシー業界は人手不足に喘いでおり、超高齢化業界の今後はさらなるドライバーの減少が予想される。


完全歩合制というのは、車両が余っているときに成り立つビジネスモデルである。


頑張る人は頑張って、そうでない人はそれなりに。生活出来なければ自然とやめていくやろ、みたいな緩い縛りではもはや需要を満たすことが出来なくなってきた。


歩合制のもとでは、仕事のあるなしを調査や経験で予測して動くのはドライバーであり、管理側は「効率的な配車」を考える必要はない。


要するに、無駄だらけなのである


GPSによる車両検知のシステムだったり、走行履歴や時間の計算などが比較的安価に出来るようになった昨今においては管理における費用対効果の向上が期待出来る。


経験や勘に基づいて無暗に街を流したり、シートを倒して延々と客待ちの列に並ぶこともない。


仕事のあるところに効率的に車両をまわし、余裕のある時間帯に休憩させる。


労働時間は大幅に減り、収入が増える。


低収入に喘ぎ、低収入が故に蔑まれ、人材の質が低下していくという業界の負のスパイラルを抜ける兆しが、固定給制導入の成功でようやく見えてくるのである。


今固定給制を導入しなければ、高齢ドライバーが徐々に去ってゆき、若手ドライバーは入っては来ても、数年で出ていくことになるだろう。


単身日暮らしの中年以降のドライバーが若手に「一生懸命働くことの無意味さ」を懇々と説き、業界の「やる気」を削いでいく。


犠牲者は利用者であり、日々タクシーを必要としている人たちは「タクシーを待つ」ことが当たり前になり、需給のアンバランスから値段はどんどん上がっていく。


ただ固定給の導入が必ず成功するという確証はもちろんまだない。


それはまだ時機尚早かもしれない(失敗するかもしれない)、という懸念である。


簡単に言えば、ある程度、例えば月給30万程度の固定給をドライバーに支払っても、業者にそれに見合う収入がなく、早晩行き詰まるというシナリオである。


長いこと完全歩合制に浸かっていた既存のドライバーは、「もらったら、その分働かないとい」という、いわば当たり前の感覚がない。


この給与体系のドラスティックな改革については、当然全ての労働者(ドライバー)を入れ替えることは出来ないのだから、その改革の過程では、多くの既存ドライバーを相手にしなければならない。


これは正直大変な作業である。


この長い完全歩合制の歴史によって築かれた業界の悪しき慣習はそう簡単には拭えない。


業界を変えるのは、10年、いや20年かかるかもしれない。


それでもやらなきゃいけない。


タクシーというものがなくなることはないかもしれないが、将来は、少なくとも地方では、公共で管理される「送迎」の仕事になるのかもしれない(それも多分固定給やろ)。


都市部と地方では大きく違ってくるんやろな…


都市部においても、固定給の業者があり、歩合制の業者もある


歩合制の業者においては1000万プレイヤーの夢があり、固定給制の業者では今までになかったチームワークで繋がる世界がある。


未だエキサイティングな業界の将来を夢見てやまない「おっさん」がいる


さあ、あなたもいっしょに夢を見ましょう(きも)


2022年4月30日土曜日

タクシー固定給考察④

 ドライバー側の視点でタクシーの固定給制をいくら考察しても、事業者として採算が合うのか、持続可能性はあるのか。

それがなければ、このような考察はそもそも意味はない

保有台数30台、乗務員50名、年商3億円の事業者を想定しよう

1台あたりの収入は1000万円 A

車両価格 300万

架装費用 30万

耐用年数10年

年間償却費 30万 ①

車検および保険費用 30万 ②

管理費(内勤者給与等) 50万 ③

燃料費 40万 ④

その他固定費 50万 ⑤

①+②+③+④+⑤=200万 B

会社利益(A×10%)=100万 C

1台あたり利益(乗務員給与前) AーBーC=700万

1台あたり700万生み出すとして、車両数30台

700万×30台=21,000万

ここから1,000万を役員手当や社屋修繕準備金等の予備費として控除すると、残金は2億円

これを乗務員数50名で割ると、

2億円÷50名=400万

乗務員1名あたり400万を配分出来ることになる。

これを実質「完全歩合」として、売上額に対して年収600万の乗務員もいれば、年収200万の乗務員(主に年金乗務員)もいるというのが現状である。

これをシミュレーションとしては固定給300万+歩合給として変動を大きくても年収350万から450万程度に抑える(平準化する)。

これは一般労働者の平均からすると確かに見劣りするとはいえ、若手乗務員を取り込むにあたっては現実的な数字に見える。

ここからは事業者努力である。

乗務員のモチベーションを高め、効率を上げる

その中で必然的に年配乗務員(年金乗務員)はフェードアウトしていくかもしれないが、少ない乗務員で同じ水準の営収を上げることで、1名あたりの年収は増加する。

上のシミュレーションで仮に40名で同じ営収を上げれば、

1名あたりの年収は500万に上がる

平均年収400万から500万を10年かけるとすれば、自然とベースアップなっていく。

現在の歩合制においての最も大きな問題は若手が入社しても、将来的な収入が増えていかないことにある

今後業者としての広告収入や、自働運転タクシーの導入などによる増収を考慮すればさらに収入は上がっていくことが期待できる。

とにかく、一度やってみましょうよ(責任取れよ)



