2014年12月10日水曜日

タクシーストーリー第22話~猫がいなくなりました4

「タクシーの運転手さんって、好きな人多いって聞いたことあるんですけど・・・」

タクシードライバーに薬中が多いというのは業界の「神話」になっているが、果たして本当にそうなんだろうか。

麻薬にハマる奴らを自分は知らないが、確かにいるのかもしれない

しかし一般的に薬中は存在するわけで、

運転手にその率が多いのだろうか

それは詳しいデータを見たわけでもないので真偽のほどは分からないが、

車内で自分だけのスペースを持つことの出来る仕事だけに、他の煩わしい仕事に比べたらそういったものに「手を出しやすい」ことは認めざるを得ない。

心の弱さ

それは、タクシーに限らず人間の持つテーマである。

欲望に流されるか、踏みとどまるか

ときには、

欲望を抑えたために後悔することもある

恋愛にしても、起業にしても

「あのとき勇気を出して、勝負していたら・・・(『前向きに』人生は変わっていた)」

なんてこともあるだろう。

しかし「後ろ向きに」人生が変わることもある

何度も言うが、これはタクシーに限ったことではない。

弱い人間たちの話である

それなら、タクシーという世界に「弱い人間」が多いのか?

今のところこの質問には、「イエス」と言わざるを得ない。

まだまだこの世界は浄化されていない。

だからこそ俺たちのような「若者」がこの世界には必要なのだ

俺は少しトーンを変えた・・・いや自然と変わっていた。

怒りがこみ上げてきた。

「それはどういうことですか?」

「・・・いえ、あの・・・タクシー運転手さんって、あの・・・なんかそういうイメージがあって・・・」

「どういう『イメージ』ですか?」

「なんか車内でいろいろ・・・」

「『いろいろ』、なんですか?」

ルームミラーを見ると、乗客は目を逸らしていた。

それだけ俺のトーンが上がっていたともいえる。

「すみません・・・忘れてください」

俺はフッと、一息ついた。

でも言いたいことは言っておかなくてはならない。

業界のために、全国・・・いや世界中のタクシー運転手のために(大げさやな)

「忘れませんよ」

「はい?」

乗客の声が震えていた。

「あなたの言葉は、わたしが運転手を続ける限り忘れることはないと思います。

わたしは・・・自分で言うのもなんですがまだ若いですし、

タクシーに乗り始めて正直まだ日も浅いですが、

この仕事が楽しくてたまらないんです。

日々楽しさが増していきます。

でも乗客と話したり・・・プライベートでも、この世界に対する『イメージ』の悪さを実感しています。

なんでそんな風に見られるんやろって、

やりきれない思いをすることもあります。

あなたは車内で大麻を吸ってる運転手を見たことがあるんですか?」

「・・・いえ」

「運転手で麻薬にハマってる知り合いがいるんですか」

「・・・いえ」

「ではなぜそういうことを言われるんですか?」

「・・・あの、『イメージ』です」

俺たちはこの「イメージ」と戦わなくてはならない。

形ないものだからこそ、なかなか消えないこの巨大な「塊」に立ち向かわなくてはならない。

それは先人の作った「負の遺産」なのかもしれない

しかし俺の接している「先輩達」の中には、本当に心の許せる、かけがえのない「チームメイト」もいる。

いや日本中の、世界中のタクシードライバーが「チームメイト」なのである(飲みすぎやって)。

「イメージでものを言わないでもらえますか」

「はい・・・申し訳ありません」

客に対して、ここまで自分のペースで突っ込める仕事が他にあるだろうか。

「ところで・・・猫は・・・?」

「はい・・・もういいです」

「でも大麻いうても、外から見たらタバコと変わらないんちゃいますか?猫が珍しそうに見る理由がないやないと思うんですけど」

「いえ、タバコとは見た目が違うんです」

「水パイプとか」

「はい、なんでそんなこと・・・(知ってるんですか)?」

「イメージです」

目的地に着いた、メーターは3千円と少し、

長い時間に感じたが、思ったほどでもない。

乗客は1万円札を置いた。

「これ、取っといてください」

「いえ・・・これは多すぎますよ」

「いいんです。そのかわり、ここで話したことは誰にも言わないでください」

「・・・(そういうことなら)分かりました」

ドアを開けると、乗客はゆっくりと降りていった。

ドアを閉めた。

1万円札を上着のポケットに入れようとして、手が止まった。

新札の1万円札は数えたら、5枚重ねられていた

そんなことあるかって?

