先月27日いよいよ話題の「タクシー新法」が施行されたわけだが、
正確には「新法」ではなく、従来通りの
「タクシー業務適正化特別措置法」の改正施行
という形になる(なんかようわからんな)。
今回の改正ポイントは、
①特定地域(及び準特定地域)における事実上の同一地域同一運賃の実現
②(認可運賃の改正による)消費増税の価格転嫁
③地域協議会での需給調整
ということになるだろうか。
まず上の「特定地域(又は準特定地域)」とは、
条文には「供給過剰の・・・(または供給過剰になりつつある)」などの文言はあるものの、
全国の大都市、及び一定規模以上(概ね人口10万人以上)の地方都市
と捉えて良いだろう。
まあ難しいことや細かいことを言っていたら読む気もなくなるだろうから(面倒臭くなってきたな)、
ざっくり言うと、今回の特措法改正で行政のやったことは
要するに②の消費税の価格転嫁への誘導だけ
みたいな感じである。
まあこれだけでも行政が誘導しなければ、なかなか進まないやろから評価は出来るが、
それによって報道で「過剰規制」やら何やら言われるのは甚だお門違いと言いたい
誤解を恐れずに言えば、
どうせいろいろ言われるのであれば、この機会に本当に
「過剰規制」と言われても良いくらいの規制をしてくれ
ということである。
公共交通機関に規制をかけるのは、安全や秩序を保つためには当然であり、
またタクシーに対する価格規制や数量規制は、各先進国も当たり前のように実施している。
しかし量的規制に関しては、現在ドライバーの高齢化は着々と進んでおり、
行政による規制などなくても、タクシー(ドライバー)は減っていく状況にある
そういった中で、今回の規制の最も大きな問題点は、
長距離割引に明確な規制が与えられなかったことである
昨年11月に法案が議会を通過して、この年明けに施行されるという流れの中で、
特にこの近畿(大阪)において、
異常な長距離割引(5・5割)に当然行政のメスが入るもの
と業界各方面で期待されていたのだが、
結果的には最終コーナーで(行政が)失速してしまったという感じである。
大阪及び京都の一部における5・5割引(5千円以上5割引)についての近畿運輸局の考え方は、
2分の1を超える利用者に影響しない料金(だから行政が規制する必要はない)
ということのようである。
ここで5・5割が実際は「2分の1を超える利用者」に影響することを説明しよう
今後のタクシー業界が直面する最も大きな問題は何か
そこを行政も、恐らく多くのタクシー関係者も理解していない。
最も大きな問題は、
「供給過剰」ではなく、「供給不足」になっていくことである
タクシードライバーの平均年齢は、厚生労働省が22年に出しているデータでは56.8歳になっているが、
団塊世代から、その上のドライバーがほとんどで、
年々ほぼ1歳に近いレベルで上昇している
そして直近26年1月末の大阪(タクセン)のデータでは、
法人ドライバーの平均が60.7歳、個人では65.2歳
ど真ん中の労働者が年金をもらっているのである
既に各地でドライバー不足は顕在化しているが、
最も多い団塊世代が2017年にはいよいよ70代に突入し、
数年後には急速にタクシーが不足することが予測される
各タクシー業者を始めとする業界関係者はもちろん、
行政もタクシードライバーの確保と稼働率の向上のためにタッグを組んでいかないと、
高齢化によって増加する需要をカバー出来なくなる。
そこで「5・5割引」とは何か
なぜこんな異常な価格が生まれたのか
をおさらいしよう。
時は2002年(西暦とか平成とかごっちゃに使うな)、
小泉構造改革に世が沸いていた時代にタクシーの規制緩和が行われた。
当時は団塊世代が50代半ば、管理職世代の最もコストの高い世代にあった時代である
企業は社内の組織改革と人件費削減のために、
このダブついた世代をリストラや早期退職で削っていた。
中にはもちろん優秀な人材もいたわけだが、
その漂流者たちに、タクシーという選択肢を与えたのが02年規制緩和であった
多くの業界が人を減らそうという時でも、常に増やしたい
それがタクシー業界である。
(失業率を抑えたい)政府の思惑通りタクシーはじゃんじゃん増えた
そして供給が溢れかえってくれば、
当然価格競争に陥るのが経済のセオリーであり、
そのセオリーにどっぷり浸かってしまったのが大阪だったわけである(東京は踏みとどまったけどな)
そしてどうせ車が余って遊んでるなら、二束三文で良いからどんどん長距離を走らせろ
そう考えた大阪のある業者は、
メーター5千円以上半額
というとんでもない割引システムを打ち出し、
その後各業者は泣く泣く追随せざるを得なかった。
これはよく誤解されるが、
メーター料金が5千円を超えた時点で、それ以上の料金を割り引くもので、
メーター6千円が3千円になるわけでなく、5千5百円になるだけ
という多くの利用者にとって関係ない、あまり魅力もない、
誤解によるトラブルを生みやすい割引システムである
このブログにも何度も書いているが、
タクシーで長距離を乗る利用者というのは、安いから乗るわけではない
終電に遅れたり、乗り過ごしたり、彼氏とけんかしたり彼女にふられたりして(よくわからんな)
やむを得ずに乗るか
または、接待や会社の経費など
自分の懐(ふところ)と関係ないか
大きくわければこの2つである。
どちらも価格が選択の大きな要素にならないどころか、
後者の接待などにおいては、「高い方が都合が良い」場合もあるわけである。
それでもタクシーが溢れている時代は大きな混乱はなかった。
大阪の運転手はあまりテンションの上がらない5・5割の長距離乗車を淡々とこなしていた
が規制緩和から12年、状況は大きく変わり
02年緩和世代の多くは年金とのダブルインカムで(ちなみに俺は緩和世代だが団塊ジュニアで年金は遠い・・・)、
神経すり減らして長時間乗務する必要もなく、悠々とタクシーで小遣い稼ぎをしている。
原発廃止を唱えて都知事選を奔走する小泉さんなど、乗車拒否されるかもしれない(きわどいギャグ使うな)
若い運転手は未だそれほど入ってこない
今後も街を走るタクシーはどんどん減っていきますよ
それでもまだ大阪(の業者)は5・5割を続けますか?
遠くまで時間をかけて大安売りしている間に、
市内の病院では高齢者が、
駅では1分でも早く帰ってソチ五輪を観たいサラリーマンが、
繁華街では近場で健全に酒を飲んでいる若者が、
タクシーを探しているんですよ。
それでもまだごく少数の長距離利用者のために、
多くの、2分の1以上の「本当にタクシーを必要としている利用者」を犠牲にしますか?
長距離乗車はタクドラのロマンです。
たまにでいいんです。
2乗務に1回でもいいんです。
高くてもいいんですよ
ピリピリとした空気の中で冷や汗かいて、万札をゲットするのが我々の技術であり、
その達成感は運転席に座ったものしかわからない
プレミアムモルツは高いから売れるんです(例えおかしくなってきたぞ)。
今回は確かに行政に裏切られたかもしれない。
しかし5・5割を始めたのも自分たちなのだから、
何とか自分たちでこの危険な火を消さなあかん
若い人たちにとって魅力ある職業にするために、
業界の方々の英断に期待します。
最初から「足並み揃えて」なんて無理です。
どの業者が「(本当にタクシーのことを)わかってるか」なんです
今回の法改正、消費増税、どっちにしたって文句言われるんですよ。
この機会に「正常」を取り戻しましょう、中途半端はやめましょう。
やるなら今でしょ(ふる)