2022年3月31日木曜日

タクシー固定給考察③

 固定給について考える前に、現状の歩合給またはリース制について検証しているが、前回の投稿をまとめると、

A型賃金 基本給(20万)+歩合給(営収60%)※営収40万を基本給水準とする

B型賃金 歩合給(営収60%)のみ

C型賃金 リース制(1か月20万乗務員払い)

AB型賃金 基本給(20万)+歩合給(営収50%)+賞与(営収5%)※A型と同じ

()は各賃金体系の1例

上の各賃金体系において1か月の営収が60万(都市部においては平均的な営収水準)とすると、1か月の賃金は、

A型賃金 32万

B型賃金 36万

C型賃金 40万

AB型賃金 33万(賞与基礎額を除く)

となる。

こう見ると、当然C型のリース制が最も良さそうには見える(リース制の裏には車両の修理費や、燃料費、事故時の保険まで乗務員負担だったりすることもあるが)が、この2年のコロナ禍である。

それまで決して難しくなかった営収水準になかなか届かないという状況が続いている。

仮に1か月の営収が40万として、上の賃金体系にあてはめると、

A型賃金 20万

B型賃金 24万

C型賃金 20万

AB型賃金 22万(賞与基礎額を除く)

となり、ここに場合によっては雇用調整金や最低賃金保障が付け足されることになる。

どちらにしても、10万または20万も月額給与が変動しては生活設計も立てられない。

ここに安定を求める若者が入ってこないという、業界の大きな問題が深く絡んでいる。


若者が入ってこない=業界の未来が見えない


高度経済成長期を支えた団塊世代や、その後に続く世代(しらけ世代?)など、

「稼ぐが勝ち(価値)」

という考え方から、ゆとり世代や、さとり世代と呼ばれる今の若者は、

物欲がなく、稼ぐことより「自分の時間」、「仕事よりプライベート」を大切にする世代である

この価値観というのは、タクシーの仕事に「合っている」と言える

ただプライベートを充実するためには、多くはなくとも、「そこそこの」収入を「安定して」得る必要がある

収入面、または「賃金体系」として、「合わない」となってしまう

そもそも上の例(営収60万)において、会社側に残る金額を計算すると、

A型賃金 28万

B型賃金 24万

C型賃金 20万

AB型賃金 27万(賞与基礎額を除く)

となる。

会社側はここから運行管理やオペレーターの給与、燃料費、事故負担などをするわけだが、

20代の「仕事よりプライベート」を大切にする若者が満足するであろう水準である30万の固定給とした場合、

会社に残るのは30万

上のどの賃金より多く残るわけである。

さらに言えば、今の若者は「稼げば稼ぐほど実入りが増える」という価値観を、ある意味「醜い」と捉える世代である。

要するに、今の歩合給を彼らに課すると1か月50万ほどしか上げてこないかもしれない。

しかし精神的な安定、チームとしての目標、やりがいさえ与えれば、

彼ら(若者)は働くのである

もしかしたら同じ環境(市場の利用者の数)において、彼らは70万ほど上げてくることも非現実的ではない。

どうでしょう、タクシー経営者の方々

これからは固定給しか勝たん

と思いませんか。

2022年2月28日月曜日

タクシー固定給考察②

 タクシーの固定給を語る前に現在のタクシー業界の一般的な給与体系をおさらいしよう。

この業界では、よくA型、B型、C型賃金などと表現される。

https://www.drivers-work.com/column/knowledge/salary/

A型とはいわゆる、固定給+歩合給、この固定給の割合というのはあまり示されないのだが、シミュレーションとして固定給を20万と設定しよう。

仮に営収40万円までを固定給の保障水準としよう。

40万円以下の営収でも20万の給与が保障されるということになるが、実際は業界特有の「アシキリ」などの制度もあって、都市部の業者で額面通りもらえるかというと怪しいところだが…

昨今は最低賃金保障などというタクシー業界には無縁であった「保障制度」も加わり、週40時間労働として(タクシーは「みなし休憩時間」がとてつもなく多い業界ではあるが)、4週で160時間、残業的なものも含め月にして仮に200時間としても、全国平均の最低賃金が現在930円だから、18万6,000円となり、上の水準は最低賃金を上回るということになる。

