タクシー車内の会話というのは、
奇妙なものも多い
家族や友人とは話せないようなことを、
タクシードライバー・・・他人なのに、なぜか密室で2人きりになる
風俗でもなければ、こういうシチュエーションってあまりない(たとえが下品やな)
ある日の乗務やった。
夕方18時ころの乗車。
この時間帯の乗車は意外と少ない
飲みの「帰り」のタクシー利用は多くても、「行き」は電車か歩きで行くものである。
乗ってきたのは、30前後の男性やった。
「30前後の男性」の乗車も意外と少ない
20代って働きはじめで、給料もらうと気が大きくなって、
ちょっとタクシーなんて乗ってみようかなぁ・・・
みたいな気持ちになるものだが、
だんだんと社会生活にも慣れてきて、
家族も出来たりすると、
金銭の価値が次第と現実的なものになって、
タクシーというサービスの価値が分からなくなってくる。
タクシーなんて絶対乗らへん
というのは、30代から40代くらいやろか。
50代くらいになると、子どもも働き始めたり、ローンも払い終わったりして余裕が出てきて、
面倒やったり、かっこつけたかったりしてタクシーに乗り始める
一度乗り始めたら癖になるもので、
まあほんまに便利なもんやからね
まあとにかく30前後ですよ。
「こんばんは」
「こんばんは」
「どちら行かれます?」
谷町を北に向かって走っていた。
「豊中・・・の方なんですけど」
豊中か、悪くない。
比較的客の質も良い地域である(「質」の悪い地域ってどこや?)。
「分かりました。新御堂で上がりましょか?」
「あぁ・・・任せますよ」
「任せる」という客は意外とくせ者である。
こういう客はちょっとでも遠回りすると、めっちゃ突っ込んでくる。
自分で細かくルート指示したら突っ込みようがないから、
運転手をいじりたいから「任せる」という客もいる
要注意やで!
「新御堂上がって、江坂ら辺で降りて、176出たらよろしいですか?」
後で突っ込まれないように、細かくルート確認する。
「あぁ・・・任せますよ」
どうやら、ルートはどうでも良さそうである。
何か話したそうな空気である
客から切り出さなければ、黙っているのが基本だが、
近場の場合は黙っていたら空気が張り詰めることもあるので、こっち(運転手)から切り出すこともある。
この場合は近くもないが、
「話したい」客の空気を掴めるほどには、この仕事に入れるようになってきた。
「お客さん・・・(寂しそうですね)」
「・・・」
ルームミラーに移った客の目がぶつかってきた。
「なんかあったんですか?」
「なんで分かるんですか」
俺はちょっと余裕の笑みを浮かべてみた。
この場合はベテランを装った方が良い。
直感的に演技していた。
「目をみたら分かりますよ。身近な人に何かありましたか」
ちょっとギャンブルしてみた。
間違っていたら、この後の対応がややこしくなるが、
客の気を損なわなければ、
金さえもらえたら良い(言うな)。
ルームミラーの客の目が離れた。
「あの・・・、まあ、良いです」
間違いない。
この人は何か悩みを抱えている
俺は占い師のような心境になってきた。
「奥さんと、何かありましたか?」
これがツボにはまれば、この客俺のもんや(現実的にこんな質問ご法度やで)。
この世界ただ闇雲に走っているだけでは、金にならない。
何人かの「固定客」を持っている人がやっぱり安定して稼いでいる
俺もそろそろ「顧客」 が欲しい。
と思い始めた頃であった。
「いえ・・・結婚はしてません」
えー!独身やったん。
めっちゃ外したやん。
もうダメや・・・
まだ「本物」のタクシードライバーになりきれてへん
沈みかけたそのとき、
「30前後」の乗客は言った。
「猫がいなくなりました」
想定外の展開やった。
「猫・・・ですか」
奇妙なものも多い
家族や友人とは話せないようなことを、
タクシードライバー・・・他人なのに、なぜか密室で2人きりになる
風俗でもなければ、こういうシチュエーションってあまりない(たとえが下品やな)
ある日の乗務やった。
夕方18時ころの乗車。
この時間帯の乗車は意外と少ない
飲みの「帰り」のタクシー利用は多くても、「行き」は電車か歩きで行くものである。
乗ってきたのは、30前後の男性やった。
「30前後の男性」の乗車も意外と少ない
20代って働きはじめで、給料もらうと気が大きくなって、
ちょっとタクシーなんて乗ってみようかなぁ・・・
みたいな気持ちになるものだが、
だんだんと社会生活にも慣れてきて、
家族も出来たりすると、
金銭の価値が次第と現実的なものになって、
タクシーというサービスの価値が分からなくなってくる。
タクシーなんて絶対乗らへん
というのは、30代から40代くらいやろか。
50代くらいになると、子どもも働き始めたり、ローンも払い終わったりして余裕が出てきて、
面倒やったり、かっこつけたかったりしてタクシーに乗り始める
一度乗り始めたら癖になるもので、
まあほんまに便利なもんやからね
まあとにかく30前後ですよ。
「こんばんは」
「こんばんは」
「どちら行かれます?」
谷町を北に向かって走っていた。
「豊中・・・の方なんですけど」
豊中か、悪くない。
比較的客の質も良い地域である(「質」の悪い地域ってどこや?)。
「分かりました。新御堂で上がりましょか?」
「あぁ・・・任せますよ」
「任せる」という客は意外とくせ者である。
こういう客はちょっとでも遠回りすると、めっちゃ突っ込んでくる。
自分で細かくルート指示したら突っ込みようがないから、
運転手をいじりたいから「任せる」という客もいる
要注意やで!
「新御堂上がって、江坂ら辺で降りて、176出たらよろしいですか?」
後で突っ込まれないように、細かくルート確認する。
「あぁ・・・任せますよ」
どうやら、ルートはどうでも良さそうである。
何か話したそうな空気である
客から切り出さなければ、黙っているのが基本だが、
近場の場合は黙っていたら空気が張り詰めることもあるので、こっち(運転手)から切り出すこともある。
この場合は近くもないが、
「話したい」客の空気を掴めるほどには、この仕事に入れるようになってきた。
「お客さん・・・(寂しそうですね)」
「・・・」
ルームミラーに移った客の目がぶつかってきた。
「なんかあったんですか?」
「なんで分かるんですか」
俺はちょっと余裕の笑みを浮かべてみた。
この場合はベテランを装った方が良い。
直感的に演技していた。
「目をみたら分かりますよ。身近な人に何かありましたか」
ちょっとギャンブルしてみた。
間違っていたら、この後の対応がややこしくなるが、
客の気を損なわなければ、
金さえもらえたら良い(言うな)。
ルームミラーの客の目が離れた。
「あの・・・、まあ、良いです」
間違いない。
この人は何か悩みを抱えている
俺は占い師のような心境になってきた。
「奥さんと、何かありましたか?」
これがツボにはまれば、この客俺のもんや(現実的にこんな質問ご法度やで)。
この世界ただ闇雲に走っているだけでは、金にならない。
何人かの「固定客」を持っている人がやっぱり安定して稼いでいる
俺もそろそろ「顧客」 が欲しい。
と思い始めた頃であった。
「いえ・・・結婚はしてません」
えー!独身やったん。
めっちゃ外したやん。
もうダメや・・・
まだ「本物」のタクシードライバーになりきれてへん
沈みかけたそのとき、
「30前後」の乗客は言った。
「猫がいなくなりました」
想定外の展開やった。
「猫・・・ですか」