2012年9月12日水曜日

9月11日(火) 22点〜「タクシーほど気楽な商売はない」

一週間ほど前、点呼の後に所長に呼ばれた。

「あんたこの人知ってるか?」

デスクのパソコンの画面に写っていたのが、

ネット上では、「カリスマ運転手」でならしている下田大気さんだった。

「あぁ、知ってますよ。志茂田景樹の息子で、東京でタクシー運転手やってるらしいですね」

「めちゃめちゃ稼ぐらしいやんか。そんで最近本書いて、またベストセラーなってるらしいで」

「本書いたいうのも知ってますけど…買ったんですか?」

「何でわしが買うねん。わし運転手違うから読んでもしゃーないやろ」

「…それで?」


「うちの社長も、こういう本運転手に読ませ言うてんねん」

…業務命令かよ。

「わかりました。買いますよ」

「読み終わったら貸してな」

「…わかりました。所長もそろそろ運転手に下りる頃(リストラされる)でしょうからね」


そんな行きさつで、業界でも話題になっている下田さんの本を先週アマゾンで購入した。




本の内容は主に、カリスマと自称するほどに稼ぎまくっている著者が、

東京というフィールドで、どのように稼いでいるか

というのを具体的な地名なども入れて、詳細に描いているものである。

そういう意味では、よくあるタクシー本のように、「タクシーであんなことありました、こんな人おりました」みたいなものとは一味違って(第3章にはそのような記述もあるが)、

運転手や運転手になろうと思っている人たちにとっては実用的と言える

「はじめに」で書かれている文章を引用しよう。

「ぼくは30代に入るまで役者に始まり、会社員、会社経営といった仕事を経験しましたが、いちばん気楽に楽しくできているのがタクシー運転手なのです。

…中略

でもぼくはまだまだタクシー運転手をやめる気にはなりません。だってタクシーの仕事は面白くて金になる。時間の融通だって利く。やめる理由がまったくないんです。

だから今の時代に仕事で悩んでいる人にはぜひ、タクシー運転手をお勧めします。

ぼくのように毎日楽しくお金を稼ぎましょう!」

現役の運転手として、非常に共感できる文章である。

本は4部構成で、

第1章が、彼が運転手になる前の話

第2章が、「業界ナンバーワンになった業務方法はこんな感じ」

第3章は、タクシー車内外での面白エピソード

第4章は、タクシーにまつわるQ&A


ということで、コアになる部分はやはり80ページ余りを充てている(全200ページ弱)第2章の、「東京のタクシーで稼ぐノウハウ」編だろう。

この章には、具体的な駅名などを包み隠さず書いており、東京の運転手でなくても読んでいてワクワクする。

例えば、タクシー激戦区であろう新宿での彼の攻め方の一部を引用すると、

「新宿に着いてすぐに車を回すのは西武新宿駅そば、大ガードを通過してすぐのパチンコ店の前あたりです。ここでは西武新宿線で新宿まで来て、そこから丸の内方面にタクシーで向かう乗客が拾いやすいのです。

…ちなみにJR新宿駅では、タクシーを利用して丸の内方面に向かうお客さんはほとんどいません。こちらはJR各線はもちろんのこと、東京メトロなどほかの交通機関へのアクセスが充実しているからでしょう。」


