2015年3月29日日曜日

LINE TAXIについて

今年に入って東京でサービスを始めた「LINE TAXI」だが、

徐々にその範囲を広げているようである。

 http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1502/25/news116.html

日本の配車アプリ市場で先行していた、東京の日本交通との連携事業として立ち上げたもので、とりあえずは日本交通の従来保有していた「(人脈ならぬ)社脈」をカバーしたというところのようである。

LINEというプラットフォームのメリットとしては、アプリの普及率の高さはもちろん、アクセスの頻度の高さとその信用性、

そして何より「LINE PAY」というアプリで既にクレジットカード登録している利用者が多いところだろう

ウーバーで話題になっている配車アプリだが、

供給側としてのリスクは何といっても「すっぽかし」である

もちろん電話でも予約キャンセルはあるが、実際に直接オペレーターと話すのと、スマホの画面をタップするだけの予約では、その「責任感」に違いが生じてきてもおかしくない。

要するにスマホでタクシーを予約したものの、道に出るとガンガン流しのタクシーが前を通過していくので、

しびれを切らして(他のタクシーに)乗ってしまう

というものである。

もちろんこれはタクシー業者や運転手にとっては許せない行為だが、正直どうしようもない。

他の会社のタクシーに乗ってしまった「ふとどきもの」を捕まえてどうこうすることは難しい。

何故タクシー業者がスマホ配車に興味を示すかというと、それで仕事が増えると思っているわけではない。

スマホアプリがあるから、(電車やバスでも行けるところを)タクシーで行こう

なんてことは、(最初はあるかもしれないが)通常考えにくい。

しかしアプリにクレジットカード登録させてしまえば、キャンセル時の対応が将来的に変わってくる

ということではないか。

今どのような対応をしているかは分からないが(教えてください)、

カード登録があればキャンセル料金を取ることが可能になってくる

逆に利用者もその辺は敏感だろうから、従来の配車アプリで(特に警戒心の強い日本においては)クレジットカード登録は少なかったと思う。

そこでLINEなんやろね。

LINEはスタンプその他の購入のために、既にクレジットカード登録している利用者が多い

そこに乗っかることで、「カード登録」という高いハードルをクリアしようという思惑が見え隠れする。

しかし自分は実際「LINE TAXI」を経験したわけではないので、

どんなもんなんでしょうか

運転手の方、利用者の方、その利用方法や思うこと、メリット、デメリット何でも良いので情報寄せてください。

2015年3月12日木曜日

都道県別タクシー年収ランキング

前回の投稿のコメント欄で、

東京のタクシーでは年間700万ほどの収入が期待できます

と書いたが、

俺も関西の田舎の一般市民やなーと感じた。

というのも、

東京で年収700万なんて大した数字やない

というデータを見てしまったからである。

昨年2014年の都道府県別のタクシー年収データが「東京交通新聞」に掲載されていたが、

東京のタクシー運転手の平均年収は約400万円で全国トップなわけだが、

全産業平均とは約300万円の差があり、

東京で年収700万なんて数字は大してインパクトがないのかもしれない。

しかし、タクシーという仕事の自由度やそのゲーム性、人間関係の少なさなどのメリットを考慮すれば決して悪くないのではないかと思うのだが・・・

とにかくリクエストもあったことなので、

都道府県別年収ランキングを作ってみた(2014年、単位万円)。

1位 東京都 391.9
2位 富山県 358.5
3位 愛知県 357.9
4位 埼玉県 357.4
5位 群馬県 325.3
6位 静岡県 309.6
7位 岐阜県 308.0
7位 千葉県 303.0
9位 栃木県 296.2
10位 兵庫県 293.8
11位 大阪府 293.6
12位 広島県 293.1
13位 山口県 291.9
14位 奈良県 289.1
15位 茨城県 288.6
16位 山梨県 284.6
17位 岡山県 283.4
19位 香川県 268.7
20位 福岡県 265.0
21位 神奈川県 263.8
22位 島根県 263.3
23位 福井県 263.2
24位 長野県 262.1
25位 三重県 261.5
