ここまでタクシー業務における「固定給」の考察をしてきたが、
一旦立ち止まって、逆にタクシー業務において当たり前に適用されてきた「歩合給」に持続可能性があるかについて考えてみよう。
ここで出てくるのが、かの有名な(そうなん?)
である。
この裁判は、タクシーにおける「残業代」について乗務員側と会社で争われたものである。
内容は、歩合給の計算において、残業手当(時間外手当)を控除し、その残業手当を付けるというトリック?が違法と判断された裁判である。
簡単に言えば、残業における「割増賃金」を払っていなかったというケースである。
トリックというのは、
例えばあるドライバーAの1乗務20時間(休憩5時間 実働15時間)の営収が50,000円とする
歩率は60%
①歩合給 50,000×60%=30,000
30,000円がその日のAの賃金となる。
しかし、ここで問題になるのが「残業」
労基法上は、この乗務の所定時間は13時間(仮定)となり、2時間が残業となる。
そうすると、上の乗務の1時間あたりの賃金が2,000円であるから、割増賃金として5割増、2時間分を3,000円で計算して、
32,000円を賃金として払わなくてはならなくなる
これを避けるために(避けんでも良いやん)、業者は①の歩合給を28,000円としていた。
結果的に割増を足しても30,000円
変わらないのである。
これはタクシーという業務に労基法を適用することに無理があるという、そもそも論もあるにせよ、歩率を下げたら済む話でもある。
しかしそこは業界にも組合はあるし、最も重要であるリクルートのための額面歩率にこだわるのもまた業界の習性である。
だからそこは、既存のドライバーに対する歩合を下げ、新たに受け入れるドライバーを固定給とすれば良い。
既存のドライバーの7割近く(大げさやろ)はもう年金をもらう世代であり、今更歩率を下げても騒がない「ゆとり世代(使うとこちゃうやろ)」である。
そして新たに受け入れるドライバー、それが若者なら歩合給よりも安定を求める。
既存のドライバーの平均賃金よりも少し低い時間給を設定し、所定を超えた部分にはしっかり割増賃金を付加する。
結局は固定給議論に戻ってくるわけだが…
しかしこの国際自動車裁判の最高裁判決は2020年3月30日
https://kkmlaw.jp/qa_for_hr/salary-limitation-time-management/q17/
本当なら、ここから業界が、タクシー乗務員の賃金体系が、変わっていくはずだった…
そして、そこから言わずもがな長い泥沼、コロナ禍に入っていくのである。
コロナが落ち着いた今、また立ち返って考えなくてはいけない、業界の宿題がここにあるのである。