2021年2月28日日曜日

タクシー乗車にはマスク着用を

 

Let's discuss taxis

これは今回のコロナ騒動で話題になった話だが、

マスクなしの乗客は乗車拒否出来る

これは飲食店の全面禁煙に少し似ている話で、

例えばたまたまマスクを忘れて、電車にもバスにも乗れず、タクシーを利用とする客を拒否するということで

せっかくのタクシー需要を捨てるわけである

要するに、たばこを吸いたいから飲食店に入ろうとする客を断ち切るのと似ていて、

それによって喫煙者の潜在需要を失う反面、

嫌煙者の需要を増加させるかもしれない

同じような話(?)で、

マスクを持たない客を失う反面、

コロナ恐怖症の乗客を増加させ、

何よりドライバーを守るというと大げさかもしれないが、

こんな流れが続いて、

タクシーに乗るときは必ずマスクを着用しないといけない

ということになれば、

タクシードライバーの労働環境は間違いなく向上することになる

…そうか、これで良いんやんな

今回コロナによりタクシー業界はとてつもなく痛み、苦しんでいるが

長い目で見て、コロナ騒動はこの業界の地位をあげるかもしれない(大げさやろ)

いや、最悪かと思っても、良いこともあるんですよ(それでもマスクせーへんおっさんおんねんな…)

2021年2月12日金曜日

バレンタインデーの酸っぱい話

 あの日はすごく寒くて、車のエアコンのつまみを最強にしたけど、それでもアクセルを踏む足は冷たかった。

数日前に降った雪がところどころまだ残っていて、橋の上を走ると、キラキラと光る白い光がスリップの恐怖を募らせた。

駅に入ると数人の客が並んでいた。

その先頭に立っていたのが、若い女性だったことに少し落胆した。

一般的に男にとって女性の乗客は歓迎に思うのだが、実際のところ女性は消費者として賢く(森さん意識して言葉選んだな…)、特に夜は近場でも安全のためにタクシーを利用することが多い。

本来は避けたいと思いがちな「酔っぱらいのおっさん」こそが、夜のタクドラにとっては上客なのである(金持ってるし、金銭感覚なくなってるからな)。

そんなことを言っていても仕方がなく、当然のことながら列の先頭から乗車してもらうことになる。

「…こんばんは」

「こんばんは。どちらまで?」

「あの…学園都市の方へ」

「学園…ですか?(えらい遠方やんか)」

女性は長い髪が顔を覆っていて見えにくかったが、20代前半で今で言えばYOASOBIの幾田りら似の童顔だった。

自分も40近いおっさんだったので、20代の女性との会話も戸惑うものがあり、遠方なら遠方でそれなりに緊張感がある(酔っぱらいのおっさんの接客は慣れてるからな)。

(何かありましたか?)

これは女性に限らず、タクシーの車内において禁句とされている質問である。

何も聞かずに、ただ言われた目的地に黙って行けば良い。

そうしているタクドラも多いだろう。

でも俺は聞きたい…

彼女の雰囲気は、何かを纏っていた。

もちろんいきなりそんな質問は出来ない、どこかでそういう方向へ持っていこう(聞けなかったら聞けないで、金さえもらえたら良い話やしな)。

そんな風に思いながら、右にウインカーを出してアクセルを踏んだ。

乗車してから当分の間、彼女は何も言わず下を向いていた。

髪が顔を覆っていたが、それは「何かあったんやろな」と思わざるをえないオーラを出していた。

トンネルに入ったときに、フロントガラスに反射した光で彼女が下を向いてスマホをいじっているのが分かった。

誰かとライン交換でもしているのだろうか。

おっさんが口を挟む隙はなかった。

高速を降りて、乗客に言われたアバウトなエリアから、詳細な目的地確認へ移る。

通常ならここが乗客に対する(必要ない)質問をするチャンスでもある。

詳細な目的地は自宅の詳細な住所になることが多く、乗客のプライベートに運転手が入り込んでいく瞬間である。

「駅で…学園都市の駅で良いです」

あぁ、これあかんやつや。

家まで送らせてくれへん。

これ、狙ってた女の子送ってく時、

「駅で降ろして」

言われた時の落胆に似てる(お前仕事してるんちゃうの?)

