2025年12月2日火曜日

タクシーストーリー⑤ 面接

面接は見た目80歳くらいの社長と、

課長と呼ばれている管理者の男性の2名がソファの向こう側に座って行われた

ザラザラとした、なんとも言えない古い素材のソファには、誰のものとも思えない髪の毛がそこここに付いていた

「えー…と、タクシー経験はないんですね」

履歴書を見ながら、神経質そうな課長の第一声はタクシー経験についてだった

「はい」

「いえ、構いませんよ。免許はうちが費用を負担して取得出来ますから」

3か月ほど散髪に行っていないような、中途半端に伸びた髪を触りながら、不自然な笑みを浮かべて課長は言った

「あのー…、免許を取らせてもらった場合は、何年かは縛りがあるんですか…」

「1年半です。それ以内に退社された場合は申し訳ありませんが、免許取得にかかる費用は負担してもらうことになります」

やはりそうか

「その場合の費用はいくらくらいになるんですか?…いえ、あの、当然すぐに辞めるつもりはありませんけど」

「はい、ご心配は分かります。費用は教習中に支払われる1日1万円の手当も含めて30万程度になるかと思います。入社1年を過ぎたらそれが半額になります」

30万か…

壁を見上げると、運送約款だとか、運行管理者の資格証などの類の額がバランス悪く飾られている

2年もこの会社にいるイメージが湧かなかった

タクシーはこの会社だけではない

ここはやめておこう

と思ったとき、ここまで隣で座っていただけの、白髪の社長が初めて口を開いた

「いらんよ」

「はい?」

課長が驚いたような顔で横に座っている社長に顔を向ける

「半年で辞めても、1か月で辞めても、免許の金は返さんでも良い。一度タクシー乗ってみたら良いわ。君みたいな年齢から乗り始めたら、きっとすぐに辞める気にはならんよ」


12月1日(月) 51,730 41回

いよいよ12月

初戦は惨敗やな

朝から日中の動きは悪くなかったが、

夕方から夜はひどかった






2025年11月29日土曜日

タクシーストーリー④ 会社訪問

目の前にあるのは、面接に来た会社の社屋というより、

小屋であった

いつの時代に作ったのだろう

ベージュが煤けたようなトタンの壁に、窓には元の色が分からないようなグレーのカーテンがかかっている

暗い…

それが第一印象やった

入口のドアというより、建付けの悪いプレハブの引き戸のようなものを軽くノックした

返事がない

よく見ると、引き戸の横に、バスの「次降ります」みたいな小さなボタンがあった

インターホン…?