26位 北海道 253.6
27位 京都府 253.4
28位 愛媛県 250.2
29位 山形県 249.0
30位 熊本県 241.6
31位 長崎県 227.0
32位 佐賀県 226.4
33位 福島県 226.1
34位 鹿児島県 224.6
35位 和歌山県 224.5
36位 大分県 222.8
37位 岩手県 219.5
38位 石川県 218.0
39位 宮城県 217.7
40位 宮崎県 213.2
41位 新潟県 210.7
41位 徳島県 210.7
43位 高知県 202.7
44位 鳥取県 190.6
45位 秋田県 189.7
46位 沖縄県 184.2
47位 青森県 177.2

全国平均 302.3

上の結果で意外なのは、

2位の富山県やろね

富山はタクシー天国(?)という話は聞いたことはあるが、データにも裏付けされている。

一度取材してみたいな・・・(どんな取材や)

ちなみに富山県はタクシー運転手の平均年齢でも最も若い55.4歳である(全国平均58.7)

しかしもちろん地域差はあるものの、「タクシードライバーの現状はひどい」なんていう話が未だ絶えない中、

これほど自由な職業で平均300万を超えている

というところには注目してもらいたい。

今後さらにドライバー(供給)が減っていく中で、さらに自由度は増し、待遇も良くなっていくはずである(具体的根拠を示せ)。


2015年2月28日土曜日

メダリオン

いきなりメダリオンって何ですの?

と思われるかもしれないが、「メダリオン」はタクシーにおける重要なキーワードである。

特にニューヨークのイエローキャブが有名だが、

タクシー、日本で言うところのいわゆる「流し」の営業のためには、このメダリオンがなくてはならない。




あの世界的大都市ニューヨーク(マンハッタンとブルックリン、ブロンクスなど周辺エリア)でこのメダリオンの数はわずか1万3千台

東京で約5万台のタクシーが走っていることを思うと、驚くほど少ない数字である。

これほど少ない数に制限されている限りは当然利権も生まれる

このメダリオンはアメリカでは手堅い金融商品とされていて、数年来その(権利)価格は上昇し続け、

2013年にはついに1.3ミリオンダラー(約1億5千万円)の値をつけた

投資家にとっては、このメダリオンを購入してその権利を運用する、要するにタクシードライバーにリースすることで、「利息」を稼げるのである。

http://www.mynytaxi.com/taxi-cab-for-sale/

上のサイトを見ると現在のリース料の相場が週約1400ドル(16~17万)のようなので、年間8万ドル(約800~900万)の運用利益があることになる。

http://www.crainsnewyork.com/article/20150222/TRANSPORTATION/150229973/why-news-of-a-taxi-comeback-against-uber-was-wrong

こちらは、その「優良金融商品」であったメダリオンの価格が、このところ下がっているという記事

そしてその裏付けとされるのが、

あのウーバーさんなんですね

この辺をしっかり読み込むと、日本のタクシー事情とニューヨークやヨーロッパの主要都市との違いが見えてくるわけだが、

まあそれにしても(価格が下がったと言っても)ニューヨークの、

イエローキャブのメダリオン価格は未だ1億円を超えているわけですよ

タクシーというビジネスがいかに強いかというのが分かってもらえるかな。

2015年2月8日日曜日

ブログリンク

前回の投稿にも多くのコメントや、メールで情報頂いたわけだが、

こうしてブログをしていると、いろんなリアクションがあって有難い

情報こそが財産だと感じるのである(アドセンスで小金稼ぐことか)。

・・・ブログブームも今や過去のものかもしれないが、

これはタクシー車内での会話に似たところがあって、

自分のことを話したい話したい、という運転手は基本的に嫌われる

基本的に「話したい」人ってのは、

大体自分自身の過去だったり、家族のことだったり、

または時事(ニュース)なんかに対する自分の考えをつらつらと話す

一人の一般人の個人情報や思想も「情報」であることに間違いはないが、

残念ながらそれは非常にミクロなもので、情報をシステムとして捉えている人間は、それを「情報」と呼ぶにはある程度のサンプルサイズが揃わなくてはいけないことを知っている。

