2025年12月9日火曜日

タクシーストーリー⑦ 面接 志望動機

 「えー、…あと、そうそう、タクシーに乗ろうと思ったのはなんでかな?」

社長の最後の質問やった

一体この面接はなんやろう

ここまで1時間近く面接時間を使ってきて、

ここに来て、この質問か

面接始めから、勤務形態とか、勤務時間の制限の話やら、

日報まで見せてくれて、日報の書き方まで説明があったが、

真っ先に聞かれるべき質問が最後に来た

もちろん答えは用意していたが、

14時から始まった面接は1時間の予定で、次も控えているようやった

簡潔に答えた

「はい、街を走っているタクシーはよく見るんですが、縛られた感じがなくて、自由に見えたんです。今まで決められた業務と時間に追われて、いつのまにか常に上司や部下の顔色見ながら仕事をしていたんですが、そういう世界とは全く違った空気を感じました」

白髪の社長は真剣にこちらを見つめていた

「ほぅ…、面白いな」

「…」

何が面白いんやろ

「今まで何人もこうして面接して、志望動機を聞いてきたが、意外とその言葉を出す人はいないんやな」

「その言葉?」

「自由」

「…」

「正解や。よく見とるわ。タクシーは自由やで」

「はい」

「しかし、自由は裏返せば、放任であり、孤独であり、仕事面でも収入面でも寄りかかる壁はない」

「…はい」

「それを楽しめるかどうかや」

面接の途中までは、他社のことも考えながら聞いていたが、

ここに決めようと思った


12月8日(月) 66,820 47回

少し年末らしくなってきた

日中から夕方にかけては、ほぼ停まる時間もないくらい忙しい

夜も年末らしく変な客が出てきた

行き先を言えない(くらい酔っぱらった)客

風呂に入ってないのか、とてつもない匂いを発してる客

あまりにひどいので、

「ちょっとかなり匂いがきついんで、次のお客さんも乗せられなくなってしまいますし、次回は受けられませんよ」

と伝えると、

「名誉棄損や!警察呼べ!」

「…わたしは(余計な時間かかるだけなんで)呼びませんよ。呼びたかったら降りてから自由に呼んでください」




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