ボタンを押してみる

「はーい!」

年配の女性の返事が建物の中からした

反射的にそこから逃げ出そうという強い想いに駆られた

「どうぞ!」

寝間着のような薄いピンクのニットを着た小柄なおばちゃんが引き戸を開けた

一瞬逃げ遅れた


11月28日(金) 77,210 35回

昨日から神戸阪神地区の運賃改定(要するに値上げ)が行われたが、

個人的には新料金初日

普通によく上がるが、値上げに気づいた利用者は微妙な空気もあった

営収を作るのがかなり簡単になった印象がある

これからタクシーはどんどん良くなっていくんやろな

という実感があった

利用者、行政に感謝




2025年11月27日木曜日

タクシーストーリー③ 会社探し

年収1千万のドライバーもいるらしい

嫁を説得するには「年収1千万」はキラーワードやった

しかし、実際そんなに稼いでいるのはほとんど東京のドライバーで、

この神戸という地で、その数字は現実から離れている

ということも、いろいろ調べて分かってはいた

「今の仕事を辞める前に面接でしっかり話を聞いて、現実を見てから決めてほしい」

嫁からの要望であった

いくつかネットで検索した会社をリストアップした

関西で大手の電鉄系である阪急阪神、神鉄神姫

独自の路線を行く相互タクシーやMKタクシー

全国的にも幅を利かせていいる第一交通

名の知れた会社は恐らく研修制度も充実しているだろう

未経験で飛び込むにあたってはまずそういうところを選ぶべきなのだろう

収入も比較的安定している気がした

しかし、何か引っかかるものがあった

タクシーのイメージを変えてやる

そんな大きなことを考えて入るには、組織に埋もれてしまうような感覚はあった

何より「タクシー」という自分が魅力を感じた「職業」よりも、

「阪急」であったり、「MK」みたいなワードが強い気がする

「阪急で働いてます」

「まあ、それはご立派な(会社で)。何をされてるんですか?」

「タクシーに乗ってます」

「はぁ…(タクシーですか)」

みたいな会話が入る前から目に浮かんでくる

そんなこんなで小さな会社も見ている中で、

「歩率60%」

「勤務シフトは自由に決められます」

そんなワードに引き付けられた

大手の会社は勤務シフトはある程度決められているようやし、

歩率は(神戸あたりでは)大手は大抵55%くらいの感じであった

※タクシーの歩率は東京地区が最も高く、地方へ行くほど下がっていく傾向にある

その分福利厚生はしっかりしているのだろうが、

何より、

組織が小さい分自由が大きいはず

という勝手な想像が俺をその会社に引き込んでいった

「面接をお願いしたいんですが」

「はいはい!いつでもどうぞ」

この人、いつもどんな仕事してるんやろ…

そんな疑問を抱きながら面接の予約を取った


11月26日(水) 60,850 40回

現行料金(初乗り600円 1146m 後続100円 254m)で最後の乗務

さすがにタクシーで駆け込み需要はないやろけど

午前中から大阪行けたし

まあまあ出来たな

ここんとこ人が動いてると感じる




2025年11月25日火曜日

本物のタクドラによる映画「TOKYOタクシー」鑑賞後の感想

TOKYOタクシーさっそく観てきました

普通に良かった

何が良かったかというと、

タクシーという職業にスポットを当てて映画を作ってくれたこと

これ(タクシーの映画を作ること)は俺もずっと夢見てること

主役はキムタクが良いと思っていたので、

先を越された!

という想いもあるが、

映画自体はヒューマンドラマであり、タクシーそのものをフォーカスしたものではない

俺なら、もっとタクシーという「仕事」にフォーカスした面白い映画を書ける自信がある

まあそれはさておき、

木村拓哉がタクシー運転手を演じる

というだけでタクシーのイメージは変わるやろ

そして内容やけど(ここからはネタバレ入ってきます)、

まずキムタク演じる個人タクシーの運転手が、朝方に帰宅するところから映画は始まる

季節は今と同じような秋ごろやろか

明るくなっていたから、7時頃ではないだろうか

時間など関係ないと思うやろ

それが大ありなんやなぁ…まあ後ほど

かなり疲れて帰ってきていた

そして部屋に入り、日報を取り出し、手書きで記入する

「本日の売上 30,270円

 キロあたり収入 215円(200円代やったはずけど、正確な数字ではないかも)」

計算すると、走行距離は140キロ前後というところか

そして後で言及があったが、キムタクは夜日勤ドライバーとのことである

夜日勤なら18時から朝の6時くらいの勤務やろか

今時の東京(車に「北」って書いてあったな)のタクシーで、キムタクの年齢なら50代前半、十分に走れる、稼げる年齢である

3万円はないでしょう

東京武三地区の隔勤の平均売上が6万円台と言われているから、それを単純に半分にした数字を書いたのかもしれないが、

平均営収はまともに働いてない高齢ドラや鬱ドラの数字も含めた「平均」である

公開される平均売上に20%くらい上乗せしたものが、まともに走っているドライバーの平均と言って良いやろう

さらに夜は22時から2割増料金になるので、東京あたりでは稼ぎは大きい(Xの夜日勤ドラで10万上げてる人とかおるからな)

そしてそこから朝寝に入るのだが、これは現実のドライバーの生活に近いところであった

そして10時頃、仲間のドライバーから電話が入ってくる

「わいの持ってた予約、行ってくれへんか?ギックリ腰になって運転出来へんようになってしもたんや」

何故か関西弁…エンドロールのテロップに「明石家さんま」とあって、

どこで出てきたん?

と思ったが、あれがそうやったのかも

ちなみに自慢やけど、俺は

明石家さんまさんを乗せたことがある

しかもそのとき電話でキムタクと話していた

すごいやろ(映画と逆のパターンか)

話がやたら逸れるが…

頼まれた予約時間は13時

12時には出庫しないといけないやろう

7時に帰ってきて、12時に出庫

ドライバーの方なら分かるやろが、

違法です

勤務と勤務の間は最低9時間開けないといけません ※2024年3月までは8時間

そして、その時間に葛飾帝釈天に倍賞千恵子演ずる「高野すみれ」さんを迎えに行く、

乗車して

「どちらまで?」

「え!聞いてないの?」

「…すみません」

というやり取りがあったが、

ありえません

運転手同士の予約のやり取りは現実にあるが、そこで行き先を聞かないなんて、ありえません

そして、ここからは高野すみれさんの壮絶な生涯の話をタクシー車内で聞くことになるのだが、

ネタバレにもなるし、タクシーにあまり関係ないので触れません(この辺は原作フランス映画って感じやったな)

