秋のこの時期にしては気温が高かった(29度)とは言え、
涼しくなれば、近場はタクシー使わなくても歩ける
少しづつ利用は減っていく
そして、
夜も利用は少ない
特に10月の頭のこの時期って、3月と並んで感覚的には年間で最も悪いイメージがある
そんな中、23時頃無線が鳴った
配車先の病院に着くと、
老夫婦らしき男性と女性が待っていた
トランクに荷物を積んで、
「えーっと、摩耶ケーブルの方寄って、最終は垂水の方へ行ってくれるかな」
おー、神や
万コロの仕事やん(取ってつけたようにタクシー用語使うな)
「分かりました」
しかしその後の会話を少し聞いていると、2人は夫婦ではないようや
「明日もまたお願いします」
みたいな話をしている
大体想像がついた
摩耶ケーブルの下で女性が降りた
「今日は本当にありがとうございました。明日もお願いします」
男性がお礼を言う
「じゃあ摩耶から高速乗って、名谷で降りてもらえますか」
「わかりました」
男性と2人になって、しばし沈黙が流れた
夜の乗車は基本沈黙を流しておけば良い場合もある
しかし、ここは何か話さないといけない空気を感じた
「どなたか亡くなられたんですか?」
「…はい、わたしの家内です」
「そうなんですか。大変ですね」
「本当に…先ほど、22時18分でした」
時計を見ると、まだ23時過ぎである
「…おいくつだったんですか?」
「85…この土曜日が誕生日だったんです。この土曜日で85歳になるはずでした。誕生日まで生きられんかった」
「そうなんですか」
その後はそれ以上会話を続けられなかった
続けなかったと言うべきか
深夜の高速を無言で走った
垂水のご自宅は豪邸やった
「荷物を運ぶのを手伝ってもらえますか」
「はい、わかりました」
料金の1万3千円ほどと、別にチップとして千円置いてくれた
トランクの荷物を持って門を入ると、石段を上った先に大きな家があった
これ個人の家か…と思うくらいの広い敷地やった
こんな大きな家にこのご老人はこれから一人で住むんやろか
石段の上の玄関前に荷物を置いた
「ありがとう」
老人は笑顔でお礼を言ってくれた
金は捨てるほどあるんやと思う
それでも人はいつか死に、
1人で生きていくことも悪くないとは言え、
もっと小さな家の方が良かったのかもしれない
なんと言って良いかわからないけど、
いろんな人生を垣間見ることが出来るこの仕事がまた少し愛おしく感じた
10月8日(水) 60,420 33回
0 件のコメント:
コメントを投稿