ありますよ

疑うなら一度タクシーの運転席に座ってみたら良いでしょう。

9 件のコメント:

  1. 東京エムケイの社長から暴行や暴言を受けたとして、乗務員ら6人が会社側に計1500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は10日、198万円の支払いを命じた。
    判決によると、社長は平成22~23年、原告らの運転技能をチェックするため車に同乗し、後部座席から運転席を蹴ったり、「あほか」「辞表を書け」などと暴言を吐いたりした。
    渡辺英夫裁判官は「暴行も暴言も、指導の一環だったとしても正当化はできない」と指摘した。
    東京エムケイでは別の乗務員ら5人も社長から暴行などを受けたとして訴訟を起こし、東京地裁が昨年3月に約500万円の支払いを命じ、確定している。

    こういう最悪なタクシー会社も有るので、入社する時は、brackcabさんに相談したり、東京大手四社に相談されると良いと思います。

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    1. ありがとうございます!

      最近エムケイさんのニュース聞きませんねぇ。
      エムケイさん云々でなく、やはり未だ「ブラック企業」的なタクシー会社はあります。

      そんな情報はどんどん発信していくので、情報じゃんじゃん寄せてください!

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  2. 世の中のタクシー運転手に対するイメージは、決して良くないですね。
    私も、この業界に入る迄は、同様でした。
    その状況で、東京MKの事件があると、追い討ちを掛けます。

    http://ra-goma.blogspot.jp/

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    1. Goma Chan さん

      イメージ変えようじゃありませんか!

      イメージって結局は一人一人、1×なんぼなんですよ。
      その一人でいられることに幸せを感じていきましょう。

      地域、会社を越えたチームがある。
      それがタクシーの面白さです。

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  3. 原発が未だに再稼動しないので近所の下記の会社に入ってみようかと思っているのですが・・・

    >>

    大和交通株式会社 DAIWA Traffic Co.,Ltd

    種類 株式会社

    本社所在地 〒917-0241 福井県小浜市遠敷8-502-12

    設立 1936年8月27日

    業種 陸運業

    事業内容 乗合バス事業・貸切バス事業・旅行業他

    代表者 代表取締役社長 村田治夫

    資本金 1,000万円

    従業員数 41名

    主要株主 福井鉄道

    http://www.daiwaobama.co.jp/

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    1. 古い会社ですね。
      しかも鉄道会社がバックに入ってるので安定感があります。

      日本海側は小型が強いイメージですね・・・それでも料金は神戸の中型(1.8k/680yen 253m/80yen)と比べて近場なら少し高くなりますから、悪くないと思います。

