2014年2月25日火曜日

タクシーストーリー~俺がタクシーに乗ったわけ②

「こう見えても、前の仕事では”プロジェクトリーダー”みたいなことやっててな、

 製造ラインの中で、人間がネジを締めるのと機械で締めるのと、どっちが早くて正確かをいろんな角度からな、測定すんのや。

ぼくらには分からんかもしれんけどな。難しい仕事やってんで。

そしたら、やっぱり機械の方が早くて正確やっていうことを、そのプロジェクトの結果としてプレゼンしてな

結局我ら人間はお払い箱や。ハハハ!」

やばい・・・(ツボは違うけど)ちょっと面白い。

しかしこっち黙ってんのに、いつまで話続けるんやこの運ちゃん。

このまま聞き続けるのもしんどかったので、こっちから質問してみた。

「運転手さん・・・この仕事楽しいですか?」

こっちから話しかけたら、また倍返しで怒涛(どとう)のような演説が始まりそうやとは思いつつ・・・

「え・・・?この仕事って・・・タクシーか?」

「はい。タクシー運転手って楽しいですか?」

年配の運転手の反応は意外やった。

以前の仕事について自慢げに話まくっていたのだから、現在のタクシーという仕事についてまた息つく間もないくらいに唱えるのかと思ったのだが、

「・・・楽しいかって、お兄ちゃんアホなこと聞くな」

明らかにテンションが下がったというか、そんな質問されたことがなかったかのように戸惑っていた。

「『アホなこと』って、仕事を楽しんでるかどうかって大事なことなんちゃいますか。

俺ちょっと今の仕事に行き詰まってて、それで彼女とケンカして・・・」

そのとき、運転手はやっと安心したような表情をして、

そして全てが分かっているかのような感じの悪い笑みを浮かべた。

「お兄ちゃん、若いなぁ・・・。若い。

楽しい仕事なんて、この世の中にあらへんで。

タクシーなんて最悪な仕事やで。

職業人の墓場みたいなもんや。

お兄ちゃんがほんまにそんな”エディオンの園”みたいな仕事を探してるんなら・・・」

「”エデンの園(楽園)”ですか?」

「そうそう、そのエディオンや。

そんなアホなこと考えてるんやったら、タクシーは言うたら”失楽園”やな」

「失楽園?」

「人生の途中で、ヘビにだまされて禁断の実を食べてしまった人間の来るところや」

そっちか・・・(これこそ”俗”で行ってほしかったな)。


そのとき何故か俺は思った。

タクシーに乗ってみよう

タクシーの運転席に。

何も見えなくなってる今の状況で。

何かが見える気がしたから。

6 件のコメント:

  1. タクシー乗務員は、バスや電車の運転士の様に寡黙であった方が、逆に信頼性が高まります。
    おしゃべり、をしないのも接客サービスです。
    また、セコムの警備員の様な雰囲気も必要です。
    物を運んでいるのではなく、生きている物を運んでいるんです。
    しかも、車は人間等を簡単に殺せる武器にもなるのです。
    へらへらせず、渋くやって欲しいものです。
    ・・・今まで乗ってきた中で、東京の日本交通の黒タクシーは最高ですね。

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    1. コメントありがとうございます。

      >おしゃべり、をしないのも接客サービスです

      その通りだと思いますが、状況によりますよね。
      「おしゃべり」をサービスにする場合も、少ないかもしれませんが、あります。

      >セコムの警備員の様な雰囲気も必要です

      これはどうでしょう・・・(笑)

      「堅さ」が相手によっては(若い女性などに対して)安心を与えることもありますし、酔客などには不快を与えてトラブルになることもあります。

      そういった、ある意味「テンションのチャンネル」を自在に使い分けるテクニックを要するのがこの仕事だと思います。

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  2. あはははははあはW
    腹がよじれますわ~いいですか、その乗務員さんに会いたい。

    >エディオン それって家電量販店でしょう(笑)
    >失楽園 なんで、そっち?不倫の物語でしょう(笑)

    タクシーは自由な仕事ですし、多様性を求められる仕事です。
    でもそういうレベルの人もいる・・・それがタクシーという業界の間口の大きいなぁ~と思いますよ。

    会話の能力もタクシーにはあっても良いですが、そこには
    とてつもない深さとそれ以前の、相手が会話に飢えているか、どうか?
    その判断ができない乗務員は・・・・・

    僕の会社じゃ1割もいませんでしたわ。二人だけ尊敬できる人は。50人いて、その二人だけでした。

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    1. ゆーじさん

      ありがとうございます。

      >相手が会話に飢えているか、どうか?その判断ができない乗務員は・・・・・

      そこですよね。
      この判断は、慣れないうちは判断を間違えてへこむことも多いかと思いますが、慣れたら正直非常に簡単です。

      この辺が「分かる」ようになったときは、自分がタクドラとしてあるレベルに達した満足感を味わえると思います。

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  3. 「何々も知らないの?」とか偉そうに言うクソジジイ・クソババ、たまに居るわ。
    「そんなもん全部覚えてから営業やってたら、タクシー1台も無くなるわ!!」って言うたった。
    ほんま、面倒くせえわ。

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    1. コメントありがとうございます。

      >「何々も知らないの?」

      これは、タクシーに限らずよくあるフレーズですよね。
      こういう人たちは、人によってどれだけの知識があるのかは分かりませんが、自分の持つキャパシティと言いますか、「知識のカバン」が一杯になっているんだと思います。そのカバンの中に入っているものを見せることに生きがいを感じているみたいな。

      でも優秀な人間というのは、いつもそのカバンにスペースのある状態にしているのではないかと思います。
      「自分の持っているものを人に見せる」のではなく、「人の持っているものを九州する(字が違う)」ことに生きがいを感じていると。

      そのために「出来る奴ら」は、堂々と「知りません」と言えるわけです(かっこつける前に変換直せ)。

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