神戸でタクシー現場に戻ってきました! 運転席からの景色を最高に楽しんでいます。 いつかタクシードライバーが世間に認められる、社会的地位の高い職業になり、若者の憧れの職業になる日を夢見ています。
2025年10月21日火曜日
車内の「落とし物」
2025年10月17日金曜日
「大丈夫ですか」
隔勤が好きとは言え、
隔勤というのは、ある意味めちゃめちゃ自由時間が多い反面
勤務時間の長さは過酷である
俺は基本18時間の乗務をしているが、法的には20時間までの乗務が可能である
18時間でもハンパない長さである
俺は通勤に約1時間かけているので、
朝6時過ぎに家を出て、
帰るのは3時から4時である
乗務は8時過ぎの出庫だが、
業界用語で「青タン(2割増)」と呼ばれる22時くらいからは睡魔との闘いである
別に休憩取って寝ることは出来るが、
当たり前だが、その分営収は減る
どうしても無理して駅に入ったり、アプリ配車取ったりする
前回の乗務だったが、
締め日で、夜仕事なくて、眠いし、テンションだだ下がりで帰庫しようとしたとき、
病院からの無線が鳴った
その病院は大抵遠方などないのだが、
行き先は垂水
「(阪神高速)若宮で降りて、2号線走ってください」
「分かりました」
ロングで嬉しかったが、
深夜の高速は睡魔を助長する
それでも高速ではギリギリ緊張感を維持していたものの、
高速を降りると、怒涛の睡魔が襲う
ウトウトして、少し車線をはみ出しそうになった…
「大丈夫ですか」
お客さんにこの質問をさせたことで、俺はドライバー失格である
お客さんは恐怖を感じたのだろう
大きな事故にならなくて良かった
反省して、プロとしてこの隔勤乗務で胸を張るために、
生活を管理しなくてはならない
明けの日は早く寝て、乗務中忙しくても昼間から適度に休憩を取り、仮眠する
隔勤は奥が深い
10月16日(木) 72,370 38回
今日は当たり良かったな
前乗務の反省を踏まえ、乗務最後まで睡魔に捕まることもなく、
定時(2時)で帰庫
しかし帰りの自家用車でバス停に停まり、しばし爆睡してしまった…
2025年10月13日月曜日
乗り場のルール
各駅や病院のタクシー乗り場には、大抵ルールが存在する
ルールがなければ乗り場の秩序がなくなってしまう
ということもあるし、
ルールを作ることでルールを知らない車が入りにくくする
ということもある
例えば住吉駅の乗り場に入るには、
300メートルほど東にある住吉川から入らなければいけないというルールがある
西側から来た車は、東側から来る車に譲らなくてはならない
それを知らずにすっと入ってしまうと、
思い切りクラクションを鳴らされる
そんな世界である
最近は女性ドライバーが増えてきた
女性というのは、ルールを嫌う人種なのかもしれない
ある時他の駅で俺が右折で駅に入ろうとして、
女性ドライバーが左折側から来たので、
待って前を譲ろうとしても、
向こうも譲ってくる
お互い譲りあって、どちらも入れない
男性ドライバーの前に入ると文句言われたら面倒やから、後ろにまわろうとしたのかもしれない
正味一台くらい前に入ろうが、後ろにまわろうが大した問題ではない
ごちゃごちゃ言われる方が面倒くさい
から結局女性や若いドライバーは駅に入らない
利用が多い時間帯は駅に客待ちの列が出来るというのは、
決してタクシーが足りないわけではない
ということである
ルールは必要なんやろうけど、
「タクシー」という世界の文化が変わることが
利用者のためにも、
若い志あるドライバー達のためにも、
最も求められていることかもしれない
10月12日(日) 57,510 39回
連休の中日で、もっと仕事あると思ったが、
苦しい闘いやな
神戸市長選挙が告示されたらしいが、
その影響もあるのかも(選挙中はタクシーが動かへんいう都市伝説か)
2025年10月9日木曜日
「どなたか亡くなられたんですか」
秋のこの時期にしては気温が高かった(29度)とは言え、
涼しくなれば、近場はタクシー使わなくても歩ける
少しづつ利用は減っていく
そして、
夜も利用は少ない
特に10月の頭のこの時期って、3月と並んで感覚的には年間で最も悪いイメージがある
そんな中、23時頃無線が鳴った
配車先の病院に着くと、
老夫婦らしき男性と女性が待っていた
トランクに荷物を積んで、
「えーっと、摩耶ケーブルの方寄って、最終は垂水の方へ行ってくれるかな」
おー、神や
万コロの仕事やん(取ってつけたようにタクシー用語使うな)
「分かりました」