要するに、毎日タクシーに乗っている利用者ならともかく、週に一度、月に一度ほどの利用者(ごくごく一般的な利用者)にとって一人の運転手の「意見」など、情報としての価値はあまりない。

しかし運転手にとって、利用者の話は間違いなく「情報」になり得る

1乗務で少なくとも10名以上の利用者と接することが出来るわけで、 うまく乗客の話を引き出していけばそれをシステム的に捉えることが出来る。

それを繰り返していけば、運転手というのはある意味その地域の情報システムなわけですよ

例えば今話題のイスラム国についてどう思うかなんて話を運転手にされても(その多くは新聞のコラムを切り貼りしたような意見で)、

乗客の女性にとっては、家でうざい旦那の話を聞かされているような苦痛を感じるかもしれない。

一方で通りかかったレストランについて、運転手が「この店評判良いですよ」なんて言うと乗客の興味を引くし、

さらに「この店は年配の方にはあんまりみたいですけど、若い女性の評判はすごく良いみたいですね。わたしも行ってみましたけど、おいしかったですよ」という形で、乗客から得た一つ一つの情報をシステム化して伝え、そこに自らの経験を加えることでぐっと価値を高めることが出来る。

ブログもそうなんですよ

自分の考えをつらつら述べてもあまり反響はないが(お前十分自分の考え述べまくってるで)、

こういうところ(ネット上)でいろんな方からもらった情報を、また整理して伝えていくことで価値を高めることが出来る

そういう感じでやってます

お互い持ちつ持たれつというか、 情報をもらって、こっちもそれを発信して、

少しでも多くの人にタクシーに興味を持ってもらって、そういう人たちがこの世界に入ってきて、どんどんタクシーが面白くなれば良いなって

特に売上(営収)や給与制度についての情報は噛みつき強いね。

そういうわけで、いろんなブログを拝見させてもらっているが、

当サイトのブログリンクについては、このところそのままになっていたので、今回少し整理させてもらいました。

俺みたいにこんなこと(ブログ)長いこと続けられる暇な方も多くないようで、良かったブログも途絶えたりするなぁ・・・

今回整理させてもらった中でいくつかここに履歴を残しておこう。


こういち@タクドラ日誌

東京のドライバーのこういちさん、長い間生の営収をアップしてくれました。

バスの免許を取って転職されたそうです。

バスも人手不足で、昨年は運転手の待遇改善のための料金改正もありました。

面白くなるかもしれません。

良い転職になったことを願います。


女性タクシードライバー日記

こちらは京都のドライバーさんで、数少ない女性ドライバーの情報だったんですが、止まってるみたいですね。

今後女性ドライバーをどれだけ増やすことが出来るか、もタクシーの明暗を分ける大きな要因だと思うな。


TAXI DRIVER(福岡の運転手さん) 

こちらは福岡のドライバーさん

福岡も厳しい地域みたいですね。

各地(地方)の情報には特に注意してアンテナ張ってます。


いつかいろんなとこで(出来れば外国でも)実際タクシー乗って、地域の情報をまとめて発信していけたら面白いと思ってるし、

それも夢の一つかな

ガンガン情報待ってます!

2015年1月21日水曜日

今年もよろしくお願いします

昨年には、あの天下のソフトバンクがタクシー配車に出資し始めたかと思えば、

今年の年明けにはついにLINEまでがタクシー配車アプリに参入してきた

長いことタクシーを書きつづけているが、こんなに早くタクシーが熱くなる時代が来るとは思っていなかった。

形はどうあれ、名だたる優良企業がタクシーが「儲かる」市場であると捉えていることは確かなようである。

タクシーの何が魅力かって、やはり「モノ」のやり取りがないことだろう

供給側(タクシー業者)にとっては、「在庫」という企業にとって最も難しい要素が基本的に存在しないし(厳密には「時間」という在庫が存在するが、それはここでは置いておいて)、

