「猫が、庭から覗いてたんですか」
客観的にそれほど珍しい話でもないような気がする。
「はい」
「『覗いていた』わけではなくて、そこにいただけなんやないですか」
猫がその辺にいることなんて、よくある話である。
それを「覗いてる」「俺を見ている」というのは、ある意味「自意識過剰」ではないか。
この仕事していて、年配の乗務員と話をすると、とにかく「自意識過剰」が多い。
「前の会社では、部長に嫌われてた」
「自分のせいでプロジェクトがダメになった」
なんていうのは、まだ控え目で良い方で、
「みんな俺を頼って、自分がいなくちゃどうにもならなくなって疲れた」
「複数の女性社員で自分の取り合いになっていられなくなった」
おいおい、
と突っ込みたくなるような「ポジティブ派」に比べたら
まあ「猫」に対する「自意識過剰」は許したくなる 。
「そんなことありません。間違いなくわたしを見ていました」
「何故そう思うんですか?」
ルームミラーを見ると、乗客はちょっとやばいくらいに目を見開いていた。
その勢いに俺は思わず(ミラー越しに)目を逸らした。
「運転手さん、『たいま』ってご存知ですか?」
「『たいま』ですか?あの時間を計るやつですか」
「それは『タイマー』です。『たいま』、草のことです」
「『草』ですか・・・『大麻草』のことですか」
ミラーは見なかったが、男性が笑みを浮かべたのが気配で分かった。
「はい 。やめられなくて・・・部屋でやってたんです」
どうリアクションしたら良いんだろう。
話は面白くなってきたのかもしれないが、さすがにそこまで冷静になれなかった。
ハンドルを持つ手が震えてきた。
そこまで話さなくても・・・
「あの・・・」
何か言おうとした俺の言葉を遮ってくれたことに少しホッとした。
「それで彼女にも逃げられました。新しい家で、一緒に住み始めて、彼女にも勧めたんです。今思えば、彼女も苦しんだんでしょうね。苦しんだ末に家族(両親)に話したみたいです」
「はぁ・・・」
「あるとき彼女の親父さんが家に乗り込んできました。食事中でしたが・・・テーブルの皿をかき回して、そのうちの1枚をわたしに向かって投げてきました」
「奥さん・・・いえ、その・・・(彼女も)そこにいたんですか」
「はい、泣き喚いて叫んでいましたが、何を言っていたのか今でも思い出せません。そのまま父親が彼女を連れ帰って、その後は連絡も取っていません」
「携帯は・・・」
「番号を変えたみたいですね」
次に何を話したら良いんだろう。
「それで、猫は・・・」
「そのときもずっと見ていました」
客観的にそれほど珍しい話でもないような気がする。
「はい」
「『覗いていた』わけではなくて、そこにいただけなんやないですか」
猫がその辺にいることなんて、よくある話である。
それを「覗いてる」「俺を見ている」というのは、ある意味「自意識過剰」ではないか。
この仕事していて、年配の乗務員と話をすると、とにかく「自意識過剰」が多い。
「前の会社では、部長に嫌われてた」
「自分のせいでプロジェクトがダメになった」
なんていうのは、まだ控え目で良い方で、
「みんな俺を頼って、自分がいなくちゃどうにもならなくなって疲れた」
「複数の女性社員で自分の取り合いになっていられなくなった」
おいおい、
と突っ込みたくなるような「ポジティブ派」に比べたら
まあ「猫」に対する「自意識過剰」は許したくなる 。
「そんなことありません。間違いなくわたしを見ていました」
「何故そう思うんですか?」
ルームミラーを見ると、乗客はちょっとやばいくらいに目を見開いていた。
その勢いに俺は思わず(ミラー越しに)目を逸らした。
「運転手さん、『たいま』ってご存知ですか?」
「『たいま』ですか?あの時間を計るやつですか」
「それは『タイマー』です。『たいま』、草のことです」
「『草』ですか・・・『大麻草』のことですか」
ミラーは見なかったが、男性が笑みを浮かべたのが気配で分かった。
「はい 。やめられなくて・・・部屋でやってたんです」
どうリアクションしたら良いんだろう。
話は面白くなってきたのかもしれないが、さすがにそこまで冷静になれなかった。
ハンドルを持つ手が震えてきた。
そこまで話さなくても・・・
「あの・・・」
何か言おうとした俺の言葉を遮ってくれたことに少しホッとした。
「それで彼女にも逃げられました。新しい家で、一緒に住み始めて、彼女にも勧めたんです。今思えば、彼女も苦しんだんでしょうね。苦しんだ末に家族(両親)に話したみたいです」
「はぁ・・・」
「あるとき彼女の親父さんが家に乗り込んできました。食事中でしたが・・・テーブルの皿をかき回して、そのうちの1枚をわたしに向かって投げてきました」
「奥さん・・・いえ、その・・・(彼女も)そこにいたんですか」
「はい、泣き喚いて叫んでいましたが、何を言っていたのか今でも思い出せません。そのまま父親が彼女を連れ帰って、その後は連絡も取っていません」
「携帯は・・・」
「番号を変えたみたいですね」
次に何を話したら良いんだろう。
「それで、猫は・・・」
「そのときもずっと見ていました」