      ゆっくりとした車内での時間を有効に使える何かを見つけてください。

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  4. 若狭地方で一番大きい街である小浜市では、「大和交通」と「三福タクシー」の2社しか有りません。年収200万円ぐらいで良ければ、どうぞ。原発銀座と呼ばれる福井県若狭地方、原発バブル景気など、はじけ飛び、原発停止大不況やら反原発運動ショックやら、最近だと消費増税?こそっと増税された住民税?まあ明るい経済ニュースは聞く事がなくなって久しい。暇な時間にニュースやらツイッターのTLやら眺めていると、資本主義経済ってそのうち破綻すんじゃねえの?なんて疑念すら湧いたりする。この国だけの問題じゃなくね。まあそれは多少大袈裟だとしても、こういう仕事をしていると所得の格差はどんどん広がっているのを実感したりする。都会は景気いい業種は景気いいらしいけどね、斜陽の田舎町ではナントカミクスの恩恵なんて微塵も感じられませんね。むしろ酷くなってる。タクシー稼業なんて所詮水商売だから、そういう景気の変動の影響をモロに受ける業種な訳でして、田舎のタクシードライバーは皆青息吐息で暮らしている。9月分の給与明細を見た時は背筋が寒くなった。自分で言うのはアレだけど、これでも一応月の営業収入はドライバーTOP10から脱落する事は無い程度には上げているんだけどなあ。具体的な数字は書かないけど、我が家の場合奥様がかなりいい条件で仕事出来ているので何とか人様並みの暮らしは出来ているけど、それでも暮らしは楽じゃない。そんな昨今だから、僕が幼い頃に叔父の定食屋で見た様な牧歌的な風景は完全に消滅した。金銭的にも、時間的にも、そんなランチを取る余裕はタクシードライバーには無くなったのだ。少しでも稼ぐ気があるドライバーは店に入って食事を取ったりしない。時間がもったいないから。僕の場合は、昼食は朝から午後3時頃まで、待機で注文待ち、付け待ちで、ある程度数字を上げた後に、車庫近くで待機しながら持参した弁当を車内で食べる。3時過ぎに食べるのは、その時間帯は動きが止まる、という事もあり、あまり早い時間に食べると夜に腹が減る、というのもあり。で、夜飯は、平日等0時の定時で上がる時は基本食わない。週末に遅くまで残業する時は流石に食わなきゃもたないから食うけど、それでも店に上がって食べたりはしない。コンビニ弁当やドライブスルーのハンバーガー、ごくたまに、やっすい牛丼。これも待機や付け待ちしながら車内で。まあファストフードオンリー。食べ物の匂いがこもるのは嫌なので窓は4枚とも全開。雨の日や冬はなかなかに切ない。周りを見ても大概、僕と似たり寄ったりですね。年金貰ってるおじいさんドライバーなんかは車庫の休憩室で食べたりしてるけど、まあ定食屋でのんびり、なんて人は殆どいない。これも多分金銭的な理由でなんだろな。叔父も随分前に店を畳みました。不景気で話にならねえよ、なんてヤケクソ気味に愚痴こぼしてたのを覚えてます。年末に源泉徴収を貰う度に思うけど、田舎町のタクシードライバーってここまでやってこの年収なんですよね。怒りを通り越して悲しくなる時がある。あ、愚痴じゃないですよ、地方のタクシードライバーの現状を、問題意識と少しの怒りを込めて綴ったレポートです。せめて昼飯くらい少しのんびり食える状況にならないのかな、という希望を込めた。愚痴言うのは好きじゃない。あ、そう言えば、施行された「特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法等 の一部を改正する法律」ってなんだったんだろう。あまりに現状に変化が無さ過ぎて存在忘れてた・・・。

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  5. ハイヤー・タクシー乗務員を目指されるなら、これぐらいの条件を希望された方が良いと思います↓

    http://www.nihon-kotsu.co.jp/recruit/taxi/

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  6. 私は神奈川でタクシー会社に勤めている者です。この記事を読んだ率直な感想を言うと、「接客業としてダメな対応」だなと思いました。タクシーも接客業だと思っています。接客である以上、感情的にお客様に対して反論をするということは間違っているのでは?たしかにこのお客様はタクシードライバーに対して間違った偏見をもっていたかもしれません。でもそれはお客様が悪いのでしょうか?このお客様は、誰かから聞いた話を何気なく運転手に話したら威圧的に反論され、5万円も料金を払い、気持ちがよかったでしょうか?私は前職で接客業をしておりました。私の目から周りのドライバーを見ると、接客の意識が低いといわざるを得ません。私もタクシーという職業が好きです。だからこそ、私達ドライバー一人一人が態度でお客様に示し、偏見を払拭していきたいです。

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