しかし、お客さんが運転手に自分の人生について語る

「今まで誰にもこんな話したことないねん」

なんてことは、意外とよくある

話の内容はともかく(あれはないな)、シチュエーションはあるあるやったかも

東京の名所、雷門やスカイツリー、東京駅、東京タワーなどを通過していって、

なんか東京観光してるみたいで良かった

しかし残念やったのが、

メーターを一度も映さない

タクシーと言えばメーターでしょう

東京葛飾から寄り道をしながら、神奈川の葉山まで行く設定

メーターがどんどん上がっていく映像があれば、観ている方は引きつけられるはず

そっちに気を取られてほしくなかったから、敢えてメーターを外したとも取れるが、

出発地の葛飾帝釈天から、葉山の海岸沿いまで

下道で約80キロ(客の希望で下道で行く設定やった)

各地寄り道していたから100キロ程度は走ってたやろ

東京のタクシーの料金が現在255メートル100円やから ※長距離のタクシー料金計算においては数百円の乗車料相当分を含んだ初乗り料金は無視します

1キロ392円

は停まらずの前提で、下道で信号で何度も停まるわけやから

大体1キロ450円

で計算できるやろ

100キロで4万5千円くらいかな

そんなメーター見たらワクワクするのに

そして最後、葉山の高齢者施設に着いて、

高齢のお客様を施設の中まで見送る

「あっ、支払いまだでしたね!」

客の方が気づいて伝えるが、

ありえません

タクシーで、いくら長距離と言っても降車前に料金をもらわないなんて、ありえません

そのためにやってんやから

そんな人生の打ち明け話聞いて、親しくなって、料金の話なんかしにくいって?

いやいやそんなことありません

お客さんと親しく話することなんてなんぼでもあるけど、

料金はしっかり頂きます

そこをドライに、しかも手早く済ませるのがプロの運転手です

ということで、長くなったが(ほんまに長いな)

もうひとつ、

賠償が「タクシーやめようと思ったことない?」

と質問したシーンがあった

現役タクドラとして最も印象に残ったのはこのやり取りかもしれない

「いやー…いろいろつらいことはあるけど、良いこともあるんですよ」

そこで答えたのが下の三つ

①個人タクシーなら自分で仕事のスケジュールを決められる

これは個タクでなくても、会社によるが法人タクシーでもスケジュールは結構自由です

②上司に指示されたりすることもない

その通り!これも個タクに限らず、事故さえ起こさなければ大抵上からは何も言われません

タクシーの良いところ 正解です!(なんやねん)

③嫌な客とは話さなくても良い

これはどういうことやろ…無視したら余計面倒なことになるし、✖やと思うな

しかし、「タクシーの良いところ」これを映画で話してくれたのは良かった

俺がタクシーの映画を書くなら、

とことん

・タクシーの良いところ

・仕事の自由さ、楽しさ、面白さ

・具体的な売上などを示して、稼げることもアピール

そして、この映画では他力による一攫千金を運転手がつかむわけだが、

俺は、

タクシードライバーが自分の力で金持ちになっていく

そんなタクシー映画を書きたい

自信あるので、オファー待ってます(笑)

以上、本物のタクシードライバーが見た映画「TOKYOタクシー」の講評でした

2025年11月22日土曜日

タクシーストーリー②~「タクシーだけはやめてほしい」

 「タクシーだけはやめてほしい」

忘れもしない。

転職の決意と、タクシーに乗ってみたいという話を嫁にしたときの第一声である。

「なんで?」

「なんでって…タクシー乗ってるなんて、近所に知られたら」

「知られたら?」

「子どもたちのことも考えてあげて」

「…なんかほとんど犯罪者扱いやな」

決められた路線もレールもない。

これは後に感じたことだが、タクシーとは道路という、都市の血管を流れる、社会の「血液」である。

もしタクシーがなくなれば、社会も経済も血栓だらけになる。

多くのドライバーが何を話し合うこともなく、足りないところに流れて血流を作っていく。

タクシーは街の活力なのである。

ただもちろんこの時はそこまで分かっていたわけでもない。

「タクシーの何が悪いんや?」

「……」

何が言いたいのかは分かった。

なんとなくかっこ悪い

古い車に乗って、ダサい制服とセンス悪いネクタイ、何より平均年齢高過ぎ。

高齢者の社交場は地域の公園のグラウンドゴルフか、駅のタクシー乗り場と言っても過言ではない。

そんなところに40代で入っていくのは、社会的自殺行為ではないか。

と嫁は感じるのだろう。

しかし、ここで俺の決意はより固まった。

俺が変えてやるよ。

タクシーのイメージを変えてやる。

まだ入ってもいない業界を変えようなんて、飛躍しているかもしれない。

でも俺はそう感じた。

何か大きな未来が見えてきた気がした。

※ここまではフィクションです(ちなみに筆者は20代で業界に入って、現在50代)