しかしその後の会話を少し聞いていると、2人は夫婦ではないようや
「明日もまたお願いします」
みたいな話をしている
大体想像がついた
摩耶ケーブルの下で女性が降りた
「今日は本当にありがとうございました。明日もお願いします」
男性がお礼を言う
「じゃあ摩耶から高速乗って、名谷で降りてもらえますか」
「わかりました」
男性と2人になって、しばし沈黙が流れた
夜の乗車は基本沈黙を流しておけば良い場合もある
しかし、ここは何か話さないといけない空気を感じた
「どなたか亡くなられたんですか?」
「…はい、わたしの家内です」
「そうなんですか。大変ですね」
「本当に…先ほど、22時18分でした」
時計を見ると、まだ23時過ぎである
「…おいくつだったんですか?」
「85…この土曜日が誕生日だったんです。この土曜日で85歳になるはずでした。誕生日まで生きられんかった」
「そうなんですか」
その後はそれ以上会話を続けられなかった
続けなかったと言うべきか
深夜の高速を無言で走った
垂水のご自宅は豪邸やった
「荷物を運ぶのを手伝ってもらえますか」
「はい、わかりました」
料金の1万3千円ほどと、別にチップとして千円置いてくれた
トランクの荷物を持って門を入ると、石段を上った先に大きな家があった
これ個人の家か…と思うくらいの広い敷地やった
こんな大きな家にこのご老人はこれから一人で住むんやろか
石段の上の玄関前に荷物を置いた
「ありがとう」
老人は笑顔でお礼を言ってくれた
金は捨てるほどあるんやと思う
それでも人はいつか死に、
1人で生きていくことも悪くないとは言え、
もっと小さな家の方が良かったのかもしれない
なんと言って良いかわからないけど、
いろんな人生を垣間見ることが出来るこの仕事がまた少し愛おしく感じた
10月8日(水) 60,420 33回
2025年10月4日土曜日
「隔勤が好きなのですか?」
以前コメント欄で、
https://cooldriver-in-kansai.blogspot.com/2025/09/blog-post_12.html
「隔勤が好きなのですか?」
という質問を頂いた
好きです
感覚的に好きというのは簡単だが、
隔勤について考えている人のために、具体的に考えてみよう
理由としてはまず
①休みが多い
隔勤は大抵月12または13乗務である
月の半分どころか、6割程度が休めるわけである
この時間を使って副業も出来るし、趣味を存分に楽しむことも出来る
俺も実際副業でも稼いでいる
実際の乗務は18~20時間になるのでがっつりだが、
俺の場合は朝8~26時(深夜2時まで)を基本にしていて、
日報締めて帰ったら3時半から4時くらいにはなるが、
明け(翌日)は9時頃には起きる
ほぼ1日まるまる使える
②丸1日の客層を見ることが出来る
タクシーの客層は様々で、それは地域や時間帯によっても変わってくる
朝は病院通いのご老人が多く
午後になると買い物客や、ビジネスマンの利用も増える
夕方はまたビジネス含む他地域から来た客が飲食に動いたりして、
深夜になると若者の利用が多くなる
そんな様々な街の姿を見ることが出来るのは楽しい
③意外と健康に良い
気がする
2日サイクルでまわっているので、慣れたら身体のリズムは出来る
仕事は楽しいし、次の日は必ず休みになるから何よりストレスが少ない
ただ昨今隔勤は減ってきている
隔日勤務というのは、元々タクシー会社が車両を最も効率的に使える勤務体系だった
A乗務員が丸1日乗って、翌日はB乗務員が丸1日乗る
日勤乗務員が10時間や11時間乗るのに比べて、1台が毎日20時間近く動くわけやから、車両ごとの稼ぎが倍近くになる
と言っても、そんなのは今は昔
乗務員が減っている中で、車両は余っている状況である
俺の車も結局俺が明けの日は空いてることが多い
2日に1回しか動かなければ、逆に非効率で、日勤の方が稼ぐということになる
将来的にはなくなっていく勤務かもしれない…
10月2日(金) 56,070 46回
月明けで厳しいとは思っていたが、
予想通り苦しい金曜やった
2025年10月2日木曜日
「わたし、脳腫瘍なんです」
午前中は流れが悪く、イライラしていたところで無線が入った
配車先は駅近くの病院
まあ(行き先)近くやろ
と思って向かう
着くと、男女2名が入口前で待っていた
60代くらいやろか
「お待たせしました」
「とりあえず水道筋の方向かってくれる?」
「分かりました」
「そこで彼女のスマホ取ってきて、そこから…」
そこから?
