地理試験は思いのほか難しかった。
大学受験を始め、いくつかのIT関係の資格試験を難なくこなしてきた自分だったが、
意外と身近にあることが分かっていないことに気づかされた
絶対に落ちたくなかったから、猛勉強した。
それでもイージーにスルー出来なかった。
こんな風に横文字を使える自分は何の役にも立たない・・・
合格して心から嬉しかったのは初めてかもしれない
翌日会社へ戻り、チケットやメーターの取扱い等の研修を受けて、写真を撮って、
乗務員証を渡された
明日から本当にタクシーに乗る。
本当にこれで良いんやろか・・・
今まで何度も考えていたことを、今更とは思いつつもまた考えざるを得なかった。
事務所を出て、帰ろうとしたとき見覚えのある女性とすれ違った。
「あれ?」
「あ・・・吉林さん?」
教習所で一緒だった女性だった。 同じ会社に入ると聞いていた。
「久しぶり、研修終わったん?」
「あ、あぁ・・・そっちはこれから?」
「うん、ちょっと前の仕事のクロージング(引き継ぎ)とかあって」
「あのさぁ・・・ほんまにタクシー乗るつもり?」
「 どういうこと?」
「いや、あの・・・タクシーってなんか、イメージっていうか・・・吉林さんみたいな(若くてインテリっぽい)女性が乗るのって勇気いるのかな、って思ったりして」
「はぁ・・・イメージね。確かに、そういうのはあるかもしれないけど・・・わたしも偉そうに言うほど社会経験積んできたわけじゃないけど、仕事ってある意味『イメージを変えていくこと』なんかなぁと思うんやけど」
「『イメージを変えていくこと』・・・(『この日本・・・世の中を変えたい』???)」
確かに、あるもの・・・それが商品であってもサービスであっても、それを売ろうとしたとき、全く同じものを売り続けていたら、いずれ消費者に飽きられるか、または競合企業にシェアを奪われていく。
だから何かを変えなければいけない
それは製品やサービスそのもの(の質を高めること)かもしれないし、消費者への伝え方(広告)を変えたり、提供する場所を増やしたり移動したり、それも出来なければ価格を変えたり(下げたり)・・・確かにそれら全てがイメージのトランジションかもしれない(もう横文字いいから)。
「そう、もしそうだとしたらタクシーに乗ることって『イメージを変える』壮大なプロジェクトのような気がして」
「『壮大なプロジェクト』・・・」
「わくわくしない?」
俺が今まで働いてきたIT業界は「イメージ」というか既成概念を変えることに世界中の多くの秀才が日々凌ぎを削っている、その中で自分が存在感を示すのは容易なことではない。
仕事をすること自体が難しくなっている
しかしタクシーならどうだろう
吉林さんのような若くてきれいな女性でなくても、俺のような男でも、「若い」というだけでクライアント(顧客)にインパクトを与えることが出来る。
何より今までと大きく違うのは、
目の前の利用者とマンツーマンで仕事が出来る
ことである。
ちょっとしたサービスで、気の利いた会話で、それを積み重ねることで、目に見える形で仕事が出来る。
「地理試験どうやった?」
性格悪いと思っていたこの女性が、子どものようないたずらっぽい笑みを浮かべて聞いてきた。
「ちょろかったよ」
俺も笑った。
「仕事楽しんでね」
「サンキュ」
親指を立てて別れた。
駅前の焼き鳥屋に一人で入った。
ビールがうまかった
ここから数々のドラマがあることは、何となく予想出来た。
大学受験を始め、いくつかのIT関係の資格試験を難なくこなしてきた自分だったが、
意外と身近にあることが分かっていないことに気づかされた
絶対に落ちたくなかったから、猛勉強した。
それでもイージーにスルー出来なかった。
こんな風に横文字を使える自分は何の役にも立たない・・・
合格して心から嬉しかったのは初めてかもしれない
翌日会社へ戻り、チケットやメーターの取扱い等の研修を受けて、写真を撮って、
乗務員証を渡された
明日から本当にタクシーに乗る。
本当にこれで良いんやろか・・・
今まで何度も考えていたことを、今更とは思いつつもまた考えざるを得なかった。
事務所を出て、帰ろうとしたとき見覚えのある女性とすれ違った。
「あれ?」
「あ・・・吉林さん?」
教習所で一緒だった女性だった。 同じ会社に入ると聞いていた。
「久しぶり、研修終わったん?」
「あ、あぁ・・・そっちはこれから?」
「うん、ちょっと前の仕事のクロージング(引き継ぎ)とかあって」
「あのさぁ・・・ほんまにタクシー乗るつもり?」
「 どういうこと?」