11月21日(金) 65,820 44回

日中はよく動くな

山幹北野通り下で乗った若い男女

「岐阜から来たんですよ。神戸初めてなんです!」

嬉しそうに話してくれて、こっちもうれしくなった

三宮駅から南京町へ、いろいろと神戸の観光案内しながら短い区間を走った

「へー、そうなんですか、すげー!俺こんなところ絶対運転出来んわ」

若いから一つ一つ反応あって(やや大げさ?)、話がいもある

料金は1100円

「ありがとうございます!」

金を払う方がお礼をいうサービス。

それがタクシーなんですよ。



2025年11月20日木曜日

タクシーストーリー① ※とても現実に近いフィクションです

タクシーは年収1千万も夢じゃない

どこかのブログサイトか、Xの投稿か、スマホで何かを検索していたら出てきた言葉に惑わされ、年収4百万円台の仕事を辞めて40代でタクシー会社に飛び込んだ。


以前はスーパーマーケットに勤めていた。

品出しやレジ打ちなど、真面目にこなしていたら、数年で店長まで上り詰めた。

収入的に特に問題はなかった。

夫婦共働きで、三人の子供を養う程度の生活は出来た。

しかし店長になると、開店1時間半前、7時半には店に出て、21時の閉店後も片づけやレジ締めなど終えると22時を過ぎ、帰宅は23時前後。

表面上は週休2日とは言っても、休みの日も結局仕事に出てくる。

週末の休みなどあり得ない。

結局子どもと過ごす時間もほとんどなく、ここ数年過ごしてきた。

何がきっかけだったわけでもない。

ただ深夜に帰宅して、スマホをいじっていたときに、

車運転するだけで1千万…

そんなフレーズが頭に残り、普段仕事が気になってなかなか寝付けなかったのだが、その日は何故かぐっすり眠れた。

朝になると、まあそんなわけないよな、ネット情報なんて半分嘘、大げさ、まともに取ったら取返しのつかないことになる。

現実に戻され、そそくさとシリアルで朝食を済ませ、仕事に出る。

責任の重さと、少しのプライドを抱える生活はそれほど悪くないと自分に言い聞かせていた。

タクシーが気になり始めてからは、深夜に少しその気になり、朝に現実に戻される。

そんな日々が続いた。

ある日思った。

年収1千万とか、それほど魅力は感じない。

というか、やはり現実味はない。

しかし、自分は車の運転が好きだ。

今は電車通勤だが、たまに半休が取れたら子供を連れて買い物や、目的もなく田舎に車を走らせたりするのがストレス解消になっていた。

車を運転するだけで給料がもらえる仕事

しかもなんとなく、

自由っぽい。

遂に朝起きてもタクシーのことが頭から離れなくなった。

続く…


11月19日(水) 59,360 35回

なんか今日は単価良かったな

日中はそこそこ仕事あるし、

最終西宮は助かった



2025年11月18日火曜日

キャッシュレス手数料

 駅から乗り込みの、50代後半くらいの女性かな

近場の乗車だったが、

「支払いGOペイにしても良い?」

「はい…構いませんけど」

「なんか前の運転手さんに聞いたんやけど、運転手さんが手数料取られるからあまりうれしくないみたいな(笑)」

「はい、そうですけど、お客さんには関係ないですから」

「いや、現金でも良いのよ。GOペイなら楽ってだけ」

「それなら現金が助かります」

運転手側もGOペイの方が楽なんやけど

「あとどこの会社か忘れたけど、乗り込みでGOペイにしたら配車料上乗せされるからやめた方が良いですよって」

「へー!そんなんあるんですか!(グッドアイデアやん)」

「200円か300円かわからんけど、そんなの上乗せされるなら現金で払うやんね」

「そりゃそうですよね(でも違法ちゃうか)」

昨今のキャッシュレスの流れは、運転手が持つ現金が減ることで釣銭も減らせるし、

強盗のリスクも減るはず(前からタクドラなんて大して持ってなかったけどな)

GOペイやQR決済なら、支払いもボタンひとつでスムーズに出来て助かる

※クレジットや交通系決済は結構時間かかって歓迎しないが

しかし意外と大きなダメージは

キャッシュレス決済はチップをもらうことが少ない

ということやろか

タクシーのチップって、地域や人にもよるやろけど、

俺で大体一月1万くらいにはなるかな

海外行ったらクレジットでもチップ付けるんやから、

日本もそういうとこ見習お


11月17日(月) 64,370 44回

12月度スタート、月曜で6万超えはまあまあやけど、

最後1時間、寝てしまった…

もう少し伸ばせたのになぁ