「こう見えても、前の仕事では”プロジェクトリーダー”みたいなことやっててな、
製造ラインの中で、人間がネジを締めるのと機械で締めるのと、どっちが早くて正確かをいろんな角度からな、測定すんのや。
ぼくらには分からんかもしれんけどな。難しい仕事やってんで。
そしたら、やっぱり機械の方が早くて正確やっていうことを、そのプロジェクトの結果としてプレゼンしてな
結局我ら人間はお払い箱や。ハハハ!」
やばい・・・(ツボは違うけど)ちょっと面白い。
しかしこっち黙ってんのに、いつまで話続けるんやこの運ちゃん。
このまま聞き続けるのもしんどかったので、こっちから質問してみた。
「運転手さん・・・この仕事楽しいですか?」
こっちから話しかけたら、また倍返しで怒涛(どとう)のような演説が始まりそうやとは思いつつ・・・
「え・・・?この仕事って・・・タクシーか?」
「はい。タクシー運転手って楽しいですか?」
年配の運転手の反応は意外やった。
以前の仕事について自慢げに話まくっていたのだから、現在のタクシーという仕事についてまた息つく間もないくらいに唱えるのかと思ったのだが、
「・・・楽しいかって、お兄ちゃんアホなこと聞くな」
明らかにテンションが下がったというか、そんな質問されたことがなかったかのように戸惑っていた。
「『アホなこと』って、仕事を楽しんでるかどうかって大事なことなんちゃいますか。
俺ちょっと今の仕事に行き詰まってて、それで彼女とケンカして・・・」
そのとき、運転手はやっと安心したような表情をして、
そして全てが分かっているかのような感じの悪い笑みを浮かべた。
「お兄ちゃん、若いなぁ・・・。若い。
楽しい仕事なんて、この世の中にあらへんで。
タクシーなんて最悪な仕事やで。
職業人の墓場みたいなもんや。
お兄ちゃんがほんまにそんな”エディオンの園”みたいな仕事を探してるんなら・・・」
「”エデンの園(楽園)”ですか?」
「そうそう、そのエディオンや。
そんなアホなこと考えてるんやったら、タクシーは言うたら”失楽園”やな」
「失楽園?」
「人生の途中で、ヘビにだまされて禁断の実を食べてしまった人間の来るところや」
そっちか・・・(これこそ”俗”で行ってほしかったな)。
そのとき何故か俺は思った。
タクシーに乗ってみよう
タクシーの運転席に。
何も見えなくなってる今の状況で。
何かが見える気がしたから。
製造ラインの中で、人間がネジを締めるのと機械で締めるのと、どっちが早くて正確かをいろんな角度からな、測定すんのや。
ぼくらには分からんかもしれんけどな。難しい仕事やってんで。
そしたら、やっぱり機械の方が早くて正確やっていうことを、そのプロジェクトの結果としてプレゼンしてな
結局我ら人間はお払い箱や。ハハハ!」
やばい・・・(ツボは違うけど)ちょっと面白い。
しかしこっち黙ってんのに、いつまで話続けるんやこの運ちゃん。
このまま聞き続けるのもしんどかったので、こっちから質問してみた。
「運転手さん・・・この仕事楽しいですか?」
こっちから話しかけたら、また倍返しで怒涛(どとう)のような演説が始まりそうやとは思いつつ・・・
「え・・・?この仕事って・・・タクシーか?」
「はい。タクシー運転手って楽しいですか?」
年配の運転手の反応は意外やった。
以前の仕事について自慢げに話まくっていたのだから、現在のタクシーという仕事についてまた息つく間もないくらいに唱えるのかと思ったのだが、
「・・・楽しいかって、お兄ちゃんアホなこと聞くな」
明らかにテンションが下がったというか、そんな質問されたことがなかったかのように戸惑っていた。
「『アホなこと』って、仕事を楽しんでるかどうかって大事なことなんちゃいますか。
俺ちょっと今の仕事に行き詰まってて、それで彼女とケンカして・・・」
そのとき、運転手はやっと安心したような表情をして、
そして全てが分かっているかのような感じの悪い笑みを浮かべた。
「お兄ちゃん、若いなぁ・・・。若い。
楽しい仕事なんて、この世の中にあらへんで。
タクシーなんて最悪な仕事やで。
職業人の墓場みたいなもんや。
お兄ちゃんがほんまにそんな”エディオンの園”みたいな仕事を探してるんなら・・・」
「”エデンの園(楽園)”ですか?」
「そうそう、そのエディオンや。
そんなアホなこと考えてるんやったら、タクシーは言うたら”失楽園”やな」
「失楽園?」
「人生の途中で、ヘビにだまされて禁断の実を食べてしまった人間の来るところや」
そっちか・・・(これこそ”俗”で行ってほしかったな)。
そのとき何故か俺は思った。
タクシーに乗ってみよう
タクシーの運転席に。
何も見えなくなってる今の状況で。
何かが見える気がしたから。