利用者側にとっても「モノ」が残らない(脱税にはもってこいやな)。

モノが溢れているこの時代、エコが叫ばれる時代にタクシーはまさに「時代の優等生」なのである。

人(運転手)さえいれば

この「人」という概念は、タクシーとその他一般的な労働と非常に異なる。

一般的な労働者の現場、それが知的サービス(ホワイトカラー)であろうと、肉体的な労働(ブルーカラー)であろうと、経営者側にとっては人はより「少ない方が良く」、労働者側にとっては労働負荷が下がるため人はより「多い方が良い」。

しかしタクシーというサービスは本来「固定費」であるはずの人件費が歩合制により「変動費」とすることが出来るので、人はより「多い方が良く」、労働者(ドライバー)にとっては競争がより「少ない方が良い」。

要するに正反対なのである。

前回も書いたが、今後労働市場はよりタイト(人手不足)になっていくだろう。

その中で、タクシーというサービスがどれだけ人を惹きつけることができるか

これは俺がかねてから唱えている

タクシーのイメージを変える

ことももちろん大切なのだが、経営者側が一人の人間を雇うということに関してシビアな世界と、歓迎される世界とどちらが働く側にとって良いかということもあるはずである(でもおっさんの同僚は冷たいで)。

これらを踏まえて、俺が今何が出来るか(ドラマやめるんか)

タクシーの技術は普遍性があって、基本的には日本全国、いや世界どこへ行っても地理さえ覚えたら通じるものである。

地理を覚える技術は経験で培うことが出来る。

厳しいことを言うようだが、ナビに頼るドライバーは「プロ」ではない

しかし地域によってタクシーの状況は違うし、それこそこれからこの世界に入ってくる人たちが最も気になる、知りたいところである。

今までもこの世界に入りたい(タクシーに乗りたい)多くの方の相談を受けてきたが、それを何らかのシステムに出来ないかということを考えてる。

それには各地域で現在タクシーに乗っている方々の情報が必要です

コメント欄にもらっても構いませんし、特定の業者の情報を表に出すのに躊躇する場合にはメールの方に頂けたらと思います。

情報が欲しい方も是非コメント、メール等ガンガンください(まともに返事してへんくせに)。

まあ徐々にそれらの情報をマッチさせる方法を考えていきます。

全国、いや世界中のタクシードライバーのみなさん(頼むからテンション下げてくれ)今年もよろしくお願いします!

2014年12月31日水曜日

2014年を振り返って

今年タクシー業界において、どのような流れがあったのか簡単に振り返ってみよう。

今年のニュースとしてのトップは、なんと言っても世界的に旋風を巻き起こしている配車アプリ「Uber(ウーバー)」の上陸だろう。

ウーバーは世界の各都市で、ドライバーという資源を持たずに、スマートフォンをプラットフォームにした新しいサービスを提供している、いわゆる「ベンチャー企業」である。

2009年にシリコンバレー(アメリカ)で生まれたこの会社は、ビジネスの世界では非常に高い評価を得ているが、「タクシー」というレトロな世界にはなかなか馴染まない。

子供たちが楽しく遊んでいる公園にある子どもがPCを持ち込んで、すべり台を降りるスピードや、ぶらんこの回転角度を計測して子どもたちをランクづけし始めたような感じだろうか。

見ている親たちや優秀な子どもにとっては面白いかもしれないが、長い時間をかけて築かれた公園の「序列」を打ち砕かれたガキ大将たちにとってはたまったものではない。

各地でウーバーを排除しようとする動き(今年ロンドンやパリで起きたデモなど)が出ている中、日本(東京)ではまだ大きな動きは出ていない。

ここでは「過剰」とも言われている日本のタクシー規制がバリアになっているのかもしれないが、まだ拒否反応が出るほどに日本ではウーバーが普及していないとも言える。

それなら今後、いや来年あたり日本でもウーバーが暴れまくるのか?