さらに固定給水準(40万)を超えた分に関して60%の歩合給がつくとすると、営収60万として、

20(固定給)+20(固定給水準を超えた額)×60%=32

額面給与は32万円ということになる。

次にB型賃金になるが、これは我が道を行くタイプ(血液型か)…違った、いわゆる「完全歩合制」なるものと言われる。

歩率60%tとすると、営収60万を上げたとすれば単純に額面給与は36万となり、上のA型賃金よりも有利になるが、30万しか出来なかったとすると18万しかもらえず、A型を下回る。

もう一つ、C型賃金について、これはいわゆる「リース制」と言われるもので、会社から営業車両を借りて営業するというニューヨーク式のものである(MKの勢いが衰えて、今の日本では消えつつあるけどな)。

車両のリース代や燃料費、修理代なども全て自己負担として、仮にある月の「費用」が20万とする。

営収が60万上がっていたら、手元に残るのは40万となり、A型やB型を大きく上回る。

しかし営収30万しかなければ、手元に10万となり、とても生活出来ない水準になってしまう。

さらにAB型などと言われる、「固定給+歩合給+賞与」などというモデルもあるが、これは仮に営収60万として、A型モデルから、

固定給20万+(水準を超えた額の)20万×50%=30万

さらに営収の5%は賞与にまわり、

基礎額5万+半期営収360万×5%=23万

要するに賞与23万(年2回として46万)となる。

この場合は年収にして360+46=406、406万円となり、年間営収が60×12の720万だから、1年換算の歩率としては約64%となる。

ここまでA型、B型、C型とどんどん歩率が高くなっていく、要するに稼げば稼ぐほどに収入は上がるが、昨今のコロナ禍で営収が上がらない、稼げない状況下ではどんどんと不利になっていくシステムである。

A型のもっと手前、要するに固定給の割合が高くなるシステムはないのか、そこを今後考えていくということになる(うさん臭いな)。

2022年1月31日月曜日

タクシー固定給考察①

 昨年10月より、やっと緊急事態宣言が解除され、平穏な日々が訪れたと思ったら…

こんなに風雨にさらされ、右から左から殴りまくられ、踏みつけられても、タクシーってのは絶対になくならない、なくてはならない職業なんよね。

自動運転の時代がすぐそこに来ているのかもしれないが、それでもなくならない

ただドライバーの数は減っていくだろうし、現在その自然淘汰が確実に(急速に?)、始まっている。

今各方面の業界で人手不足が顕著になっていて、

こんなときに、こんな不安定な業界に入ってくるなんて、余程の世間知らずか、または…

という話になる。

「不安定な業界」とは、敢えて言わせてもらおう。

現在ようなコロナ禍に思い切り振り回されるし、体力、集中力も必要な職業だ。

ドラレコ等の普及で強盗被害のリスクは減ったかもしれないが、客から罵声を浴びせられることもあれば、事故もある。

そんな職業なのに、収入まで不安定

確かにめちゃめちゃ稼ぐドライバーもいるが、そんな人は身を削って、様々なリスクを背負って仕事をしている。

なんのリスクも負わず、自由気ままにやっていたら、最低賃金の海を泳がなくてはいけない。

一匹狼として戦えるのがこの仕事の利点だとすれば、裏返せば孤独な職業でもある。

高度成長期は、働いてなんぼの時代だった。

寝る間を惜しんで、危険を冒してでも、まわりの奴らを蹴落として上に行く、金を稼ぐというギラギラした野心を抱えた連中が日本を支えてきた。

今でもそんな激しい時代を戦ってきた戦士がこの業界には残っている。

もう60台から、その後半に差し掛かってるのかもしれない。

話せば長くなるが、その時代は、その時代で良いものはあったのだろう。

時代は変わった

そろそろそういう時代は終わらせないと、業界に人は入ってこない。

今は、これからは「つながり」の時代である

より少ない人数で、効率的に、溢れる需要をこぼさずすくっていかなければならない。

配車アプリじゃないんよな。

配車アプリは供給が需要を上回ってるからこそ成り立つもので、都市部、特に東京などは、それはそれであったら良いのかもしれない。

ただ多くの地方では需要が供給を上回る時代が既にそこまで来ていて、この業界の「歩合制(個人任せ)」というシステムで賄えなくなってきている。

供給を管理して、必要な人たちに配置していく。

個人任せではなく、組織として動き、情報を交換し、繋がり、固定給で働く

そんなモデルを考えていかないといけない(A型賃金とか、B型とか分析するんやなかったんか)。