もちろんドライバーなので、言われた通りに車を走らせないといけない。

「ロータリーで良いですか?」

「はい」

酔っぱらいのおっさんなら駅で降りてくれて、しっかり金払ってくれたら安心である。

家の前まで送って行って、深夜に奥さんが金持って出てきて修羅場に遭遇するのは御免である。

しかしここで、何も突っ込んだ話もせず彼女と別れるのも辛い。

と言いつつも、タクシードライバーは1日に何度もの別れを繰り返している。

「ありがとうございます」

その頃はまだ珍しかったクレジットカード決済で清算し、自動ドアを開ける。

そのときである。

「運転手さん、すみませんけど…ていうか、いえ、あの…これ良かったら食べてください」

「えっ?」

それはグレーの包装紙に包まれた小さな箱であった。

女性は逃げるように車から降りていった。

駅に並んでいる待機タクシーに睨まれながらも、その包装紙をすぐに開けたい衝動にかられ、リボンをほどいた。

中には手作りらしきチョコレートと、付箋のような紙にメモが添えられていた。

(××くん、迷惑だと思わないで。深く考えなく良いから(笑) 受け取ってくれてありがとう)

そこに書かれていた言葉をしばし見つめていた。

そうか、今日はバレンタインデーか…

若いって良いな。

またこれからいろんな恋が出来るよ(ゴミ箱代わりのおっさん、何イキってんの?)


2021年1月27日水曜日

タクドラ ウィズ タトゥー

 


これもなかなか面白い…

https://www.independent.co.uk/news/world/chinese-cab-drivers-taxi-remove-tattoos-b669196.html

中国の蘭州(Lanzhou ランツォ?)なるところで、タクシードライバーのタトゥーを手術で取り除くような条例(directive 通達?)が出たらしい。

ドライバーがタトゥーをしていたら、乗客がストレスを感じるとか

中国では2008年の北京オリンピックを境に欧米文化が流入して、タトゥーをする若者が増えたらしい。

しかし世論調査では、3000人の女性利用者において、タトゥーを入れたドライバーを「受け入れる」と答えた人が850人、「受け入れない」と答えた人が1000人に上ったとか(850人はオケなんやね)。

記事にもあるが、アジア、特に日本ではタトゥー(刺青)は、犯罪とのつながりが深いという偏見を持たれている。

しかし手術までして、タトゥーを取り除けと言われたら、普通ドライバーやめるよね(日本にもいるよな、長袖着て刺青隠してるドライバー)。

またはそれでもやめられないというのなら、それだけ生活に困窮しているわけで、そんな人たち、ドライバーに大金かけて手術して、若き日に身体に刻んだ勲章を取り除けというのは、まさに人権侵害ではないか(力入ってんな)。

タトゥー、刺青入れてるドライバーがいても良いやないか

そんな自分らしさを持ってる人たちがタクドラになってる。

そういった誇りを持った業界なんです(お前絶対タトゥー入れてるやろ)。


2021年1月26日火曜日

心臓発作?

なかなか面白い…


シドニーのタクシードライバーが空港から近場の乗車に嫌気がさして、乗車途中に心臓発作を装い、乗客を降ろしたというニュース


そこまでするか…

(リンク先の)動画では、乗客のおばちゃんが演技と分かっているのか、キレている。

「あんたアカデミー賞もんやな!」

乗車拒否ならともかく、もう既に乗ってしまった客を途中で降ろしてどうすんのやろ?

しかもこの乗車は11.5マイル(約18キロ)とのことで、日本の料金なら6~7千円ほど出る乗車である。

空港待ちのドライバーはどこも1発狙いなんやろな

1日数回しかない乗車で、万コロ狙い、中途半端な距離の乗車がショックやったのかも。

こんなことを繰り返していたらしい上のドライバーはFired(クビ)になったとか…

しかしこのコロナ禍で、空港張り付きのドライバーとかどうしてんのやろ?

2020年12月31日木曜日

長い戦いの始まり?

 今年もまた1年が終わろうとしている。

2月頃に

「大したことないやろ」

で始まった新型コロナウイルス騒ぎは、

間違いなく「大したもの」であった…

特に若い世代に少しでもタクシーに興味を持ってもらおうと、長いことこの仕事の楽しさを綴ってきたが、こんな落とし穴があるとは考えてもいなかった…

営業収入の歩合給である限り、売り上げが下がれば必然的に給料は下がる

※歩合給とは、営業収入に歩率を掛けて給与を計算するもの。通常のサービス業における歩合とは給与の一部に歩合が「追加」されるもので、いわゆる「基本給」は守られる。しかしタクシーにおいては多くの業者でほぼ「完全歩合」を実施しており、営業収入が半分になれば、給与もほぼ半分になってしまう(比較的大きな業者においては「最低賃金保障」を行っているので、元々の収入次第では半分にまではならないかもしれないが)