俺はそうは思わない。

日本では法人タクシーの割合が多く、東京ではその大手(日本交通など)が既に自社製の配車アプリを提供している。何より年金をもらっている法人の高齢ドライバーが思い切って登録するほど、メリットや(デジタル)ナリッジあるとは思わない。

個人タクシーがウーバーに流れたとしても、約5分の1では利用者の利便性は限られる。

日本のスマートフォンの普及率(約40%)も先進国の中では低いが、それは(日本特有の)高齢化社会も一つの理由と言える。

タクシー利用も日中は高齢者が多く、今後さらに進んでいく高齢化の波の中で高齢者がウーバーでタクシーを呼ぶ日が来るとは思えない。

深夜においては需要も多く、供給(運転手)が減少していく中でアプリ呼び出しによる「縛り」は有能なドライバーは感覚的に拒否するだろう。

ということで今年表の話題はウーバーのような配車アプリによるものが多かったが、潜在的には「供給不足(人手不足)」が少しずつ実感を伴ってきたのが裏の話題と言えるだろう。

来年以降タクシーにおける人材不足はどんどん表の話題になってくる可能性がある。

これは現在運転席に座っているドライバーにとってはある意味「朗報」だが、ここで「質」を落としてしまってはこの世界は変わらない。

言いたいのは、

今後これ以上運転手は増えない、もう排除する必要はありませんよ

ということである。

いかに優秀な若い人材をこの業界に取り込んでイメージを上げていけるか

それこそが現役ドライバーにとっても利益になるということに気付かなければならない。

そのためには、単なる「移動する箱」ではなく、「情報の詰まった空間」であることを可視化していくことが必要なのかなと感じている。

タクシー1台、1人の運転手が持つ情報は限られているが、その一つ一つの点を集めていけば車内にはネットなどでは得られない情報が溢れている。

その「情報の海」に俺は魅力(ビジネスチャンス)を感じているのだが・・・

日本中の公園における「知恵」を集めたら、今までにない「テーマパーク」が出来るんじゃないかと夢を膨らませて、新しい年を迎えようと思います。

2014年12月25日木曜日

タクシーストーリー第23話~メリークリスマス



12月に入るとタクシーの利用は増える

感覚的に分かってはいたが、

これほどとは思わなかった

今まで一生懸命研究してきた「(客のいる)ルート検索」など全く意味をなさない

何しろ、どこに行っても客がいるのだ

道行く人はすべてタクシーを探している

そんな錯覚を起こしそうなくらい

街は人に溢れ、

そしてその多くがひょいひょいと手を挙げて、タクシーを停める

こうなるとある種のリズムみたいなものが生まれてきて、

停めて、走って、乗せる

その繰り返しである

このリズムが生まれてくると、行き先を言われた途端にルートもパッと頭に思い浮かぶ。

不思議なものでなかなか乗せられないときは、行き先を言われても、「・・・えーと、あそこから・・・そうか、あの道入って・・・」

と時間がかかるが、仕事のインターバルが短くなるほどに頭の回転も早くなる。

クリスマスが近づくにつれて、若い男女の乗車も増えてくる。

しかし、期待したイブの夜はさっぱりだった

車の数は減り、街を歩く人並みも見るからに少なかった。

夕方暗くなり始めた頃、苦し紛れに御堂筋を走っていると、本町あたりで手があがった。

若い女性だった

ドアを開けると、女性はそれほど急いだそぶりも見せずに後部座席に腰を降ろした。

黒っぽいビジネススーツを来て、茶髪のショートヘアは見事にカールがかけられていたが、

その顔は見覚えがあった

「あっ」

俺は思わず声をあげた。

「あぁ・・・、あの」

女性も何かを言いたそうにしていた。

名前が出てこないのだろう。

「地理試験のとき会いましたよね。・・・あ、なんばまでお願いします」

「あぁ・・・とんでもない偶然やね」

俺も名前が出てこなかったが、目の前にいる女性が地理試験を抜群の成績でパスした女性であることはとりあえず認識できた。

「偶然・・・偶然かぁ、偶然ねぇ」

