2025年12月27日土曜日

話せない客

 ちょっと年末らしく?衝撃的な乗車やった

配車先は場末の飲食店で、

近くに停めて待っていてもなかなか乗ってこない

店の人が出てきて、

「(お客さん)足が悪いんで、入口近くまで車停めてもらえますか」

「わかりました」

昼間の病院ならともかく、

夜の飲み屋で「足悪い」って…(飲みに出るなよってか)

入口に付けるが、乗るまでまた2,3分かかる

80歳くらいやろか

伸びきった白髪と、ジャンバー、杖

さらに、

「どちらへ行かれますか?」

「あー…、うー…」

一生懸命手を振ってるが、まともに話せない

これはえらい仕事当たったな…

「右ですか?左ですか?」

「あー、うー」

だめや、こんなん

「行き先も言えないなら、もう警察行きましょか」

近くの交番前につける

「あー!うー!」

なんか怒ってる

「いえまで(行ってくれ)!」

仕方なしに手振りを見て、右へ左へと走る

なんとか客の家らしきマンションに着いた

「2200円です」

結局店から普通に来れば、ワンメーター程度の場所であったが、

まわってまわって2000円超え

金を出すにもめちゃめちゃ時間かかって

それでも2500円出して

300円はチップのようである

車から降りるにも降りられず

一度立っては、またドン!と座席に戻る

チップもくれたし、少しは介助しようかと

車を降りて手を貸す(これやったらあかんやつやろ)

なんとか立たせて、歩かせようとしても、

体重が後ろにかかりすぎ

手が離れたら、

いきなり思い切り倒れて、

ドーン!

と頭を打った

「あー!うー!」

頭を抱えている

やばいやん

すぐに119番に電話

「あのタクシーの運転手ですけど、高齢のお客さんが降車後に倒れて、頭打ったんです」

「ご本人は救急車を希望されてるんですか?」

「いえ…わたしの判断です」

「それなら、ご本人の意思を確認してください」

そうこうしているうちに、少し動き出した

「あ、少し動きました」

「そうですか。またご本人が希望されるようでしたらご連絡ください」

救急車は呼ばず、

座り込んでいる老人を起こし、

壁に手を置かせて、

「おじいさん、大丈夫?倒れたらあかんで」

年末最後の金曜日

忙しい夜である

現場を離れたが、

少しして、

忙しいも何も、人の命優先やろ

と思い、

またそのマンションへ戻ってみたが、

もうその老人はいなかった

どこへ行ったんやろ…

そんな早く動けるわけないし、

実はこの世に存在しない人やったとか


12月26日(金) 78,160 52回





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