残念ながら、業界としてまだこのような状況(コロナ禍)における対応、いわゆるセーフティネットは出来ていなかったと言わざるをえない

結局は他の多くのサービス業と同じく雇用調整助成金に頼らざるをえなかったわけだが、今後も考えていった上で「自力」で生き抜くことが出来ない辛さは感じる…

しかし業者そのものに収入がなければ、給与も出ない。

ない袖は振れないという話である。

そもそも業者の収入に対する料金収入の比率が高過ぎるのである

「料金収入」とは、いわゆるタクシーの利用者から頂くメーター料金の収入のことだが、これから業界に求められているのは、

料金収入以外の収入である

今回コロナ禍において浮き彫りにされた課題ではあるが、元々収入の変動が大きいことが、業界の人材獲得に大きな障害となっていた。

まずそもそもタクシーは「公共交通」であるという考え方に立って考えると、「公共の収入(補助金等)」があるべきと言える。

これは多くの地方、特に人口の少ない地域において既に問題が顕在化しているが、

必要なときに移動手段がない

というものである。

これは補助金というより、

そういう地域ではタクシードライバーはそもそも公務員である

という考え方に立つべきである。

一方で都市部においてはやはり「自力」でこの仕事を守りたいと考えると、度々唱えている

広告収入を高めること

が最も収入を高める手段と言える。

街中を常に走り回り、多くのビジネス客や観光客を乗せるタクシーは広告媒体としては、

宝の眠る箱

と言える。

この宝探しにはまだ時間がかかるかもしれないが…その可能性を信じて、発信を続けていこう。

多くの優秀な若者がこの業界に入り、

タクシードライバーになって良かった

と思える日がいつか来る日を願って…(今はそうではないゆうことやな)


2020年11月30日月曜日

ある日の何気ない車内の会話

「第3波?らしいですね」

「本当に、もう嫌になりますね」

「嫌になりますね」

「外に出るな、って言われてもねぇ」

「そうですよねぇ」

「病院で薬もらわないといけないし、買い物もしないと食べられへんしね」

「ステイホームって言ってもねぇ…1日中家にいたら、運動不足で他の病気になりますよ」

「ほんまに、ちょっと前までは外に出て運動せぇ言うて、今度は『出るな』やもんねぇ」

「嫌になりますね」

「ほんまに、嫌になるわ」

「タクシー運転手は水揚げなんぼの給料ですから、こんなのが続いたら商売になりませんわ」

「そうやんね。人が動いてなんぼの商売やもんね」

「そうなんです」

「ただ、こればっかりはどうにもならんからねぇ」

「そうなんです」

「感染者が1日何百人とか、1日何人亡くなったとか言うけど、ストレスで病気なる人も多いやろね」

「ほんまに、わたしらもこれ以上続いたら生きていけませんわ」

「今思えば、去年までは平和やったね」

「そうですね。そんなときでも人はなんやかんや不平不満言って生きてるもんですけど…」

「そうやね。何事もない1日に感謝して生きなあかんね」

「そう思えば、今もまだこうして普通に生きてるんやから平和なのかもしれません」

「そうやね…それでも嫌になるわねぇ」

「嫌になりますね」

2020年10月31日土曜日

タクシードラマ~「親父殺してしまいました」

 その日はいつもと変わらない一日で、昼間は秋晴れの素晴らしい天気だったが、夜になって冷え込んで車内のヒーターをオンにした。

このところ昼間はクーラーをつける日もあるが、夜はノズルをまわしてヒーターにすることが多い。

それでも震えるほどでもなく、車内でたたずんでスマホをいじるのが心地よい季節である。

地方都市のドライバーは駅に並んでなんぼ、長い列をじりじりと前に進んで、先頭から客を乗せる。

駅の待機が少ない朝の時間帯は数分で乗車されるが、夜になると駅の列も長くなり、動きも遅くなる。

通勤列車から降りてくる素面のサラリーマンがタクシーで帰宅することは滅多にない。

逆にこの時間はドライバーもコンビニやファミレスで食事を取るのに良い時間帯である。

こんな時間に駅の長い列に並ぶのも億劫なので、大体はコンビニでパンでも買って、お気に入りの川沿いの広い道でシートを倒し、スマホをいじる。

シートを倒すと、暗くなった空にきれいな月が浮かんでいた。

「満月か…」

スマホを助手席に置いて、しばし月をながめていた。

昨晩ゲームにはまって遅くなったこともあり、そのうち睡魔に襲われウトウトしていたとき、ふと後部座席の窓をたたく音がした。

歩道は広いものの、ほとんど人通りがないからこの場所で休憩をしているのだが、突然のことで我に返るのに時間がかかった。

「あっ…どうぞ」

若いというより、学生…もしかしたら高校生くらいの男性が後部座席のシートに深く腰掛けて、息をついた。

「ふーっ!」

「えー、どちらまで?」

「月…きれいですね」

「…はい」

若者は窓の外をながめている。

タクシードライバーの習生として、行き先を聞くまで客の投げかけた会話に乗ることが出来ない。

気の短いドライバーなら重ねて行き先を聞くが、慣れてくると、すぐに行き先を言わない客は何か訳ありで、しつこく聞くとトラブルになることを警戒する。

「ブルームーンて知ってます?」

「…いえ」

「その月で2回目の満月、今日がブルームーンなんですよ」

「そうなんですか」

イライラしたら負けである。

「降りてもらえますか」なんて言った日にはブチキレる客もいるし、ドアを切って(閉めて)しまったからには簡単に降りてもらうことは出来ない。

少し間をおいて、我々にとって重要であり、当たり前の質問をするのに絶妙なタイミングを探す。

「どちらへ行かれます?」

若者はその質問が聞こえているのか、そもそも自分がタクシーの後部座席に座っていることを認識しているのかさえ疑問に感じるような視線を窓の外に向け、遠くの空を見つめている。