「いや、あの・・・タクシーってなんか、イメージっていうか・・・吉林さんみたいな(若くてインテリっぽい)女性が乗るのって勇気いるのかな、って思ったりして」
「はぁ・・・イメージね。確かに、そういうのはあるかもしれないけど・・・わたしも偉そうに言うほど社会経験積んできたわけじゃないけど、仕事ってある意味『イメージを変えていくこと』なんかなぁと思うんやけど」
「『イメージを変えていくこと』・・・(『この日本・・・世の中を変えたい』???)」
確かに、あるもの・・・それが商品であってもサービスであっても、それを売ろうとしたとき、全く同じものを売り続けていたら、いずれ消費者に飽きられるか、または競合企業にシェアを奪われていく。
だから何かを変えなければいけない
それは製品やサービスそのもの(の質を高めること)かもしれないし、消費者への伝え方(広告)を変えたり、提供する場所を増やしたり移動したり、それも出来なければ価格を変えたり(下げたり)・・・確かにそれら全てがイメージのトランジションかもしれない(もう横文字いいから)。
「そう、もしそうだとしたらタクシーに乗ることって『イメージを変える』壮大なプロジェクトのような気がして」
「『壮大なプロジェクト』・・・」
「わくわくしない?」
俺が今まで働いてきたIT業界は「イメージ」というか既成概念を変えることに世界中の多くの秀才が日々凌ぎを削っている、その中で自分が存在感を示すのは容易なことではない。
仕事をすること自体が難しくなっている
しかしタクシーならどうだろう
吉林さんのような若くてきれいな女性でなくても、俺のような男でも、「若い」というだけでクライアント(顧客)にインパクトを与えることが出来る。
何より今までと大きく違うのは、
目の前の利用者とマンツーマンで仕事が出来る
ことである。
ちょっとしたサービスで、気の利いた会話で、それを積み重ねることで、目に見える形で仕事が出来る。
「地理試験どうやった?」
性格悪いと思っていたこの女性が、子どものようないたずらっぽい笑みを浮かべて聞いてきた。
「ちょろかったよ」
俺も笑った。
「仕事楽しんでね」
「サンキュ」
親指を立てて別れた。
駅前の焼き鳥屋に一人で入った。
ビールがうまかった
ここから数々のドラマがあることは、何となく予想出来た。
はじめまして。親しい人間がタクシー運転手をやっており、仕事でストレスをためているようです。なかなか仕事自体の話を聞くことは出来ないので、こちらのブログを読ませて頂き少しでも理解できたら、、と思っています。お仕事頑張ってください。
返信削除コメントありがとうございます!
削除>親しい人間がタクシー運転手をやっており、仕事でストレスをためているようです。
確かにストレスはあります。
それは、どんな仕事でもあるものですが、孤独感や密室での駆け引きの中ではより大きなもの(ストレス)があるかもしれません。
しかし、それを乗り越えたときや、大きな仕事に遭遇し、それを誰の助けも受けずに自分だけでこなせたときの達成感はまた他の仕事に勝るものがあると思います。
そういう意味では、面白い仕事ですよ。
いろいろな人がいて、いろいろな悩みを抱え続ける人がいると思いますが・・・自分の中でのいつも息詰まりは、いつも
返信削除「これって惰性で仕事をしていないか?」でした。
その仕事に慣れれば慣れるほど。業務成績が実は努力と正比例をしないし、自分はそういうものより
目的意識がない・・・事が苦痛でした。そうその「ドラマ」ですね。
何も考えず日々生きれる事は、それはそれで幸せですが
人は考えてしまう。だから、悩むんだと思います。
概念を変える事は、実はかな~り難しい事でもありますが
面白い事だと思います。
ゆーじさん
削除ありがとうございます。
>いろいろな人がいて、いろいろな悩みを抱え続ける人がいると思いますが・・・
いろんな世界で闘ってきた、そんな人たちがこの世界に入ってきているのかもしれません。
傷をなめ合う人たちは沈んでいき、見返してやろうと目を輝かせている人たちは居場所を見つけています。
>概念を変える事は、実はかな~り難しい事でもあります
その通りです。
なが~い旅・・・わたしも未だ旅の途中です。
初めまして!!
返信削除神戸でタクシードライバーになりました
乗務してまだ1カ月のぺーぺーですが…(笑)
タクシーストーリー楽しく読ませて頂いておりますので
これから末永くヨロシクお願いしますm(_ _)m
ありがとうございます!
削除神戸ですか!
またお会いする機会があれば良いですね。
メールリンクもありますので、またよろしくお願いします。