これは東京に限らずよくある話だが、交通機関が整備された大きな駅の、正面の正規の乗り場にタクシーは大量に並ぶ傾向にある。

新宿で言えば、西口のタクシー乗り場のようなところや羽田空港のようなところもそうだろうが、こういうところでは、

タクシーに乗る人も多いが、並ぶタクシーも多い

要するに、なかなか差別化できないというか、「人より稼ぐ」というような野望を持っている彼のような人物は戦いにくいだろう。

そしてちょっと離れた不便な場所、

利用者にとっては必要な場所にタクシーがまったくいないということもよくある

そうした利用者側からみた穴場ポイントを彼は「50ヵ所ほど」頭に入れているそうである。

彼の「稼げる」営業ノウハウを大きくまとめると、

①(流しより)主に上のような場所での「付け待ち」の繰返し

②周りと違う動きをする

③短距離乗車を多く乗せる回数勝負

④営業パターンを固定化させない


ひとつひとつ簡単に説明すると、

まず①、「流しより付け待ち」ということだが、

流しというのはやはり行き当たりばったり的なところもあるし、他のタクシーとの瞬間の争いや危険性もある。

本の中にも書かれているが、マナー違反で割り込まれても客を乗せられてしまえばどうにもならない。

しかし、ニッチな付け待ちポイントをいくつか知っていれば固く稼げるし、争いも避けることができる

もちろんいわゆる「手上げ乗車」も、その間にあればラッキーということである。

そして②、「周りと違う動き」だが、

彼は多くの運転手が避ける新宿歌舞伎町に乗り入れて、自分のものにしている。

「運転手が避ける」というのは、当然それなりの理由があるわけだが、

「ライバルが少ないところを狙う」


のは、タクシーだけでなくビジネスの鉄則である。

新宿歌舞伎町は大阪では西成辺りにあたるのだろう。

自分も大阪で新人時代に、苦し紛れに何度か乗り入れて、何度もひどい目にあっている(西成の方が厳しいんちゃうか)。

この戦略はまさに「言うは易し行うは難し」

彼が2年経っても歌舞伎町から逃げないのは、

精神的な逞しさと運の強さを物語っている

そして③と④、これもどこでも同じかもしれないが、

この世界本当に稼ぐ奴は臨機応変に営業エリアやパターンを変えていって、短いのをどんどん乗せていく

「タクドラはみんな遠方を狙っている」、なんてのは一部の利用者の偏見で、ある程度乗ってる運転手はみな回数勝負というのはわかっているはずである。

遠方乗車なんてのは狙って取れるもんでもないし、よく動く時間帯には逆に遠くに飛んだら非効率になることもある。

そして、ワンパターンな動きをしていたら回数乗せることはできない


人の動きは経済であり、流れのあるところ、波が来ているところを見極め、先読みして常に動いていくことが短期的にも長期的にも重要になる。

そして動けば動くほど流れが見えてくるという好循環を作ることができる

あと面白いのが、

彼は2009年10月に運転手になって2年間で、「大台」と言われる、1乗務10万円超えを4回も経験しているらしいが、その4回すべてを初乗務から1年以内に達成している(09年12月、10年1、6、7月)。

タクシーってのは、その気になれば乗り始めてすぐに稼ぐことが出来る

とはよく言うが(何年かすると、「その気」にならなくなるからな)、まさにそれを証明している実例と言える。

逆に最初にネガティブな先輩たちに捕まって手なずけられると、なかなか動きにくくなるということもあるので要注意である。

あいさつくらいはもちろんしなくてはいけないが、そういう連中とはある程度距離を置いて、輪の中に入らないこともこの世界で生きていくのには大事なテクニックのひとつだろう(放っておいても、何年かしたらいなくなるからな)。

あとがきで、そのようなことにも遠まわしに触れている。

「タクシー業界全体を見渡すと、この仕事をしょうがなくやっている方は決して少なくありません。でも、そういうノリでやっていると当然成績も上がらないでしょう。

何の仕事をやるにしろ、それをいかに自分が楽しめるかが重要だと思います。」


タクシー乗ってると、ほんまに何故かついてる運転手っていて、

そういう人はどこに行っても、いい仕事がうまい具合に当たる

この本を読んでいると、もちろん彼の努力はあるものの、

何よりこの人持ってるわ

と感じさせられる。

その運を引き寄せる秘訣が、最後の文章で公開されていた。

「僕のように毎日楽しんで仕事ができれば、物事は必ずいい方向に転がっていくはずです。」





9月11日(火) 日照3.9 雨4.5 気温23.3(27.3)
営収 22,870(13,990) 15(11)回 10.75(7.25)時間
MAX 4,710(1,830)


昨日今日と、

昼間は健闘しているものの、夜はさっぱり

サッカー観戦(日本対イラク)で3時間抜けたこともあるが・・・

2日連続で崩れたのは痛い

「カリスマ運転手」への道は遠いなぁ・・・

2 件のコメント:

  1. ドライバーさんへ


    所長さんの次に貸して欲しいなぁ~。

    仕事が上手く回ってモチベーションが上がるのではなくて
    常に楽しく業務をこなしていると、出会いや新たな発見に
    気づくアンテナが洗練されていくような気がしています。

    楽しんだもの勝ちです。


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    1. 昨日さっそく所長に渡りましたけどね・・・返ってこないかもしれません。

      ちなみに著者が現在所属している杉並交通へ初めて面接に行ったのが、2009年の9月15日、その翌日が入社日になったらしいです。

      まもなく3年の記念日なんですね。

      あとラーメン屋の経営にも乗り出しているようです。
      せっかくタクシーで稼いだ金も・・・って感じですが、起業欲ってのは病気に近いですから、わたしも気持ちはよくわかります。

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