女性は「偶然」という言葉を繰り返した。

「逆に、この世の中で偶然でないことを探す方が難しいのかもしれないわね」

突然意味深なことを言うやんか。

「どうやら、運転手をしている服装には見えないけど」

女性はどう見ても、「仕事中」という出で立ちだった。

「うん、結局コンサルなんかの仕事がどんどん入ってきて・・・出来る女は辛いわね。やりたいことも出来ない」

ルームミラーを見ると、女性の大きな目と目があってドキッとした。

「タクシーが『やりたいこと』だったわけ」

「もちろん」

「また、どうして?」

「あなたは、どうしてタクシーに乗りたいと思ったの?」

突然振られた質問ではあるが、今までに何度となく聞かれている質問でもある。

その度に、その場しのぎの適当な答えをしてきた気がするが、

このときは少しじっくりと考えてみた

一体なぜ俺はタクシーに乗ろうと思ったんだろう。

「一人・・・」

「え?」

「一人になりたかったからかな。それまでの仕事がほんまに忙しくて、周りの人間に気を使ったり、PCの画面とにらめっこしたり、なんか自分がどんな人間なのか自分でも分からなくなってきて」

「ふんふん・・・説明下手やけど、なんか分かる気がするわ」

「一人になって自分を見つめ直したかった・・・のかな」

「それで、何か見つかった?」

この質問は始めてやな。

何か見つかったんやろか。

多くのものを見つけた気もするし、何もまだ見つけていない気もする。

「分からないな。まだ(タクシー乗り始めて一年も経ってないし)でも、この先何か見つかりそうな、そんな予感はするよ」

「なんか、ちょっと羨ましいな」

女性は窓の外を見ていた。

グリコの看板が左手に見えていた。

「それで・・・そっちは、なんでタクシーに?」

「うーん・・・なんでかしら、ハハ」

「ハハじゃないやろ。何かヒントをくれよ。この先何か見つけるための」

「わたし、今からなんばのホテルでセミナーの講師やるの。テーマは『女性の起業とマネジメント』、カッコいいでしょ?」

「・・・」

「18時からのスタートで参加者は30名、定員がすぐに一杯になるくらい人気なんだから」

「自慢話?」

「参加者は事前に決まってるし、ほとんどが女性、それもビジネスをしようとか、少なくとも興味のある人たち。話す内容も大体同じなのよね。そのときの時世の変化はフォローしていくけど、ビジネスに関することって基本的に不変のものだから」

「確かにね」

「何も決まってないことをやってみたいっていう気持ちかもしれない。タクシーに乗ろうと思ったのって。何かのキャリアを築くのって基本的に同じことの繰り返しをしながら、そのクオリティをブラッシュアップしていくみたいなところがあるけど、ある程度出来上がって(慣れて)来ると仕事の効率は上がるけど、面白みはなくなるみたいなところがあって」

「分かる分かる」

「どこかで急に時間の流れが早くなるのよ」

「『時間』的な概念ね(収入ではなく)」

「『偶然』ってなんか素敵な響きがあるでしょ」

「偶然ねぇ・・・確かに、この仕事偶然の繰り返しで、時間はゆっくりと流れていく気はするよ」

「その『ゆっくりとした時間』も魅力的」

なんば駅のロータリーを横目に、ホテルのエントランスに車を入れた。

「正面に付けて良いのかな」

「お願いします、近いところでごめん」

「いえいえ、良い仕事してください」

ホテルの正面玄関に付けると、俺がドアを開ける前に身長190センチはあるかというベルマンが近づいてきて、徐にドアを開けた。

女性は支払いを済ませると、今まで俺なんかと一言も会話をしていなかったかのような表情で車を降りた。

俺もそれに合わせて、何事もなかったように前を向いてドアを閉めた。

車を出す瞬間、横目で見ると、女性が回転ドアでホテルに入っていくところだった。

少し目があった

こちらに向かって何か小さく口を動かした。

「メリークリスマス」

聞こえるはずがないのに、確かにそう聞こえた。

ラジオからずっと流れていたクリスマスソングに、このときやっと気づいた。

前を見ると、大きなクリスマスツリーが青く光っていた。