「運転手さん、あいな自然公園って分かる?」
「藍那ですか!北区のですか?」
「多分そうちゃうかな。今彼岸花がきれいに咲いてるみたいで、写真撮りに行きたいと思って」
「ちょっと見ますわ」
グーグルマップで検索すると、「あいな里山公園」というのがある
https://kobe-kaikyopark.kkr.mlit.go.jp/
7,8千円は出そうやな…
ややテンション上がる
水道筋のマンション近くに停めて、女性だけ降りてスマホを取りに行った
車内で男性と二人で待つ
「今日は天気も良くて、気持ち良さそうですね」
やや遠方へ行く客だからではないが、社交辞令を言う
「少し暑いかもしれませんね」
「そうですねぇ、山の上だからこっち(市内)より涼しいかもしれませんよ」
「運転手さん、わたしね、実は脳腫瘍なんですよ」
「えっ?」
「今年の5月に医者に宣告されて、もう年内生きられるかどうか」
「…」
「今日は特別に外出許可もらって、彼女とその公園の花を見に行きたいと思いまして」
彼女?奥さんではないのか
「元気そうに見えますけど」
「そうでしょう?でも、いつどうなるか分かりませんよ。もしかしたら、このタクシーの中でポックリなんてことも(笑)」
「…」
女性が戻ってくる
「運転手さんといろいろ話してたんや」
「…そう」
「運転手さん、じゃあそこ(里山公園)まで向かってもらえますか?」
「わかりました」
少し前まで真夏日が続いていたが、10月に入ってもう空はすっかり秋めいている
俗に言う「秋晴れ」である
公園で花を見るなんて、本当に気持ち良いやろな
道中もいろいろ話しながら行った
「5月にこの病気が分かるまでは警備員してたんですよ。泊まりのシフトがあったりして、結構厳しい仕事でしたよ」
警備員というと、タクシーと共に世間から蔑まれている現場仕事として共感する部分がある
すると女性が、
「その前は塾講師をしてたんやんね」
「そうなんですか」
「そうなんですよ。でも両親が病気になって、いつ病院から連絡があるか分からないから塾の仕事は辞めたんです。講義中に電話出られませんから」
「はぁ…そうですよね」
男性は警備員という仕事を卑下している感じはなかったが、女性が「警備員なんかではない」と言いたげな印象を受けた
家庭の事情で仕事を辞めて、厳しい職業に就かなければならなかったということか
夫婦でなければ、この二人の関係は何なんだろう
途中郵便局に寄ったりして、メーターは1万円を超えていた
「久しぶりに緑を見るなぁ。病院では寝て起きて、白い壁の毎日ですから(笑)」
俺はしょっちゅう緑を見ているとは言え、秋晴れの山地のドライブは気持ち良いものである
目的地の公園に着いた
看板を曲がると、
ゲートが閉まっていた
(休園日)
うせやん
後部座席も固まってるのを感じる
グーグルマップで場所を確認したときに、なぜそこ(休園日)まで確認しなかったんやろう
遠方乗車にテンション上げて、ドライバー失格や
ルームミラーを見ることも出来ない
「どうしましょうか?」
しばし沈黙の後に、
「もうここで降ろしてください」
男性は覚悟を決めたように言った
「ここで、ですか」
男性は女性に向かって
「外からでも少しは見えるやろ。ゲート超えて入っても良いし…運転手さん、今の聞かなかったことにして」
聞かなかったも何も、歩くのもままならない病人なのに、ゲート超えるとか出来るわけないし、こんなとこで降りても…
しかし、この二人を見て、これ以上自分が入り込むのはやめた方が良いと感じた
タクシーというのは、時に乗客の人生に深く入り込むが、降車と共に終了してリセットしなければならない
タクシーの性(さが)とでも言おうか、そこにこだわりはある
「こんなとこで降りてしまって良いの?」
女性はやや心配している
「もう(2度と一緒に)来れないよ」
話の中で聞いたが、男性は2週間前に意識を失って倒れてるそうである
次の外出はもうないということやろか
迷ったが、二人を降ろして、その場から去った
帰り道で少し涙が込み上げてきた
彼の人生を想い、リセット出来なかった
来年の年明けを迎える頃、おそらく彼はもうこの世にいない
せめてこの秋晴れの下、ヒガンバナを見せてあげたかった
俺にはどうにも出来ない想いに、悔しさと人生の儚さ、
運というもの
格差があるとすれば、そこなのかもしれない
彼があの公園を彼女と二人で外から眺め、少しでも幸せを感じることを祈らずにはいられない
10月1日(水) 57,570 35回