「僕ね、親父殺してしまいました」

「…はっ?」

さすがにこの展開は予想していなかった。

客が突拍子もない話題を振って来たときには、大げさに反応するのがタクドラの模範解答である。

しかし、この場合は客の年齢や、状況、そしてその内容からして模範解答が見つからない。

おそらく教科書にも載っていないパターンである。

「殺してしまったんですよー・・・」

デクレッシェンドでだんだんと語尾が小さくなる。

それは逆にその言葉の現実味を強くさせるようで、少し背筋が震えた。

「いや、なんて言ったら良いんですかね…これはタクシーで、お客さんの行きたい場所にお金をもらって車を走らせる業務なんです。何があったのか、それが本当なのかどうか…いや本当でないということにしましょう。いろんなことを言うお客さんがいますから、お客さんの行き先とそのルート以外の話について責任を取る必要は少なくとも我々にはないんです。だからあの…行き先を教えてもらえますか?」

この思わぬ展開になる前は、休憩中とは言え業務として無駄な時間を使っていることにストレスを感じていたが、今は全く違うストレスに押しつぶされそうになっている。

「本当かどうかですか。家を飛び出してきて、呆然としてここまで歩いてきましたから、もしかしたら夢かもしれません。でも…とりあえず新神戸の駅まで行ってもらえますか」

もし夢なら、俺もその彼の夢の中にいるということか…、新神戸と言えばここから約1万円ほどメーターの出る場所である。

そこから東京か、または九州にでも逃げようということか。

「新神戸ですか…ところで自宅はどこなんですか(どこから歩いて来たんですか)?」

「春勝町です」

ここから5キロほどの場所である。

話の内容から個人情報を伏せたくなるとも思えるが、そこまで冷静ではないのだろう。

「春勝ですか。本当なのか、夢なのか、家に帰って確認してみたらどうですか?」

「確認して、本当だったらどうするんですか?」

「それはやはり現実としっかり向き合わないといけないでしょう。逃げたらあかんよ」

「行き先やルート以外の話は関係ないって言ってたやないですか」

この男、思ったより冷静である。

俺は彼の自宅の方向、指定された行き先(新神戸)と逆に車を走らせた。

若者は気づいていないようだったが、少しして見慣れた風景が見えたのか、スマホをいじりだした。

「どこに向かってるんですか?」

「一回家に帰った方が良いよ。金は要らないから」

「…」

「住所教えてくれる?」

「…」

「何があったん?」

若者はスマホをいじる手を止め、また窓の外に目を向けた。

「ゲームをしてて…毎晩スマホのゲームをしてて、夜遅くなって、親父に怒られて、スマホを取り上げられたんです。親父が寝ているときにそのスマホを取り返そうと寝室に行ったんですが、なぜか手にナイフを持っていて…寝ている親父を…そこ右曲がってください」

「分かりました」

アクセルに少し力が入った。

父親を刺した?という割には、若者は返り血を浴びた様子もない。

指示通り車を走らせると、住宅街の中でも割と大きめの家の前に車をつけた。

洋風の邸宅のリビングらしき部屋には灯りがついている。

「ありがとうございます」

本来はこちらが言わないといけないセリフを若者は言って、メーター料金より少し多い2千円を差し出した。

「いえ、これは…」

「受け取ってください。僕も家に帰りたかったのかもしれません」

客の言った行き先と違う場所に来て料金をもらうのは気が引けるが、タクシーが走るからにはメーターは倒さないといけない。

俺は横目にその大きな家を見て、これ以上断るのも野暮だと感じてその2千円を受け取った。

「ありがとうございました」

ドアを開けると、若者はもう一度深く礼を言った。

「ハッピーハロウィーン!」

なんだか辻褄の合わない、自分でもよく分からない言葉を返して、ドアを閉めた。

「ふぅー!」

と息をついて、その場で少しシートを倒した。

気を失ったのかもしれない。

気づくと、いつもの川沿いの路肩で目を覚ました。

助手席にはコンビニで買ったチョコクロワッサンの袋が開いていて、ドリンクホルダーには冷め切ったコーヒーが置かれていた。