「タクシーだけはやめてほしい」
忘れもしない。
転職の決意と、タクシーに乗ってみたいという話を嫁にしたときの第一声である。
「なんで?」
「なんでって…タクシー乗ってるなんて、近所に知られたら」
「知られたら?」
「子どもたちのことも考えてあげて」
「…なんかほとんど犯罪者扱いやな」
決められた路線もレールもない。
これは後に感じたことだが、タクシーとは道路という都市の血管を流れる、社会の「血液」である。
もしタクシーがなくなれば、社会も経済も血栓だらけになる。
多くのドライバーが何を話し合うこともなく、足りないところに流れて血流を作っていく。
タクシーは街の活力なのである。
ただもちろんこの時はそこまで分かっていたわけでもない。
「タクシーの何が悪いんや?」
「……」
何が言いたいのかは分かった。
なんとなくかっこ悪い
古い車に乗って、ダサい制服とセンス悪いネクタイ、何より平均年齢高過ぎ。
高齢者の社交場は地域の公園のグラウンドゴルフか、駅のタクシー乗り場と言っても過言ではない。
そんなところに40代で入っていくのは、社会的自殺行為ではないか。
と嫁は感じるのだろう。
しかし、ここで俺の決意はより固まった。
俺が変えてやるよ。
タクシーのイメージを変えてやる。
まだ入ってもいない業界を変えようなんて、飛躍しているかもしれない。
でも俺はそう感じた。
何か大きな未来が見えてきた気がした。
※ここまではノンフィクションです
11月21日(金) 65,820 44回
日中はよく動くな。
山幹北野通り下で乗った若い男女
「岐阜から来たんですよ。神戸初めてなんです!」
嬉しそうに話してくれて、こっちもうれしくなった。
「ありがとうございます!」
金を払う方がお礼をいうサービス。
それがタクシーなんですよ。

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