タクシー運転手と利用者の会話というのは、その「行き先」を背景に成り立っていると言っても良い
その行き先へのルート
そこまでかかる時間
その行き先、またはそこへ行くことが持つストーリー
病院へ行くなら、病気の話だったり
仕事が終わって家に帰るなら、仕事の話、家にいる家族の話
などなど
そんなことが分かったのは、
行き先を言わない客に出会ったからである
20代やろか、一見普通に見える女性(普通やないゆうことやな)
「どちらへ行かれます?」
「・・・」
まあ、このくらいはある
近いから言いづらいとか、
酔っぱらって、行き先がすぐに出てこないとか
しかし、この女性はそんなんではなかった
ただ大荷物を抱えて乗り込んできた
荷物というか、買ってきたもの
赤ちゃん用のおむつ大パックを4つくらいと
対照的なミニカップラーメンを袋にも入れずに抱えて乗り込んできた
赤ちゃんはいない
「どちらへ行かれますか?」
何度か聞いているうちに、こっちも声が荒くなってくる
「・・・」
「こっちも仕事してるんで、行き先決まってないなら降りてください!」
行き先を言わない客がこんなに腹立つとは思わなかった
「今何時ですか?」
「・・・22時半過ぎですけど(行き先と関係ないやろ!}
「この近くに温泉ありますか?」
「日帰り温泉はありますけど、もうすぐ(23時で)終わりますよ」
「そうですか}
「三宮まで行けば、泊まれるところもありますけど」
「天然温泉ですか?」
「天然温泉じゃないといけないんですか?」
「はい」
「・・・」
一応調べて、元町のドーミーインが「天然温泉」と書いてるから、そこまで行った
「こちらでよろしいですか?」
「・・・ちょっと予約出来るか聞いてくるんで、待っててもらえますか?」
「・・・はい」
待てども出てこないので、中を覗くと受付に女性はいた
チェックインの手続きしてるんやろか(その前にタクシー支払いしろ!)
まあまあ部屋数もあるホテルなので、水曜の夜に満室とも思えない
やっと女性が戻ってきた
「えー、ここまで5200円です」
「ここから大阪まで行ってもらえますか?」
「はい?」
「同じ系列のホテルが淀屋橋にあるんですけど、そこまで行ってほしいんです」
「はぁ・・・」
「その前にちょっと寄ってほしいところがあるんですけど」
「(まじかよ・・・)どちらですか?」
「そこの快活クラブに寄ってほしいんです」
「はぁ」
ドーミーインから快活クラブはすぐ近くなので、車をまわす
「こちらで待っといたらよろしいですか?」
「すぐ戻ってきます」
すぐ戻ってこない
心配になって快活クラブへ入っていく
狭い道に駐車してる車を心配しながら、2階の受付まで行くと、
スタッフはいない
インターホンでどこにいるか分からないオペレーターと話す
「今入っていった女性が・・・(分かるわけないか)」
急いで車に戻って、警察に電話する
警察に電話で説明していると、
「あっ、戻ってきました」
女性が戻ってきた
また大量の荷物を抱えている
きっとこの快活クラブで生活していたんやろう
「じゃあ(大阪まで)行きますか」
「下道で行ってください」
「え?大阪まで下道ですか?」
「あとそこのセブンイレブンに寄ってもらえますか?」
「・・・」
セブンイレブンに入ると、何か食料を買ってきて、車内で食べている
食べ終わると、
「セブンイレブン寄ってもらえますか?」
「はい?」
そんなことを繰り返し、3回目で駐車場で待っていたときに、大阪の車を見つけて
「大阪まで帰るお客さんなんやけど、変わってもらえる?」
「はい!良いですよ」
少し話すと、1か月の新人ドライバーらしい(ベテランならなんか裏あるやろって疑うよな普通)
ラッキーやった
というわけで、不審な客から解放され、1万強の料金も現金回収出来た
あー、(精神的に)疲れたわ
6月11日(水) 64,920 38回
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